25 お嬢様、思い出せなかった
「むしゃ……ごくん。ちょっとおちつこう」
タルトを食べながら、考え直す。
アーモンドとりんごの、花言葉は良かった。良かったけれど、タルトを食べ終えた今、花がこの感動を上回るとは思えなくなってしまった。
うん、アーモンドとりんごは、お花より食べる方がいい。
落ち着いて、もう一度辞典を読み直そう。さっきは怖い花言葉を見つけたせいで、ちょっと流し読みになってしまった部分があった筈。
「うーん……これは……ふむふむ……おお!?」
とうとう、見つけてしまった。きっと、わたしたちの友情に、ぴったりなお花。その名は……デンファレ!
「デンファレは……『お似合いな2人』だって! ぴったり!」
庭師さんに、どの時季のお花か聞いて来なくちゃ!
「おーい、にわしさん! 待って! わあっ」
「おや、お嬢様、そんなに慌てちゃいけません。こんにちは。いい天気ですねぇ」
「ほんとだねぇ」
陽射しが気持ちいいなぁ……
「おっと、そっちに進んじゃいけませんよ。穴を掘ってあります」
「えー! あぶなかった! ねえ、いまあぶなかったね! かんいっぱつ! えへへ」
「ふふ、間に合って良かったですねぇ。この穴は、何のために掘っていると思います?」
「うーん。どうして?」
「おやおや、降参するのが早すぎますよ。何かを埋めるためです。わかりますか?」
「わかった! どんぐり!」
「それはリスですねぇ。私は庭師なので、これを埋めますね。なんでしょう?」
「あ、玉ねぎだ! もしかして、にわしさんの好物?」
「いいえ、お嬢様。これはチューリップの球根です。春に咲く、チューリップですよ」
「でも、いまは秋だよ? 春まで、まだまだあるよ!」
「はい。ほら、この穴を見てごらんなさい。凄く深いでしょう? チューリップは、ふかーい所に、ながーい間埋めておきます。寒い冬を越えて、ようやく春に花を咲かせてくれるのですよ。感慨深いですねぇ」
「ほんとだねぇ」
「そうなのですよ。だから、お嬢様も、あんまり慌てちゃいけません。チューリップの球根は、秋植えて、春咲くんです。それでいいんですよ」
「そっかぁ。気をつけないと! わたしも、のんびり頑張って生きていくね」
「ええ、それが宜しいですよ。さ、あちらへどうぞ。リスが見えるとっておきの場所がありますよ」
「わーい! にわしさん、だいすき!」
リスさん、見たかったんだぁ。
「ほら、ここですよ。ふふ、もうすぐ冬眠しますからねぇ。今日連れてこられて良かったですよ」
「しーっ! にわしさん、静かにしないと、リスさんがこっちに来ないよ」
「お嬢様、のんびりですよ。ほら、こっちの切り株に腰掛けて。ここは小屋が近いですからね。とっておきのジュースを持ってきましょう」
「わーい! にわしさん、ありがとう!」
とっておきのジュースって、なんのジュースかなぁ。
「ほら、あそこに居る」
「え、どこ、どこ? あっいた! かわいいね」
「可愛いですねぇ。ほら、ジュースが溢れそうですよ」
「わっ、あぶない! ……今の、ほんとにあぶなかったね! 見た? わたし、ひゅって! ひゅって持ちなおしたの!」
「お嬢様は、運動神経が宜しいですねぇ。お味はどうですか?」
「すっごくおいしいよ!」
「ねぇ、あの子、木登りへただね」
「木登りが苦手なリスも、世の中にはいるんでしょうなぁ」
「わたし、あのリスになら、木登り勝てるよ! 見ててね!」
「お嬢様は、木登りがお上手ですからねぇ。おお、これは……素晴らしい腕前です」
「この前、とくべつなワザも考えたんだよ! 見ててね! とうっ」
「あまり無理しちゃいけません……おお。これは、タダで見るのが申し訳ないくらいの腕前ですねぇ」
「はあっ、はあっ……これ、グレートリディ・スペシャルとるねーど1号っていうの」
「ははぁ……若さとは、眩しいものですねぇ。さ、ジュースをどうぞ」
「うん。おいしい! ね、新しいワザ、いっしょに考えようっ」
ベッドの上で、グレートリディ・スペシャルはりけーん2号の復習をする。
ここが、もう少しひねられれば……そう。そしたら、足がいい感じに浮くから……ふぁあ。もう眠たい。
今日は、たくさん運動して、疲れたなぁ。
リスさん、凄くかわいかった……あの木登りヘタな子、大丈夫かなぁ。今度会ったら、鍛えてあげようかな……
チューリップって、努力家なんだなぁ。わたし、も、頑張らないと……むぅ。おやすみなさい。




