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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
世界樹ユグドラシル
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ユグドラシルの試練

 ユグドラシルを狙う人間達を追い払ったので、猪が待っている壁に向かう。

「今回は相手がすぐに退いてくれたからよかったが、不死身に任せた脅しはあまり有効とは言えんな。」

「そうだね。結局相手を怒らせて恨みを買ったみたいだし、痛めつけて追い返すのと結果的には同じだったね。」

「転生者の炎を受けたのにポーチは平気だったみたいでござるな。」

「あ、ポーチ着けてるの忘れてた。よく燃えなかったね。」

「雑貨屋が火に強いって言ってたしな。ドワーフ製のものは壊れないって話は本当みたいだな。」

「壊れないって言っても限度はあるだろうし、不死身にかまけてわざと攻撃を受けるようなことはやめた方がいいね。それで相手が退いてくれるとも限らないし。」

「戦えないのに無理に戦う必要もないしな、私が居るし。」

「うん、頼りにしてるよ。ミカやユグドラシルを狙う理由も聞きたいし、また人間に出くわすことがあったら話を聞こう。」


「さっきの一団が空を飛んで高速で離脱を始めたな。飛龍か何かに乗ったのかもな。」

 ミカは先ほどの転生者の動きを魔力感知で確認していたようだ。あのまま逃げ帰ってくれたのはよかったが、人間を裏切った転生者として私の情報が他の人間達に伝わってしまうな。パンダだし別に人間に肩入れする理由もないと思うんだけど、裏切りなのかな?しかし、今回の対応は悪手だったな。次に人間と出会う機会に即座に敵対状態になってしまうかもしれない。過ぎたことを悔やんでも仕方ないし、その時が来たら何とか誤魔化そう。


 猪の待つ地点まで戻り合流したが先ほどまで有った壁は無くなっていた。人間達が居なくなったからユグドラシルが解除したのだろう。

「なんだかわからんがうまくいったみたいだな。壁が地面に消えていったぜ。」

「これでユグドラシルに会いに行けるね。」

「あいつに会うのは久しぶりだな。」

「この先は猪の住んでる森以上に鬱蒼としてるね。」

「和の国の山を思い出すでござるなー。魔力が充満している感じも含めて。」

「アカネも魔力感知できるの?」

「これだけ異様な雰囲気なら拙者でも感じるでござるよ。」

 私はまったく分からないんだけど、本当に私も魔力の知覚できるようになるのかな?不老不死だから時間はいくらでもあるし毎日寝る前に練習しよう。


「それじゃあ行くぞ。」

「おー!」

 ミカに先導されて樹海に分け入り、ひときわ巨大な木の根本へとやってきた。樹海には巨大な木が折り重なるように生えていたが、すべて同じ種類の木で他の動植物は見当たらなかった。ユグドラシルの影響でこんな特殊な森ができているのだろうか。

「おーいユグドラシル。会いに来たぞ。」

 巨大な木は葉をざわめかせながら縮んでいき、小さな女の子の姿になった。

「おー久しぶり?クレス・・・クロ・・・なんだっけ?」

「お前は相変わらず人の名前覚えないな。今はミカだからちゃんと覚えろよ。」

「短くなったね。それならボクでも覚えられそう。」

「ぼくってことは男の子なの?」

「樹に性別はないよ。人形態は一応女の姿だけどね。」

「巨大な木がどうやってこんな小さい子になったでござる?体重はどうなってるでござる?」

「どうやってと言われても、生まれつきできることだし考えたこともなかったな。体重は見た目通りだよ。」

「あなたがユグドラシルなのか?なんとなく神聖な感じを想像していたのだが、普通のこどもの様な雰囲気だな。」

「神聖ってのがどんな感じか分からないけど、ボクはボクだよ。エルフが会いに来るなんて珍しいね。ところで何しに来たのミカ?」

「世界旅行に出かけることにしたから、その挨拶にな。しばらく家を空けるぞ。」

「前の旅行は一人だったけど今回は仲間がいるんだね。」

「ふふん友達だぞ。」

「へー。なんか変わった動物がいるね。」

「自己紹介してなかったね。私はパンダのマキだよ。」

「拙者はアカネでござる。」

「吾輩はフィオだ。」

「私はミミルだよー。ユグドラシルに関わる伝説について聞いてもいいかなー?」

「ボクあんまり昔のことは覚えてないなぁ。伝説になるようなことした覚えもないし。」

「そっかー。それじゃあ仕方ないねー。とりあえず変身能力や壁の事を記録しておくよー。」


「ユグドラシルは5人組の人間達には会ったのか?」

「めんどくさそうだったから追い出して結界張ってたんだけど、さっき居なくなったね。ミカ達が追い払ったのか。」

「ユグドラシルはどうして人間に狙われていたの?」

「邪教がどうこう言ってたけど興味ないから聞いてなかったな。人間は追い返しても数年たつと忘れたようにまた来るんだよね。毎回別の奴が来てるみたいだけど。」

 人間の目的はユグドラシルに聞いてもわからなさそうだな。邪教という事は宗教関連の話なのかな?


「そういえば猪のリンゴを頼まないといけなかったね。」

「そうだったな。ユグドラシルよ、リンゴ100個欲しいんだけど出せるか?」

「出せと言われればすぐ出せるけど、ただであげるのはよくないよね。何かを手に入れるならそれなりの努力をしないと。」

「ユグドラシルの試練か。お前は昔からそういうところがあるな。リンゴくらいいいんじゃないか?」

「ただ与えるのは簡単だけどそれじゃあ成長できないでしょ。私から何かを与える場合は、次からは私が手を貸さなくても生きていける意思を身に付けてもらわないとね。」

 何か試練を突破しないとリンゴはもらえないようだ。猪にはここまで乗せてもらったし、エルフの森に出て行っても困るから試練に挑戦しよう。


「試練の内容だけど、ボクが樹になるからそれを登って頂上の枝を一本取ってきたら合格だよ。空を飛んだり転移するのは禁止で、ちゃんと手足を使って登ってね。あとミカは試練必要ないから除外ね。他の3人で頑張ってよ。」

「枝を折っても大丈夫なの?」

「すぐ生えるから遠慮しなくていいよ。」

「楽勝でござるな。一発で決めるでござるよ。」

「それじゃあ変身するから頑張ってね。」

 そう言ってユグドラシルは再び木に変身した。樹高は50mくらいで人型になる前の最初の状態より小さくなっている。試練の内容に合わせてサイズを変化させているのかもしれない。


「それじゃあ拙者から行くでござるよ!」

 アカネは勢いをつけて一気にユグドラシルを駆け上がるが、すぐに止まって降りてきた。

「ユグドラシル殿の木は結界の壁と同じで体力を吸われるでござる。登り切るのは拙者には無理そうでござるー。」

「アカネはすぐ止まっちゃったけど、結界の壁よりも強力なエナジードレインがかかっているのかな?」

「ならば次は吾輩が挑戦してみるか。魔法で体力を回復しながらなら登ることができるだろう。」

 宣言通りフィオは順調にユグドラシルを登っていく。しかしあと少しで頂上かというところで動きが止まってしまった。

「どうしたのフィオ?」

「これは上に登るほどエナジードレインが強力になっていくぞ。さらに魔力を吸収するドレインも同時にかかっているな。これ以上は登れないようだ。」

 フィオはゆっくりと降りてきた。

「エルフの魔法耐性を貫通するとは恐ろしく強力なドレインだな。」

 アカネが登りフィオが回復魔法をかける形で、二人で協力すれば試練をクリアできそうだけど、せっかくだし私も挑戦してみよう。


「私は疲れないし魔力も関係ないからたぶん登れるんじゃないかな?」

「言われてみればマキ殿向きの試練かもしれないでござるな。ここは任せたでござるよ。」

 私はゆっくりとユグドラシルを登り始める。やはり不死身の体ならエナジードレインは無視して登ることができるようだ。私は素早くないので時間はかかったがそのまま頂上まで登ることに成功した。

「それじゃあ枝を一本貰うよ。」

 私は一番頂上の枝を一本折ってユグドラシルから降り始めた。少し降りてから今朝の事を思い出したが、パンダは木を降りるのが苦手なのだ。案の定私は手を滑らせてユグドラシルから転落してしまう。不死身なので別に落ちても問題ないのだが、反射的にバタバタと暴れてしまいユグドラシルに絡みついた蔦に首が引っかかった。蔦は頑丈で私は宙吊りになり地面すれすれで落下は止まった。

「降ろしてー。」

 苦しくはないのだが、私の力では蔦を引きちぎることができないので助けを求める。しかし仲間たちが助けてくれるより先に、蔦がひとりでに切れて私は地面に降り立つことができた。


 試練が終わったためユグドラシルは再び人の姿に変身した。

「はい試練合格おめでとう。その枝は記念にあげよう。」

「ありがとう。試練をクリアしたからリンゴも貰えるの?」

「猪たちの森に行ってリンゴの木を生やしてあげるよ。」

「ここから離れてもいいのか?」

「すぐ近くだし大丈夫大丈夫。」

 樹海から猪の住む森へと移動する。ユグドラシルが穴を掘って種を植えると瞬く間に立派なリンゴの木が生えた。実もたくさんなっているので猪の彼女も満足するだろう。

「これもユグドラシルの力なのか、すごいね。」

「試練をクリアされるのは久しぶりだからサービスだよ。人間達は試練を受けに来るわけじゃないし本当に久しぶりだよ。」


「ありがとなお前たち。彼女も喜んでくれるよ。」

「それじゃあお別れだね。乗せてくれてありがとう。」

 猪にお礼を言って別れ、再びユグドラシルの樹海へと戻る。

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