ミッドガルドの社会について
フィオに急かされるようにして家に招待された。一文無しで旅行とは我ながら無謀だったので何か金策しなくてはならないだろう。不老不死なので気が大きくなっていたのかもしれない。実際何も食べなくても私とミカは平気なので最悪困りはしないのだが、アカネはそういうわけにもいかないし旅行を楽しむにはお金が必要だろう。私でもできる仕事があればよいのだが、短期でいいバイトがないかフィオに聞いてみようか。
「お邪魔します。」
「お邪魔するでござる。」
「うむ、何もないところだが遠慮せずに上がってくれ。」
「一人暮らしって言ってたけどギルさん以外に家族は居ないの?」
「む?誤解させてしまったようだな。吾輩は自立して一人暮らししているだけで両親とも健在だ。」
「へー小さいのに偉いね。」
「ハッハッハ。同志マキよ人を見た目で判断してはならん、吾輩はこう見えて100歳を超えている。エルフとしては若輩であることに変わりはないがな。それにミカも幼い姿ではないか。」
「私は成長しないから幼いわけじゃないぞ。」
「年上だったのでござるかフィオ殿。エルフは長命と聞いてはいたでござるがこれほどとは・・・。あ、拙者の年齢は秘密でござる忍者なので。」
別に聞こうとは思ってなかったけど秘密にされると気になる。
「さて、まずは謝っておこうか。騙したようで悪かったが、この国では旅行者が滞在する分には貨幣は必要ないのだ。」
「え?宿とか飲食にお金がかからないってこと?」
「他国との関係上貨幣経済の形を取ってはいるが、ミッドガルドには本来貨幣はなかったし国内では商人を除いてほとんど使われていないのだ。」
「ふーん。よくわからないけどそれならなんで泊めてくれるって言ったの?」
「日本からの転生者と和の国の出身者。二人を家に招いて話がしたかったのでな、方便だ。理由がないと遠慮するであろう?日本人はやたらとオクユカシイからな。」
「そうかな?・・・そうかも。」
「拙者はあまり遠慮しないでござるよ!」
威張るところなのだろうか。
「貨幣がないってそれでうまくいくの?」
「ふふふ、興味が湧くであろう?吾輩も驚いたのだがこの国はなんと共産主義国家なのだ。」
「うーん・・・うん?」
「エルフには私的財産という考えは存在せずほぼすべての社会的営みは共有されている。権力闘争もなく、みな平等で上下関係もない。いわば共産主義の源流たる思想が形となったのがミッドガルドなのだよ。」
「うーん・・・すごいね。」
何言ってんのか全然わからんけど、フィオってもしかしてヤベー人なのかな?
「ここは王都だし王様がいるんでしょ?王様は偉くないの?」
「この国にはたしかに女王が居るが、外面的にわかりやすい代表者であって国内においては特別偉いとか権力があるわけではないのだ。いわばシンボルであるな。代替わりも世襲制ではなく能力的に最も適したものが就いているだけであるしな。」
「へー。向こうの世界だと共産主義は絶対失敗するってイメージだけど大丈夫なのかな?」
「よく知らないけど拙者もそんなイメージでござるな。」
「あちらの世界でも完全ではなかったが共産主義の成功例は有ったではないか。」
「え?そうなの?」
「同志マキそして同志アカネよ、貴様ら日本人の事であるぞ。」
「え?日本は資本主義だと思うけど?」
「そもそも資本主義と共産主義を比べることはできないのだが、その辺は後で語るとして・・・。まずは吾輩の前世の話をしようか。これは日本人が共産主義者であると確信している理由でもあるのだが。」
「そういえば夕飯どうする?」
ミカがすごい唐突に話を割った。正直気疲れしてきていたので少し助かった。
「む?そんな時間か。すまないな同志つい熱が入ってしまった。食事の用意は吾輩がするので少し待っていてくれ。」
「料理なら私も手伝うぞ。」
「ならお風呂の用意は拙者が任されるでござるよ。」
「じゃあそっちは私が手伝うよ。」
「そうかよろしく頼む。話の続きは後程にな。」
料理はフィオとミカ、風呂の準備は私とアカネでやることになった。私が料理すると毛が混入しそうだし適材適所だ。




