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龍平会 その二

 

「ここ、ですか……?」


 ルミは目の前にそびえ立つビルを見上げた。

 四階建てのそのビルは、祇園通りからそう遠くない路地に位置していた。

 周りには特に目を引く様な場所も無く、一見してここが対魔課が贔屓にしている魔術組織の本拠地だとは思えなかった。

 とはいえ、あくまでここはオフィスであり、総本山とも呼べる屋敷は別にあるのだが、そんな事はルミ達の預かり知る所ではなかった。

 余りにも見た目が普通過ぎるせいで本当にここが夜亟から指定された場所なのか不安になったルミ達だが、先に入って待っていて欲しいと頼まれたので外から様子を伺い続ける訳にも行かなかった。


「……一先ず、入ってみるとしよう」


 そう言って入り口へと向かう霧上の後を追い掛けるようにルミとエリナも続いた。

 どうやらインターホンを押して中から自動ドアを開けて貰わないといけない仕組みらしく、ルミ達が近付いても自動ドアは動く気配がなかった。

 仕方なく霧上がインターホンを押すと、すぐに音声が繋がった。


「はい、どちら様で?」


 野太い、ドスの聞いた声がスピーカーから流れ出した。

 明らかに相手を威圧する気満々だという事が分かる様な声だった。

 ルミが目に見えて狼狽したが、霧上は特に気にした様子も無く夜亟からここに来る様に指示されたという有無と自分達の氏名を伝えた。


「……どうぞ、お入りください」


 どう聞いても歓迎ムードではない声がそう言うと、自動ドアがゆっくりとスライドして三人を招き入れた。

 中が見えない様に黒く塗られたその扉が開くと同時に、ルミ達の視界に二人の屈強な男の姿が飛び込んで来た。

 どちらも派手なシャツを着込み、片方は丸刈りにサングラス、そしてもう片方の上背のある男は金髪をオールバックにまとめていた。

 ルミの脳裏に、神木町を訪れた時の記憶が蘇ったが、どうにか恐怖心を押さえ込み霧上の後に続いて扉をくぐり抜けた。

 中はさほど広くも無く、奥にあるエレベーター以外には右側に設置された受付の奥に扉があるだけだった。

 どうやら、ここはもう一つの入り口の役割を果たしているらしい、と霧上は推測した。


「(まあ当然、簡単に人を通せはしないだろうな……)」


 日々多くの魔術組織による壮絶な睨み合いが続いてる京都故の措置なのだろうが、となれば彼女達の目の前にいる二人がどういう役割を持つのかも自明だった。

 彼等は霧上達を威嚇するように睨みつけ、坊主頭の方が先に口を開いた。


「アンタら、夜亟の兄貴にここに来る様に言われたってか?」


 インターホンから聞こえたのと同じ声の様だったが、生で聞くと迫力が段違いだった。

 ルミは回れ右して帰りたくなったが、既にドアは閉じられていた。

 そもそも、ここで帰ってしまっては何の為に京都くんだりまで来たのか分からなくなってしまうのだが。

 ルミがとてもではないが喋れない状態であると判断し、霧上はため息混じりに自分が話を進める事にした。


「ええ。連絡が来ているはずですが?」


 すると、彼等は顔を見合わせると心底うんざりした顔でこう言った。


「………兄貴もこんな餓鬼共のイタズラに手ぇ貸すなんて、何考えてんだろうな……」


 金髪の方がボヤく様にそう言ったのを、霧上は聞き逃さなかった。

 何となく察しは付いたが、念のために確認しておこうと彼女は再び口を開いた。


「あの、中で待たせてもらう様にと夜亟さんから……」

「帰んな」

「はい?」

「んな話、俺達は聞いてねぇ。ここはガキが来るような場所じゃねぇんだよ、とっとと帰りやがれ」


 予想通りの反応に霧上は思わず苦笑してしまった。

 その態度が気に触ったのだろう、坊主頭の方が霧上に手を伸ばしながら叫んだ。


「何笑ってやがんだ!! いいからとっとと……」


 ガシッ! とその巨大な手を霧上の小さな手が掴んだ。

 次の瞬間、万力に締められる様な痛みが男を襲い、坊主頭は堪らず腕を引いた。


「こ、このガキゃあ!!」


 物凄く、嫌な予感がルミを襲った。


「お主ら、女子に気安く触れるなど礼儀がなっとらんのう。最近の若いのは紳士としての振る舞いが分からんのかな?」


 その口調に、自身と経験に裏打ちされているのであろう強気な笑み、間違いなく霧上の体にはあの(・・)霊が宿っていた。

 ルミが慌てて止めようとしたが時既に遅し、相棒がやられた事に憤慨した金髪が霧上に掴みかかろうとした。


「テメェ、舐めてんじゃねえぞッ!?」


 それを軽く受け流し、ポツリと彼は呟いた。


「全く、血の気の多い奴じゃ。どれ少し稽古を付けてやろう」


 穏便に、どうか穏便に……というルミの嘆願は当然の様に聞き入れられなかった。

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