ミカとマキ
ある日 森の中 吸血鬼に出会った。
「聞きたいことがあればなんでも聞くがよいぞ。」
急にテンションが下がった自称吸血鬼に違和感を覚えたが、とりあえず質問することにする。
「あー・・・吸血鬼さん。あなたのことは何と呼べばいいですか?」
「人に名前を聞くときは自分から名乗るがよいぞ。・・・そうだな私のことはミカと呼べ。」
「これは失礼。私の名前は・・・。」
思い出せない。考えてみれば自称女神に死んだと告げられたが死んだ時の記憶はない。現実世界の記憶はあるが自分自身に関することはどこかおぼろげだ。
少し逡巡したが素直に答えることにする。
「名前が思い出せない。」
「記憶を完全に保持した転生者は少ないから想定内ではあるが・・・。ふむ、お前はなんという種族なんだ?」
「これはパンダですね。ジャイアントパンダ。」
「この世界にはいない生物だな。ふふん!私が名前を付けてやろう!」
なぜかうれしそうなのが気になる。しかし自分の名前を自分で付けるのは気恥ずかしいのでミカに任せることにする。
「お前の名前はアンパンだ。」
「すんません別の名前でお願いします。」
「えー?じゃあ・・・。」
ミカは不満そうにしながらエプロンのポケットから何かを取り出す。1枚の紙きれのようだ。いくつか短い単語が書かれているのが見える。
「じゃあお前はマークだ。熊っぽいから。」
「パンダはいないが熊はいるのかこの世界。そういえば私は雄なのか?」
「うむ、ちんちんないから雌だな。」
ちんちん言いおったぞこいつ。人外だしまぁいいか。
「マークは男っぽいから違う名前がいいかな。」
「意外とわがままだなお前。マクラ・・・マーカス・・・マキ・・・そうだなマキでどうだ?」
「無難な感じだしその名前にするよ。ありがとう。」