第三話
大変遅くなりました。・゜・(*ノД`*)・゜・。
「さてと、ここらへんでいいかなぁー?」
石友に烈華と呼ばれていた女はふいに足を止めた。
握られた手首から視線をはずすと、そこには満面の笑みを浮かべた烈華が立っていた。
薄く口紅のひかれた唇を奇妙にゆがませて、それはとてもじゃないけど先ほどまでの美しい笑みとは呼べない。
ぞっとするような、冷笑だった。
それを見た瞬間、紅嬉は心臓がわずかに音を立てて軋んだような気がした。
冷水に投げ込まれた時の感覚に似ている。
思わず烈華に握られている手を自分の方へ強くひき、その腕から逃げようとしたが、この女のどこにそんな力があるのだろう。それはびくともしなかった。
「逃げようとしても無駄よぉ?」
釣り上がった口角が不気味な形に歪む。
赤く塗られたその唇は、どこかしら血を連想させた。
「は…離せ…!」
やはりこの女について来るべきではなかった。石友の方が幾分かまし…。
するりと烈華の白く細い指が紅嬉の腕を這い登ってきた。
ぞくぞくと、幾千もの毛虫が背中を這うような感覚に襲われ、足から頭にかけてきーんとした何かが突き抜けた。
音も無き音、聞こえないはずの音が耳を支配してほんの一瞬目が眩む。
目の前がぱっと白く色を変えた瞬間、気づけば紅嬉は烈華によって壁に押し付けられていた。
「あ…ぅ…」
首に食い込む指が痛い。頭をぶつけたのだろうか、後頭部がガンガンと音を立ててうるさい。
涙に滲む目をうっすらと明けると、目の前に烈華の顔があった。
顔は怨恨に覆われ般若の形相へと変わっており、先ほどまでの美しい笑みはどこにも感じられない。
それは本当に同じ人間なのかと思うほどで―。
「…な…んて……らいよ」
はっと顔を上げると、そこには目に大粒の涙を浮かべた烈華がいた。
肝心の台詞が聞き取れなかったのは酸欠か、それとも元々の声が小さかったせいなのか。
しかしこれを逃す手はない。
紅嬉はほんの僅かに緩んだ拘束を必死の思いで振り切ると、さっと烈華との間に距離を取った。
ごほごほと咳き込むと舌の上に鉄錆の味が広がった。
どうやら喉が干上がって突然流れ込んだ空気に耐えられなくなったらしい。
じわりと滲む血を感じながら、紅嬉は震える両手足を必死にふんばって、烈華と対峙した。
凄く短いですね…前回との差が…orz
次回頑張ります!




