冒険者食堂
初クエストの達成と冒険者パーティ結成祝いに打ち上げをすることになった。フィオの先導でレストランへと向かう。
「冒険者ギルドでも飲食はできるのだが、あそこは酒場だからな。食べ物も酒に合うものばかりなので吾輩はあまり好かんのだ。」
「拙者も感覚が鈍るから酒は飲まないでござるよー。常在戦場でござる。」
「私は飲めるよー。酔わないけどねー。」
「ミミル居たのか。全然しゃべらないからちょっと忘れてた。」
「酷いなー。私からはあまり干渉しないけど、何か調べたいことがあったら聞いてよー。情報が正しい保証はできないけどある程度の事はわかるよー。」
「フィオとミカが物知りだからそれほど聞くことがないんだよね。」
「吾輩はミッドガルドの外の事はよく知らないから、あまり期待してくれるなよ。」
ギルドから少し離れた路地裏に入り、行き止まりにある一軒の家の前へとやってきた。
「よしついたぞ。」
「看板がないけどここはお店なの?」
「冒険者だけの穴場というやつだな。昔父に連れられて来たことがあるのだ。それでは入るぞ。」
「ごめんくださーい。空いてますかー?」
「いらっしゃーい。おやおやかわいいお客さんだね。ここに来るってことはあんたたちも冒険者なのかい?」
元気のいい少し太めのエルフの女性が出迎えてくれた。今まで会ったエルフはみんな標準体型だったけど、エルフって太るんだな。
「今日登録したばかりなのだが、初クエストの達成とパーティ結成祝いに来たのだ。」
「レオさんちのフィオちゃんじゃないか。あんたも冒険者になったのかい?親子だねー。」
「吾輩は別に父の影響で冒険者になったわけではないのだが・・・。」
「まぁまぁいいから。そういうことなら今日はあたしのおごりだよ!」
「それならばお言葉に甘えるとしよう。」
「ラッキーでござるな。」
「ありがとうございます。」
「冒険者食堂グロッティへようこそ。あたしは女将のフレイだよ。みんなよろしくね。」
女将に案内されて店の真ん中のテーブルに腰を掛ける。
「フィオちゃん以外は初めてだね?うちのオススメを出すからちょっと待ってな。」
そう言って女将は店の奥へと入っていった。口をはさむ暇がない。
「豪快な女性でござるな―。」
「フレイさんは元冒険者だからな。冒険者がみんな豪快なわけではないがな。」
「冒険者登録は終わったし午後からはまた観光したいんだけど、それでいい?」
「吾輩はそれで構わないぞ。」
「拙者もいいでござるよ。」
「私はもともと観光目的だしもちろんいいよ。」
「同志マキよ。明日以降の予定は考えているか?」
「ざっくり世界旅行って決めたけど、あとは決まってないね。ミッドガルドもちゃんと見て回りたいし。」
「吾輩が言うのもなんだが、王都は整然とし過ぎていてあまり見るところはないのだ。今日のうちに主要な箇所は回り切ってしまうだろう。」
「へーそうなんだ。」
「特に行く先がないなら、私の知り合いに会いに行くか?長く家を空けることになるから一応挨拶もしておきたいしな。私の家を訪ねてきたことはないけどな。」
「ミカ殿の知り合いでござるか。強そうでござるな。」
ミカは友達いないって言ってたけど、知人は結構いるんだな。友達との線引きはどこなんだろう?
「お待たせ!フレイ特製ドラゴンハンバーグ定食だよ!」
「ドラゴンって食べられるんですか?」
「ドラゴンは美味いよ!これは味を似せてるだけで本物じゃないけどね。」
「それじゃあ何の肉を使ってるんでござるか?」
「企業秘密だよ。おいしかったらまた食べにおいで。」
「商売上手でござるな―。」
「まぁ図書館にレシピは載せてあるんだけど、料理は勘に頼る部分が大きいから再現は難しいだろうね。」
フレイ特製ドラゴンハンバーグ定食。メインはもちろんハンバーグだがとにかくでかい。冒険者向けだからか500gは有りそうだ。さらに付け合わせにミートボールとジャーマンポテト風の芋料理がついている。肉に肉を重ねていくスタイル嫌いではないがこちらも量が半端じゃない。それと匂いの強い香草のソテーが添えられている。肉だらけなので口直し用だろうか。これには菜食主義者もにっこり。あとはシンプルな黄金色のスープと白米だ。こっちの世界に来てから初めての白米だな。最初の町の農場では田んぼは見かけなかったけど輸入品だろうか?ちょっと野菜が足りない気がするけどおいしそうだ。
(一同)「いただきます。」
「どうぞ召し上がれ。」
「ドラゴンってこういう味なのか、確かにおいしいね。ちょっと鳥っぽいかな。」
「本物も食べてみたいでござるな―。」
「本物はまず市場には出回らないであろうな。稀に冒険者が持ち込むらしいが高価なようだ。」
「そういえばお金ってどういう仕組みになってるの?国ごとに違うものを使っているの?クエスト報酬の時レオさんはクローネって言っていたけど。」
「この世界の通貨はミッドガルドの銀行が発行しているクローネに国際的に統一されている。エルフ社会は貨幣経済ではないのだが、偽造防止技術と国としての安定度が最も高いからだな。ミッドガルドは建国以来一度も戦争をしたことがないのだ。他にも諸々の事情はあるが、主だったところはこの辺だな。和の国や人間の国では独自通貨が残っているようだが、ほとんどの国ではクローネのみを使っているぞ。」
「和の国ではクローネも使えるようになってきてるでござるよ。」
「へー。ちなみにこの定食はいくらなんですか?」
「今日はあたしのおごりだけど、本来なら2000クローネだね。この店は冒険者ギルドの直営だから他所より少し安めだけどね。」
ハンバーグだけじゃよくわからないが、クローネは日本円と同じくらいの価値のようだ。ゾウのような巨大猪の撃退で20万クローネだったが、高いのか安いのか向こうの世界の価値観だと分からないな。フィオは猪を軽々投げ飛ばしていたけれど、報酬からすると結構危険なクエストだったのかもしれない。
(一同)「ごちそうさまでした。」
「はいお粗末様。またいらっしゃい。」
すごい量だったが普通に食べきることができた。私以外の3人も完食したようだ。小さい見た目のわりに大食いだなみんな。女将のフレイに挨拶をして食堂を後にした。
「勇者のための葡萄酒を手に入れて一度吾輩の家に戻るぞ。」
「ヴァイキングの人はお昼ご飯は要らないの?」
「勇者は料理もできるからもう済ませただろう。」
フィオの部屋に有った男物の食器類はヴァイキング用だったのか。幽霊ではないみたいだが一応死者なのに自由だなヴァルハラの勇者。
食料品店に寄ってからフィオの家へと戻ることにした。




