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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
エルフの国ミッドガルド
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王都巡り その1

 葡萄酒を食料品店で入手してから一度フィオの家に戻り、改めて王都観光を始めた。ヴァイキングも誘ったのだが、王都はもう見飽きているらしく遠慮されてしまった。そんなに頻繁に呼び出されているのか。


「先にこれから訪れる場所について話しておこう。文化エリアの研究施設、港エリア、それと商業エリアを各々回る予定だ。先にも述べたが王都はあまり観光に向いていないのだ。煩雑さや情緒といったものがあまり感じられない整然とした街並みなのでな。道に迷う心配がない反面、隠れた名所なども特にないのだ。」

「京都なんかは整然としつつも観光名所はたくさん有ったと思うけど、ここは違うの?」

「吾輩は京都に行ったことはないが、名所というのは主に寺社仏閣や歴史的建造物であろう?ミッドガルドは建国以来遷都もしていなければ戦争もないので歴史上のターニングポイントが存在しないのだ。形だけの王政であるから王の遺産のようなものもないし、また宗教も存在していない。エルフの社会性そのものが遺産と呼べるものだが、それが観光に向いているかと言われれば首を横に振る他ない。吾輩は別にそれが悪いこととは思っていないのだが、観光案内する分には少し困るという話であるな。」

「そういうものかな?」

「拙者は好きでござるよ王都。隠れられる場所が少ないから隠密の修行にちょうどいいでござる。これだけ開けた場所で、いかに見つからないかは腕の見せ所でござるよ。」

 褒めてるんだかよくわからないけどアカネはなんでも修行にしちゃうな。


 まずは文化エリアの研究施設を見学することにした。研究施設と言っても大規模な施設ではなく人数もあまり多くないようだ。

「研究開発は基本的には個人で始めて、必要になれば人を募って国家的なプロジェクトとして動かすような形であるな。ここにあるものは誰でも自由に使えるが、足りないものがあれば自ら採取に行ったり、それが難しいならばギルドに依頼を出すといった方法が取られる。今は大規模なプロジェクトはないが、魔法薬の開発をしているエルフ達がいるな。」

「魔法薬ってどういうものなの?」

「薬草や動物の素材などを原料にして、魔力を込めて調合した薬の事だよー。薬の効能を魔法で倍化するイメージだねー。」

「具体的にはどんなものがあるの?」

「代表的なのは農園とか牧場の農薬とか成長促進剤かなー。医療用の薬もいろいろと開発されてはいるけど、エルフは病気にならないし回復も魔法でできちゃうから必要ないんだよねー。そういったものは魔法が得意じゃない種族のための輸出用だねー。」

「拙者はあまり薬を使わないでござるよ。」

「アカネちゃんは獣人種だから自己治癒力と病気への耐性が高いからねー。魔法薬は必要ないかもねー。」


 ふとミカの方を見ると薬品をいろいろ混ぜて何か作っているようだ。

「何作ってるのミカ?」

「温泉の素だよ。」

「そんなものも作れるんだ。」

「私は変わらないけど肌がきれいになるよ。今晩使ってみよう。」

 私にも効果ないんだろうな。そもそも毛皮だから分からないけど。アカネも毛皮だしフィオは元々つるつるだし、このメンバーだと効果あるのかわからないんじゃないだろうか?


「そろそろ次に移動するか。次の目的地は港エリアだ。」


 文化エリアから隣の港エリアへと移動した。名前の通り港があり、いくつか船が停泊している。

「もう気付いているかもしれないが吾輩は海と船が好きなのだ。」

「ヴァイキングにあこがれて海軍に入ったくらいだもんね。」

「まぁ前世での死因は海難事故なのだがな。」

「海が怖くなったりしなかったの?」

「エルフになってからは船に乗ったことはないが、今なら太平洋の真ん中で船が沈もうと死にはしないから怖くはないぞ。」

「エルフは泳ぐのが得意なの?」

「泳ぐ能力は人型種族の中でも普通くらいだな、魔法を使えば総合的には速いが。船が沈んでも平気というのは、いざとなれば転移魔法で長距離転移すればよいからだな。長距離の転移は魔力の消費量が多く、荷物も手持ち分くらいしか同伴できないので緊急時以外は使わないがな。」

 手ぶらで一人旅するには便利そうだけど、大量の荷物を運んだりするには乗り物が必要ということか。農場や牧場の生産品は馬車を使って運んでいたけど、もっと効率的な方法で運ばないのかな?馬車には初めて乗ったから楽しかったけれど。


「拙者は和の国から大陸まで泳いで渡ったでござるよー。」

「和の国から大陸までの距離とか知らないけどアカネすごいな。忍者だからか?」

「忍者だからでござる。」

「私は転移もできるし飛んで海を渡ることもできるぞ。」

「ミカはなんでもできるね。私も不死身だから頑張れば泳いで渡れるかな?」

「マキちゃんは泳ぐの遅そうだし海獣に襲われちゃうんじゃないかなー?」

「海獣ってなに?」

「海の巨大生物の総称だな。吾輩も見たことはないが、あちらの世界で神話に語られるような怪物も存在するようだ。」

「神話に出てくるような怪物ならちょっと会ってみたいな。話が通じるのかな?」

「あいつらは大雑把だから話しても楽しくないぞ。」

「知り合いなの?」

「何人か知っている奴はいるけど、向こうが私のことを覚える気がないから知り合いではないな。」

 なんだか複雑そうな関係だな。


「船はどうやって動かすの?帆船ではないみたいだけどやっぱり魔法?」

「エルフの商船は魔導式タービンで動かしているな。科学の世界の艦船を参考に作られたようだから、動力とデザイン以外は変わらないのであろう。吾輩は特殊技能兵ではなかったので専門外だがな。」

「魔導式タービンはヨツンも開発に携わったんだよー。エルフは道具に頼らなくても自前の魔法で大抵のことは解決できちゃうけど、便利なものは取り入れていかないとねー。」

 陸路は馬車を使っていたけど、船は近代的なんだな。貨物列車のようなものを使った方が効率的だと思うけど自然環境保護とか考えてるのかな。


「最後に商業エリアに行こうか。ギルド登録で訪れたばかりだから分かるかもしれないが、あそこは他国からの商人や冒険者が多いので王都の中では珍しく多様性に富んだ場所だ。世界旅行するならマキは旅行バッグのようなものを買うといいかもしれないな。居住区のエルフの店ではエルフ向けの製品しかないが、商業エリアならばいろいろと揃っているだろう。」

 私は転生したとき何も持っていなかったし特に手ぶらでも問題なかったのだが、今はギルドカードをミカのポーチに預かってもらっている状態だ。一人で行動することもあるかもしれないし自分用のバッグは持っておいた方がよいだろう。

 新たに目的もできたところで商業エリアへと向かう。

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