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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
世界樹ユグドラシル
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人間の転生者

 巨大猪に乗って森の中を進む。深い森の中だがすごい速さだ。

「うまいこと木を避けて走るんだね。」

「この森は俺たちの縄張りだから目をつむってても走れるぜ。」

「猪はどのくらい居るの?」

「俺たちの群れは30頭くらいだが他にも群れはあるぞ。細かいことはわかんねえけどな。」

「その巨体だと食べる量もすごそうだけど、森は荒れないの?」

「ここら辺の森はユグドラシルの影響を受けてるから植物の成長がものすごく速いぞ。猪たちが普通はこの森から出てこないのも食料が十分あるからだな。」

「ユグドラシルがいなくなったら大変なんだね。」

「私が知る限りあいつがこの土地から離れたことはないけどな。うちに呼んでも来ないし。」

 呼んだことはあるんだ。来てくれなかったから友達じゃなくて知り合いって言ってるのかな?


「そろそろ壁に着くぜ。俺にはどうにもできないから任せるぞ。」

 猪の言う壁が見えてきた。たくさんの木が絡み合うように生えて巨大な壁を形成している。見渡す限り延々と続いており回りこむことはできないようだ。

「すごい不自然に壁ができてるね。」

「つい最近急にできたんだ。俺たちはあまり大樹林には入らないし、別に困らないから放っておいたんだけどな。」

「図書館のデータにもこんな壁があるなんて情報はないねー。」

「拙者ちょっと登って様子を見てくるでござるよ。」

 アカネが壁を駆け上っていくが、徐々にスピードが落ちて途中で降りてきてしまった。

「なんかこの壁ものすごく疲れるでござるな。」

「触れると体力を吸い取るエナジードレインが発動するようだな。回復してやろう。」

 フィオが壁を叩きながら特性を確認している。アカネは回復魔法で疲労状態から元に戻った。

「千里眼を使っても中が見えないな。転移で内部に入ることもできないようだし、壁に強力な対魔法結界の効果もあるようだな。」


「こんなことできるのはユグドラシルしかいないな。」

「どうして壁なんて作ったのかな?」

「あいつを切り倒そうとしている人間ってのがやっぱりいたのかもな。あいつは戦うのが嫌いだから、追い払ってから近づけないようにこんなもん作ったんだろう。」

「ミカならなんとかできるの?」

「どうにでもできるけど、壁が消えてないってことは近くにまだ人間が居るのかもしれないな。先にそっちを片づけるか。」

「結構広い森だし隠れる場所も多いけどどうやって探すの?」

「転生者ならそれなりの魔力があるだろうし私が探すぞ。」

「吾輩も魔力感知の練習ついでに手伝おう。」

 ミカと最初に会った時も私の魔力に気づいて見つけたって言っていたな。

「すぐ近くに居るみたいだな。」

「5人パーティのようだな。人間は他種族にあまり友好的ではないらしいが話合いができるかどうか。」

「ギフトが分からないし転生者は私とマキで相手をするぞ。たぶん魔力の一番多いやつだろう。」

「吾輩とアカネは少し様子を見るか。転生者が1人とも限らないしな。」

「それじゃ会いに行くか。」


 目立つ巨大猪には壁の近くで待機してもらうことにした。ミカに先導されて森の中を歩いていくと、冒険者風の人間の一団が居た。男が1人に女が4人のパーティだ。

「おー人間だね。」

「こちらに気づいていないし、動きを見る限りあまり強くないでござるな。よく猪がいるこの森を抜けられたでござるな。」

「巨大猪は知能が高いからいきなり襲い掛かってくることはないぞ。鼻が利くから人工物である金属や革の臭いには近づかないようだし、森で出くわすことはまずないだろう。」

「あの猪は私たちに普通に近づいてきたね。」

「昨日会っていたから我々の臭いを覚えていたんだろうな。」

「とりあえず私とミカで話をしてくるね。」

 フィオとアカネには隠れて待機してもらいミカと二人で人間たちに近づいていく。


「こんにちはー。」

「何者だ!?」

 人間たちは武器を抜いて構えたが、私とミカを見て少し気を緩めたようだ。この感じなら話ができそうかな?

「なぜパンダがこんなところに?」

「パンダを知っているという事はあなたたちは転生者ですか?」

「話せるのかお前。俺はジョン、転生者は俺だけだ。そっちは何者なんだ?」

「私も転生者ですよ。」

「人間以外の転生者も居るのか。そっちの妖精と亜人も転生者なのか?」

 ミミルも付いてきていたのか。私からあまり離れられないのかもしれないな。パーティを仕切ってるみたいだしジョンがリーダーなのかな。

「かわいい動物ですね。パンダって言うんですか?」

「パンダはこの世界には居ないのか?向こうの世界でも希少動物ではあったが。」

 他の4人はまだ少女のようだ。強そうには見えないけどなんの集まりなんだろう?


「二人は転生者じゃないですよ。ここで何をしているんですか?」

「俺たちは世界樹を切り倒しに来たんだ。転生者ならお前たちも世界樹が狙いか?」

「やはりお前たちがユグドラシルを狙ってきた人間か。状況から見てあいつに敵わなくて追い返されたんだろう?見逃してやるからさっさと国へ帰れ。」

 人間相手には高圧的だなミカ。嫌いなのかな?

「なんだこの偉そうなガキは?」

「私は見ての通り吸血鬼ヴァンパイアだ。」

吸血鬼ヴァンパイアだと!?辺境の森に棲んでいるはずではないのか!?」

「気を付けてジョン!そこら辺の魔物とは比べ物にならないわよ!」

 人間たちは再び武器を構えなおした。吸血鬼ヴァンパイアはやはり危険な怪物として認識されているのかな。

「私がどこに居ようが勝手だろ。もう一度言うが見逃してやるから帰れ。ユグドラシルは人間が倒せるような存在ではないぞ。」

「化け物の言うことなど聞くか!」

 ジョンはミカに斬りかかったが、振り下ろした剣は片手でキャッチされてしまった。ジョンは掴まれた剣を捨てて離脱した。あっさり剣を捨てるという事は剣士ではないのかな?


「そこのパンダ!お前も転生者なんだろ!なぜ化け物と一緒に居るんだ!?」

「ミカは化け物じゃないよ。強いだけで普通の女の子だよ。」

 自分で言っておいてなんだが普通ではないな。余計なこと言うと話がこじれそうだしいいか。

「おのれ化け物め、転生者すら惑わすのか!俺には通用せんぞ!」

「なんだか話が通じそうもないね。どうしようか?」

「強制転移で人間の国に送り返してもいいけど、それだとまた来そうだしな。二度と来ないように叩きのめすか。」

「そんなことしたらミカが余計に化け物扱いされそうだしなぁ。」

 ミカに警戒しているのかなかなか攻撃を仕掛けてこないな。相手のギフトがわからないから放置すると危険かもしれないし、どうしたものか。


 ミカが争わずに追い返す方法を一つ思いついたので試してみることにする。

「ジョンさんたちが使える最強の攻撃を私が無抵抗で受けるから、それが効かなかったら大人しく帰ってよ。私はミカとユグドラシルには死んでも勝てないからそれで実力差が分かるでしょ?」

 嘘は一つもついていないけど絶対負けない卑劣なルールなのだ。相手が誘いに乗ってこなかったら意味ないけど。

「転生者同士で争っても仕方がないだろ。俺はいかにも弱そうなパンダをいじめる趣味はないしな。」

「私が怖いのか?5対1で逃げ出すとはとんだ臆病者だね。」

「挑発のつもりか?乗らないぞそんな見え見えの誘い。」

 言葉とは裏腹に顔はイラっとしてるな。もう一押しで誘いに乗ってきそうだけど挑発って難しいな。

「・・・。」

「なんだその顔は舐めやがって!やってやろうじゃねぇか!」

 どうやって挑発しようか悩んでただけなんだけどな。まぁ乗ってくれるならなんでもいいか。


「お前たちは手を出すなよ!」

「早くかかってきなよ。いつでもいいよ。」

「死んでも恨むんじゃねぇぞ!いでよ神の炎!」

 ジョンの手から巨大な炎が立ち昇る。よくわからないけど最強の技ならこれがギフトなのかな?

太陽砲プロミネンス!」

 巨大な炎が手のひらで収束しビーム砲のように撃ち出される。私は反応できずに普通に直撃を受けた。無抵抗で受けるって言っておいて正解だったな。私は轟音とともに爆炎に包まれたが不死身なのでなんともない。森が少し燃えてしまったな、後で消してもらわないと。


「もう終わりか?」

「ば、馬鹿な!直撃したはず・・・。」

「直撃したよ。蚊に刺されたほども効いてないけどね。」

 別に何もしてないけどダメ押しに煽ってみる。

「勝ち目ないよジョン。帰れって言ってるんだし帰ろうよ。」

「私たちの本来の目的は魔王討伐だし、ここで無理しなくていいよ。」

 名前すら聞いてなかったけどジョンのパーティの女の子達が引き返すよう提案している。ナイスアシストだ。

「クソ!おいパンダ名前を教えろ!」

「マキだよ。」

「その名前覚えたぞマキ!転生者の裏切り者がただで済むと思うなよー!」

 捨て台詞を吐いてジョンと仲間たちは逃げて行った。


「やれやれだぜ。なんにもしてないけど。」

「弱いのにやるなマキ。あれならここにはもう来ないだろう。」

「戦闘能力ないのに不死身って意味ないかと思ってたけどはったりに使えるね。」

「これでマキも私やユグドラシルみたいに人間に狙われるかもな。」

「あーそうなっちゃうのか。ミカとお揃いだね。」


 隠れて見ていた二人と合流し森の火災を消火する。生木がこれだけ燃え上がるという事はかなりの火力だったのかもしれない。剣さばきは私から見ても大したことなかったけど、それに比べてギフトと思わしき技は強力だったな。大したこと無さそうに見えても転生者には気を付けた方がいいのかな?

「さっきの転生者はどのくらいの強さだったの?」

「火力はまぁまぁでござるが、てんで素人の動きだったし拙者なら初撃を躱してカウンター一閃で倒せるでござるな。」

「あの程度の火力なら吾輩の魔法障壁で防げるだろう。」

「あ、そうなんだ。転生者ってそんなに警戒しなくてもいいのかな?」

「ギフトもピンキリだからな。マキみたいにイレギュラーな場合もあるから見てみないと何とも言えないぞ。」


 ひとまずユグドラシルを狙う人間の転生者は追い返せたが、私も人間達ののブラックリストに載ったようだ。私は不死身だしミカが一緒に居るから平気だろう。人間の国には旅行に行けなくなってしまったかもしれないけど別にいいか。後顧の憂いも晴れたので、心置きなくユグドラシルに会いに行く事にした。

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