エルフの少女フィオが仲間になった
「それじゃー私は図書館に戻るよー。ミミルの事よろしくねー。」
模擬戦の記録を取り終えたのでヨツンは図書館へと戻っていった。
今後の予定は現地住民であるフィオに任せているが、旅を続けるうえで金策について話をしておかなければならないので、先に相談することにした。
「フィオ、観光を始める前に相談なんだけどいいかな?」
「ああ構わないぞ。なんでも聞いてくれ。」
「私たちは一応世界中を旅することになったんだけど、誰もお金持ってないんだよね。だから何かお金を稼ぐ方法がないか聞きたいんだ。パンダでもできる仕事ってあるかな?」
「昨日話した通り、エルフの社会では基本的に貨幣が使われていないから、エルフの仕事では金は稼げないな。ところでマキは何ができるのだ?アカネのように戦えるのか?」
「私はどんな生き物とも話ができて文字もなんでも読めて、不老不死だよ。どっちもミカの力だけど。それと魔法は使えないけど魔力だけは多いらしいね。あとはただのパンダだから戦うのは無理だよ。」
「ミカの力を一部使えるということか。詳しくはわかっていないのだが転生者ならばそんなこともあろう。共産主義者である同志マキは別とするが、やはり転生者は危険な存在のようだな。」
私も魔王への自爆特攻させられるところだったから危険な存在という認識は間違ってないように思える。他の転生者がどんな待遇を受けているのかはわからないが、ギフトの存在は世界の理を外れたものだろう。
少し思案してからフィオが話し始める。
「この世界は国際的に統一言語になっているので科学の世界のように翻訳や通訳で仕事をすることはできないだろう。人間の国と魔王の国だけは独自の言語も残っているが、この二つの国はその他の種族とはあまり交流がないのでな。しかし言葉を話さない魔物や動物とも話ができるのなら役に立ちそうだな。どんな文字でも読めるのならば遺跡調査や古文書の翻訳にも使えるだろう。不死であれば危険地帯の調査や採集に行くことも容易いか。・・・総合的に考えるとやはり冒険者だな。」
「おーすごく安易な職業だけど筋道が立ってる気がする。」
「世界中を旅するというのであれば交易商人もできなくはないだろうがまず先立つものがない。それと吾輩も門外漢であるが、素人が交易するのは難しいであろうな。商人たちは横のつながりが強く、ギルド制の組織であるから簡単には始めることはできない。ミッドガルドの商業エリアはほとんど自由だが、勝手に商売をすれば捕まる国もある。」
「私も商売はやったことないし尻込みしちゃうな。」
「アカネは忍者だから必要ないかもしれんが、冒険者ギルドに登録すればギルドカードが身分証として使えるぞ。国際的な組織であるから先ほど話した人間の国と魔王の国以外はフリーパスだし公共の施設も無料で使える。武器や危険物の持ち込みも可能になる。強い効力を持つ分登録には厳しい身辺調査や後見人が必須だが、吾輩とミカが後見となれば可能であろう。」
「戦えなくても冒険者ってなれるんだね。」
「マキ殿がなるなら拙者も冒険者になるでござるよ。フィオ殿との戦いでまだまだ修行不足だとわかったし。ただ戦闘技術だけを鍛えるのに限界を感じていたでござる。もっといろんなものを見て回るでござるよー。」
「私も一応登録しようかな。面白そうだしな。」
「賢者は中立不干渉の立場のはずだがよいのか?」
「国際的な組織なら問題ないだろ。特定の種族に肩入れするわけじゃないし。」
ミカは誰とも敵対していないと言っていたが、気分的な話ではなく立場的にそういうものだったのか。私には力を貸してくれるみたいだがそれはいいのかな?
「それでは商業エリアのギルド本部へ向かうとするか。ついでに吾輩も登録することにするぞ。」
「エルフは貨幣を使わないし必要ないんじゃないの?」
「うむ、順番が逆だったな。吾輩も同志マキの旅に同行することに決めたぞ。そのための身分証の発行が目的だ。」
「なんだか急だね。いきなりどうしたの?」
「以前から文献のみでの学習にどこか疑問を感じていたのだ。ヨツンも言っていたが図書館のデータは古いしエルフ以外の他種族については曖昧な部分も多いのでな。それと昨日話していて気付いたが吾輩の共産主義論はもっと実践的であるべきなのだ。この国に籠っていては他種族との交流も限定的であるし旅に出たいと思っていたのだ。」
「エルフが他国に行くのは問題がある、みたいなことをヨツンさんが言っていたけどそれは大丈夫なの?」
「吾輩は見た目的にはこどもであるしマキ達に同行する形なら国際的な問題にはなるまい。成人のエルフが集団で行動することは、他国にとっては脅威的な戦力であるから問題が起きるがな。」
「そっか、問題ないなら歓迎するよ。改めてよろしくねフィオ。」
「フィオ殿は強いから修行の参考になるでござるなー。合気とか魔法を教えて欲しいでござる。」
「エルフは少し内向的過ぎる社会だから外に出るのはいいかもな。」
「うむ、改めてよろしく頼む。」
「フィオちゃんご両親にはちゃんと報告してねー。」
「ヨツンさん?・・・あーミミルか。話しかけなくても勝手にしゃべるんだね。」
「私はヨツンの思考をベースに作られてるからねー。客観的に記録を取りたいからあまり干渉する気はないけど普通に話もできるよー。」
見た目はかわいいけど中身はヨツンそのものなのか。
「ヨツンも記録を見るであろうが、ちゃんと報告はするから安心してくれ。それではまず宮殿に向かうか。」
フィオが仲間になり、冒険者ギルドに登録することが決まった。
当てのない観光旅行だったが、世界中の記録を取るという目的もできたので少しやりがいが出てきたな。転生者や記憶保持者についてもいろいろ調べてみたいしできることはたくさんありそうだ。
パンダになってしまって少し後悔していたが、この世界ではいろんな種族がそれぞれの思惑で自由に生きているようだ。ミカの助けのおかげもあるが、パンダであることはそれほどデメリットにはならないのかもしれない。




