ヴァイキングキッチン
「ただいまー。」
王都観光を終えてフィオの家へ戻ると、ヴァイキングが料理をしていた。体がでかいのでキッチンが小さく見える。ごつい見た目の割に几帳面なようで、使った調理器具はきれいに片付けられている。
「帰ってきたようじゃな。夕餉の支度はしておいたからいつでも食べられるぞ。風呂も沸かしておいたがどうする?」
「ありがとう。それでは食事にしようか。」
「ヴァイキングの手料理でござるか。楽しみでござるな―。」
「料理なんてできそうもない顔してるのに意外だな。」
「ふぉっふぉっふぉ。料理ができるとモテるんじゃよ。」
女の子にモテたくて料理覚えたのか。
ヴァイキングが作った料理は猪肉のステーキ、根菜と肉のシチュー、サバのような魚の塩焼き、葉野菜のサラダ、そしてライ麦パンだ。ステーキは塩胡椒でシンプルに味付けしてワインで仕上げているようだ、いい香りがしている。魚の塩焼きは皮に切れ目を入れて網で焼いたようだ。食後のデザートにリンゴ、プラム、ベリー類等のフルーツ盛り合わせも用意されている。こどもでも食べやすい一口サイズにカットされている。粗雑な男料理が出てくるかと思ったが、予想に反して繊細だ。
アルゴノーツの4人はお酒を飲まないので、ヴァイキングにだけ葡萄酒を用意して食事を始める。
(一同)「いただきます。」
「いつもすまないな。本来なら呼び出した吾輩が腕を振るうべきなのだが。」
「好きでやってることじゃから気にせんでええよ。」
「毎回やってるんだ。料理は生前に覚えたの?」
「生きているときにも少しは作っていたが、本格的にやり始めたのはヴァルハラに行ってからじゃな。他の勇者たちも郷土料理自慢が多くてのう。わしも対抗して腕を磨いたんじゃ。」
「ヴァルハラってなんか楽しそうでござるなー。」
「お主はなかなか見どころがあるから、もっと鍛えたらヴァルハラに来ることになるかもしれんのう。」
「勇者になった忍者は聞いたことがないでござるなー。」
「あんまり有名になっていい職業じゃないしね。」
「アカネは吾輩の魔法や合気を教わりたいと言っていたな。共に旅をすることになったのだし道中いろいろと教えよう。」
「よろしくお願いするでござるよー。」
「私は鍛えても成長しないらしいんだけど、合気道なら覚えられるかな?」
「厳密には合気ではないのだが、この技術は反射神経や体幹の強さが肝になるから鍛えなくても使えるというわけではないな。」
「そっかー。私でも使える戦闘技能ってないのかな?」
「鍛えても成長しないのがネックでござるな。魔法も全く使えないみたいでござるし。」
「魔法薬で身体機能をブーストするというのはどうだ?不死身ならば副作用を気にせず強い薬が使えると思うが。」
「マキには毒も薬も効かないよ。身体の恒常化を含めて不老不死だからね。一瞬は効果が出るかもしれないけどすぐ元に戻るよ。」
「爆弾を持って自爆特攻とかできるんじゃないでござるか?」
「さすが忍者、卑劣な戦術だ。」
「忍者に卑劣は誉め言葉でござるよー。」
「ただ爆弾を抱えてつっこむだけなら吾輩が魔法で爆破したほうが有効であろうな。毒や爆弾を抱えて大型生物にわざと飲み込まれるとかいう荒業ならば使えそうだな。」
「穏やかじゃないですね。うん、私は戦わなくていいかな。そんなに戦いたいわけじゃないし。」
「最近のこどもは過激じゃのう。」
巨大猪撃退クエストで下がって見ているだけなのが少し気にかかったので、戦う方法はないかと思ったのだが。私が戦闘に参加するのはとりあえず諦めよう。旅の中で何か見つかるかもしれないし。
(一同)「ごちそうさまでした。」
「そろそろわしはヴァルハラに帰るぞ。必要ならばいつでも呼んでくれよフィオ。」
「ありがとう勇者よ。また会おう。」
ヴァイキングは召喚された時と同じように、魔力の渦となって消えていった。エインヘリアルは条件付きで面倒な魔法かと思ったけど、勇者が自分でなんでもしてくれるので特に面倒はなさそうだ。あのヴァイキングが特別なのかもしれないが。




