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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
世界樹ユグドラシル
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世界樹の食卓

 猪と別れてユグドラシルの大樹林に戻ってきた。

「すっかり夜になっちゃったね。今晩はどこで寝ようか?」

「夕飯もまだでござるな。見たところこの森には食べられるものはないようでござるが。」

「これから食料を集めるか?」

「試練も突破したことだし食事と寝床はボクが用意するよ。」

「ありがとうユグドラシル。助かるよ。」

「少し話もしたかったし気にしなくていいよ。」

「私も手伝うぞユグドラシル。」

 ミカとユグドラシルの二人が食事と寝床の用意をすることになった。二人は古い仲のようだがどういう関係なのだろうか。積もる話もあるだろうし二人だけにしてあげよう。残りメンバーでドワーフの国ニザヴェリルへの道程を計画することにする。


「ニザヴェリルはここから遠いの?」

「ニザヴェリルはミッドガルドのお隣さんだねー。ここからだと歩いて1週間ってところかなー。二国間には通商用の道があるから、そこまで行けば商人に乗せて貰えるかもねー。」

「途中に観光地みたいな場所はないの?何かあるなら寄っていきたいんだけど。」

「まっすぐ進むなら特に何もないねー。迂回すれば遺跡とか小さな村もあるけど寄り道するにはちょっと遠いかなー。」

「それならまっすぐニザヴェリルへ向かおうか。」


「ドワーフはほとんどが何かしらの職人のようだな。国というよりは職人たちが組合のような自治組織を形成している形らしい。魔法主体であまり道具に頼らないエルフと違い、道具を作って使うのが得意なのがドワーフだな。どちらが優れているという話でもないのだが、いまいちエルフとドワーフは反りが合わないのだ。」

「エルフとドワーフは仲悪いイメージがあるね。」

「隣の国というのは大概仲が悪いものだな。ミッドガルドとニザヴェリルは古くから交流があり、互いをよく知っているから相容れない部分があることを理解しているだけで、仲が悪いというわけではないようだが。」

「拙者は刀や忍具を新調したいから楽しみでござるなー。刀はともかく忍具は作っていないだろうしオーダーメイドでござるかね。」

「そうなると結構時間がかかるかもね。しばらくはニザヴェリルに滞在しようか、観光もしたいし。」

「マキ殿のポーチは結構いい値段だったし、ドワーフ製の武器は高そうでござるな。」

「ニザヴェリルにも冒険者ギルドはあるから、そこでクエストを受けられるだろう。ミッドガルドのギルドは受けられるクエストが少なかったが、ニザヴェリルはクエスト依頼が多いようだ。」

「私は見てなかったけどミッドガルドはクエストが少なかったんだ。」

「エルフはあまり依頼を出さないのだ。魔物やモンスターはほとんど居ないし、採集なども自分でやるものが多いからだな。仮に魔物が現れても大人のエルフなら単独で対処できるしな。」

「依頼する必要がないから少ないのか。」

「ニザヴェリルは鉱山や遺跡が多いから、鉱石の発掘や探索クエストが多いみたいだねー。人の入らない場所には魔物やモンスターも居るから、討伐や撃退クエストもあるねー。」

「拙者は強い相手と戦うクエストがいいでござるな。探索も得意でござるが、考古学的な目利きは自信がないでござる。」

「価値のありそうなものは私が教えるよー。私は学者じゃないからできれば専門家がいてくれた方が確実だけどねー。」

「楽しみだねニザヴェリル。」


 だいたい話がまとまったところでミカとユグドラシルが戻ってきた。

「ご飯と寝床の準備ができたよ。」

「二人ともありがとう。」

「ユグドラシルの料理か、どんなものか想像できないな。」

「拙者は好き嫌いはないでござるよー。」

「変なものはないから安心してよ。それじゃあ食卓の準備をしよう。」

 ユグドラシルが手をかざすと急速に木が生えてイスやテーブルの形になった。ランプのように光る花も生えている。結界の壁やリンゴの木もそうだったが植物を自在に操ることができるみたいだ。私が引っかかった蔦がひとりでに切れたのもユグドラシルの仕業だったのだろう。

「すごい能力だね。植物ならなんでも操れるのかな?」

「精霊が付いているような樹は言うことを聞かないかもしれないけど、だいたいの植物は操れるかな。」

「ユグドラシル殿も強そうでござるな。植物を操ってるのは魔法でござるか?」

「ボクにとっては手足を動かすようなものだから魔法とは違うかな。ミカでも真似できないしね。」

 ミカは魔法ならなんでも使えるみたいだけど、種族特有の能力のようなものは使えないのか。


「料理を運んできたぞ。」

 ミカが風の魔法で料理をまとめて運んできた。料理は葉っぱでできた食器に盛り付けられている。透き通った緑色のジュース、ユグドラシルに似た人型に見える根菜、スティック状にカットされた野菜と付け合わせの黄色いソース、見たこともないフルーツの盛り合わせ、豆や穀物を混ぜて炊いたもの。すべて植物由来のようだ。

(一同)「いただきます。」

「なんか変わった料理だけど、どういうものなの?」

「雑穀ごはんは私が作ったぞ。ユグドラシルは火を使わないからな。」

「緑のジュースは死人でも甦ると評判のボクの葉っぱを、甘い木の実の汁に溶かしたものだよ。野菜はそこらで採れるもの適当に集めただけで、黄色のソースは酸っぱい木の実をすり潰したものだよ。」

「ユグドラシル殿の形をした根菜はなんでござる?」

「それはマンドレイクだね。ボクが作るとボクの形になるんだよね。なんかしゃべるけど食べると魔力の回復が早くなるよ。」

 ユグドラシルはそう言うと頭からバリバリとマンドレイクを食べた。まるで共食いのように見えるけど、木のユグドラシルと根菜のマンドレイクだし実際は関係ないのだろう。

「金色の果物があるけどあれは食べられるの?」

「黄金のマルメロは食べると寿命が延びるって言われてるよ。昔はこれを欲しがって試練を受けに来る奴も多かったね、最近はいないけど。」

「食べるだけで寿命が延びるってすごいね。どのくらい延びるの?」

「1個で100年とか言われてるけど、ボクは寿命なんてないしよくわからないよ。」

「ユグドラシルも不死身なの?」

「ボクは世界樹だからね。世界が滅んだりしない限り死なないよ。」

「ミカも不死身だけど、不死身の存在って結構いるのかな?」


「100年程度ならエルフにとっては大したものではないが、他種族にはかなりの延命だ。家族や友人と同じ時を生きられなくなってしまうかもしれないが、アカネは食べても大丈夫なのか?」

「和の国にはいつから生きてるのか分からない妖怪狐とか仙人、300歳越えた亀爺さんとかもいるし問題ないでござるよ。忍者の秘法には延年転寿に関わるものがあるから、忍者の頭領も年齢不詳でござるし。」

「和の国ってなんか別世界の話みたいだね。」

「島国であまり他国と交流がなかったでござるからなー。」


「いやーものすごい効力の料理だねー。まさに伝説級の食材だよー。ユグドラシルの能力に完全に依存しているからエルフでも真似できないけどねー。」

 私には毒も薬も効かないから、すごい効能を持った料理でも特に意味がないのはなんとなく残念だな。美味しいけれど。ユグドラシルの情報が図書館に記録されたらここを訪れる人が増えるかもしれないな。


(一同)「ごちそうさまでした。」


 食事が終わるとユグドラシルが再びテーブルに手をかざした。するとテーブルごと食器や食べ殻もすべて地面に飲み込まれるように消えてしまった。片づけが楽でいいなユグドラシルの食卓。どこに消えたのか少し気になるけれど。

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