表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/53

23 お嬢様、遊ばれた

 

「はぁ……リディ、手紙を直接持っていくって言うのかい? 今日遊びに行きますって書いた紙を持って遊びに来られても、ロザーリエ嬢が困ってしまうだろう? お茶の用意とか、迎える方にも準備がいるんだよ。返事をもらって、約束してから行きなさい。可愛いリディ、いいね?」

「いやっ! お父さま、みて。ここに、ちゃんと書いてあるわ。よていがあいているって、ひまなら来てって!」


  あと、可愛いリディって、貴女のお友だちって! ちゃんと、書いてあるのに。


「いいや、リディ、だめだよ。大事なお友だちのご家族に、悪く思われたくないだろう? それに今日は、ユーリウスも王宮へ行く日だ。一緒に付いて行けないんだよ。だから、手紙だけ出しなさい。私の可愛い姫、お父さまが意地悪で言っているわけじゃないって、ちゃんと分かってくれるね?」


  お父さまが、わたしのために言ってくれているってことは、分かるけれど。

  ロザリーは、わたしがぶつかって、引っ張っても、許してお友だちになってくれたのよ。

  ううん、それだけじゃない。お手紙まで、わたしより先に書いてくれたわ。そんな優しいロザリーに、少しでも早くありがとうって伝えたいのに。わたしの下手なお手紙では、とても伝えきれない気がして、焦ってしまう……


「お父さま……わたし、ロザリーにありがとうっていっぱい伝えたかったの。お手紙より、さきに会いにいったほうが、よく伝わるかなって……」

「ああ、分かるよ、リディ。手紙だけじゃ足りないって思うなら、贈り物をしたらどうかな。約束の日まで、ロザーリエ嬢にふさわしいものを探すんだ。ね? そうしたら、会う日を待つ間も、きっと楽しくなるよ」

「ロザリーにふさわしい、おくりもの……? お父さま! それってすっごく、すてきだわ! わたし、おくりものをさがしてから会いにいく!」

「いい子だ、リディ。出入りの商人にも、話をつけておこう。良いものが見つかるといいね」


  さすが、お父さま! できる大人は、感謝を形にして表すもの。うーん、勉強になるわ。

  さて、わたしの天使さまのために、何を贈れば喜んでもらえるかしら……?




  部屋に戻って、じっくりと考える。贈り物って、どんなものがあるんだろう……? わたしって今まで、どんな贈り物をしてきたっけ?


  ええっと。まず、春にはお父さまとお兄さまの誕生日があるわ。

  わたしは、大好きの気持ちをいっぱい込めたキスと、庭で摘んだお花を贈る。

  そのあと、夏にはお母さまの誕生日が来て、大好きの気持ちをいっぱい込めたキスと、庭で摘んだお花を贈るんだわ。

  それで、秋にはわたしの誕生日が来て、抱っこしてもらって、キスとおやつをたくさん貰うのよ。


  つまり、わたしはロザリーを抱っこして、たくさんのキスを贈って、お花とおやつをあげればいいってこと?


  うーん……なんだか、ちょっと微妙かも。

  そもそも、家族に贈るものと、ロザリーに贈るものが一緒ではだめだわ。

  お父さまも『ロザーリエ嬢にふさわしいものを』って言っていたじゃない。

  お花とおやつは、良い案かもしれないけれど……ロザリーの好きなお花はどれ? ロザリーの好きなおやつはなあに?


「うー! だめだ! わからない!」


  わたしは勢いよく立ち上がった。こんな所で座って、悶々としていたって答えは見つからない。行動あるべし!

  心のおもむくままに、いい! と思ったものを贈ろう。わたしは、直感には定評があるのだ。




  いつものように、屋敷をぶらぶらする。

  使用人たちには、いつものリディアに見えているだろう。でも実際は違う。わたしは、さりげなく振る舞いながら、目を皿にしているのだ。


「おや、お嬢様。何かお探しですか?」

「しつじさん……あなた、何者なの?」

「さて、何者とは。ただの執事ですが」


  絶対にただの執事じゃないわ。わたしの完ぺきな演技を見抜くなんて。この人になら、助言を求めても良いかもしれない。わたしの直感がそう言っている。


「ね、ねえ、しつじさん。こい茶色のかみに、エメラルドの目の、ちょっとキツめの美人さんには何がふさわしいと思う? お花がすきで……ツンツンしているように見せかけて、ほんとはやさしい。そんなさいこうな天使さまに会ったとして、あなたは何をおくるかしら?」

「……ふむ。ちなみに私は、蜂蜜色の髪に、アメジストの目の、甘い砂糖菓子のような顔が好みですね。おやつを食べながらデレデレしているような天使が理想的です」

「あなたの好みはきいていないのよ、しつじさん」


  わたしの直感も、偶には外れるものなのね。


「それは残念です。さて、贈り物ですか……花か、菓子か、光るモノが妥当だと思いますが。もちろん、高価すぎるものは避けてくださいね」

「光るもの?」

「ええ、女性はキラキラしたものがお好きですから。宝石やら、アクセサリーやら、よく身につけておりますでしょう?」

「……ああ! たしかにそうだわ。きほんよね」


  装飾品なんて、贈り物の定番じゃない! すっかり気がつかなかったわ。うん、うん。なかなか良い案じゃないの? わたしの直感は、やっぱり当たるみたいね。


「しつじさん! ありがとう。光るものをさがしてみる」

「いいえ、お役に立てたなら良かったです」




  引き続き、屋敷をぶらぶらする。

  使用人たちには、いつものリディアに見えているだろう。でも実際は違う。わたしは、さりげなく振る舞いながら、光るものを探しているのだ。


  なにかに光が反射する。その方向に走る。庭の噴水だった。


  なにかに光が反射する。その方向に走る。大広間の鏡だった。


  なにかに光が反射する。その方向に走る。メイドさんが持つワイングラスだった。


  なにかに光が反射する。その方向に走る。料理人さんが持つ包丁だった。


  なにかに光が反射する。その方向に走……


「ねえ、きいてもいい? みんな、どうして、光をはね返すものをかかげ持っているの?」


  今まで一生懸命だったから、気がつかなかったけれど。よく周りを見渡せば、使用人たちがみんな、グラスやら銅の鍋やらを持っている。太陽の光をはね返すように、頭上に掲げ持っているのは何故なのか。

  手鏡を頭上でキラキラとさせているマヌエラが、気まずそうに言った。


「いえ……申し訳ありません。今なら、リディア様が光に寄ってくると聞いたもので。つい試したくなってしまったのですわ」


  光に寄ってくるって……わたしは虫じゃないんだから。もうちょっと素敵な表現はなかったのかしら。例えば、キラキラ探訪の旅に出ているとか。いや、これも微妙だわ。


「そこに並んでいるみんなも、そうなの?」


  マヌエラの後ろでそれぞれ光るものを持った使用人たちが、気まずそうに頷いた。


  ふーん。わたし、頑張ってロザリーへの贈り物を探していたんだけどなぁ。ふーん、そっかぁ。わたしが走っていたのは、いつの間にかロザリーのためではなく、使用人のみんなのためになっていたのかぁ。ふーん、そっかぁ。ふーん……


  わたしは、思いっきりふてくされた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ