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ヴァンパイアとパンダ  作者: 怪獣大熊猫
エルフの国ミッドガルド
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フィオ式共産主義

 前世の記憶を持っていた吾輩であるがこの世界ではそういったことが稀によくあるらしく、両親も兄も特に気にはしていなかった。吾輩は他のエルフと同じように普通に育てられたのだ。

 エルフの社会に学校というものはなく独力での学習が基本である。これは諸々の事情があるが本質的にはエルフにとって学校が教育機関として有効でないのが理由だ。人間ならば競争することに意義を見出すものもいるであろうが、エルフはそういった敵愾心がとても薄いのでこれは利点にはならない。自らの意志でやりたいことを選びそれに合わせて学習するのだ。もちろん大人たちは相談に乗り助言するが、何かをしろと強要はしない。精神的に自立して自分自身の意思を持つことをまず教えられるのだ。

 エルフにとっての学校の代わりとなるものは王都の大図書館である。そこでは有志の手により学習しやすいように指針が示されているが、必ずしも従う必要はない。自分で考えることこそが重要だからだ。自身の成長に合わせて学習期間は変わるが身体の成長も鑑み100年程度は王都に籠って学習することが通例となっている。


「ここまでが吾輩の体験を通したエルフ社会の話である。」

「ところで大図書館ってどういうところなの?」

「大図書館はその名の通り書物を所蔵している施設だが、興味があるなら明日にでも実際に案内して説明しよう。」

「うんよろしく。エルフはこどものうちから大変そうだね。」

「元人間である吾輩の視点から語っているのでそう思えるが、エルフの精神的な成熟度からすれば普通の事であり、この教育システムがこどもへの負担にはなってはいないのだ。」

「エルフはみんな100年も勉強するんでござるか、もやしになっちゃうでござるよ。」

「学習とは言っても座学だけではない。体力づくりや戦闘技術の訓練、魔法の実践、フィールドワークも含まれている。」

「フィオ殿も戦えるのでござるか。拙者エルフとも一度手合わせしたかったでござる。相手して欲しいでござるよ。」

「ミカにはいきなり攻撃したけどアカネも相手に確認するってこと知ってたんだね。」

「勝負を挑む相手は選んでるでござるよ。ミカ殿は勝てる気がしなかったのでとりあえず不意打ちしてみたでござる。」

「そのりくつはおかしい。」

「模擬戦闘ならば吾輩も構わんが今は話を続けるぞ。」


 先に述べた通りミッドガルドは共産主義国家であるのだが、これはおそらく正確ではない。この国こそが共産主義という思想のモデルなのだ。マルクス等の共産主義者達が提起した思想はこちらの世界で見たこの国をもとに形作られたと吾輩は考えている。彼らはこちらの世界の記憶保持者であったのだろう。この世界に来て改めて確信したが共産主義こそが生命が目指すべき到達点である。

 エルフは共産主義的な種族であり、これは教えられるまでもなく生来身についているものである。100年もの学習期間のおかげでもあるが、エルフの大人達は個人の能力が高く自立心が強いので、命令されずとも自分で考えて行動するのだ。人間の視点から言えば自分勝手な行動や悪意あるものが生まれそうであると思うかもしれないがエルフにはそういうものはいない。これは種族としてとても強かったこと、天敵がいなかったことが要因だと吾輩は分析している。

 社会を形成する以前の自然界での生活でもおそらくエルフは危機に瀕したことがない。エルフにとって魔法とは言葉を覚えるのと同じで自然とみな使えるものなのだが、多種族より圧倒的に強いためエルフは生存競争に参加していなかったのであろう。悪意が生存本能からくるものであるというのは吾輩の持論でありそれが正しいかどうかはわからぬが、ともあれエルフには悪意が存在しないのだ。


 こう言ってしまうとエルフの共産主義的な特性は生まれついてのものであり、人間にはやはり無理であると思うかもしれない。確かにエルフの社会をそのまま真似することはできない。100年間の学習など多種族の寿命では不可能だし、食糧事情や戦闘技術を含めてたいていのことは種族として持っている強力な魔法の力で解決しているからだ。

 だが多種族に共産主義が実現できないかといえばそれは違うと吾輩は知っている。前世での吾輩は共産主義者であったし少ないながら同志も居た。また日本でも独自の共産主義社会が形成されていたことが反証としてあるからだ。

 形は違えど共産主義は誰にでも実践できることなのだ。


「要約すると共産主義は”自分で考えてみんなのためにいいことをしよう”ってことなんだね。」

「さすがは同志マキ理解が早いな。だが共産主義とは完成がなく、常に向上心を持って挑まねばならない哲学なのだ。正解は存在しないし吾輩もさらに探求せねばならないと話していて実感した。」

「フィオはほとんど完全に前世の事を覚えているみたいだね。」

「まあそうであるな。」

「前世では男性だったみたいだけど、今は精神的にはどっちなの?」

「難しい質問であるが、今は女性寄りであろうな。何せエルフになってからの期間の方が長いからな。」


 同志認定されている理由が分かったところで夜も更けてきたのでそろそろ寝ることにした。

「吾輩は私室で眠るので客間のベッドを使ってくれたまえ。」

「この家は屋根裏がないのでござるな。仕方ないからフィオ殿と一緒に寝るでござるよー。」

「吾輩は構わないが狭いぞ。」

「よろしくでござる―。」

 アカネはなぜかフィオと一緒に寝るようなので私はまたミカと一緒に寝ることになった。

 明日は王都の観光をすることになるだろう。大図書館も気になるが金策に関してもいろいろ聞かなくてはならないな。

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