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夜亟一馬の報告書 暗闇事件について

「はあ……全く、大変な事をしてくれましたね麗子さん」

「ん?一体何の話だ?」

「周りを見て、ご理解頂けませんかねえ……」

  ゲンナリとした様子で夜亟が辺りに目をやる。そこには大勢の人とそれを誘導する警官の群れで溢れかえっていた。

  今日、このテーマパークに遊びに来ていた人達は昼頃以降の記憶がスッポリ抜け落ち、気づいたら入園ゲート前の広場から駐車場にかけて集まっていたらしい。

  そして、奇妙な話はこれで終わりでは無い。

  何と、巨大な黒い壁が立ち上り、テーマパークを包んでしまったという目撃者の証言が出ているのだ。

「言っておくが、事の発端は死神であって私達は何の関係も……」

「いやいや、紅道華院に狙われている子を連れてここに来るというのがそもそもですねえ」

  この後の処理を考えると夜亟は頭が痛くなった。

  政府としては、魔の存在を今現在は市民に対して隠蔽する事を是としている。そのため、目撃者の記憶は操作し、何故人々にこのような現象が起こったのかを説明する理由を考えなくてはいけないのだ。

  当然、任務内容からして対魔課が対応にあたるのだが、慢性的な人手不足のため、これから数日は残業必死だろう。

「仕方あるまい。緋志君達は青春真っ只中なのだからな」

「せっかく麗子さんとの食事の約束を取り付けられたのに……こんなのあんまりですよ……」

「ちっ……覚えていたのか」

「当然ですよ。それぐらいの御褒美が無いと今回みたいな案件やってられません」

  当日の妄想でも始めたのか、ニヤケだした夜亟にウンザリした様子で流れを変える為にも麗子は質問を投げかけた。

「それで?奴はどこの所属だったんだ?」

  その瞬間、夜亟から浮ついたオーラがなりを潜め、急激に存在感が無くなった。

「どうやら、聖神教会異端審問部に所属していた退魔師のようです。ただ、素行、思想に難ありとして教会を破門されています」

  そこで、夜亟は懐から手帳を取り出しペラペラと捲りながら、より詳しい情報を教えてくれる。

「何でも、ほんの少しでも魔族の血が混じっていれば狩りの対象とし。混血の一家を匿った村では村人を全員殺害。果には同僚も牙にかけたとか」

「……それで、教会を破門されたのはいつ頃だ?」

「約、一年前ですね」

  その一言を聞いた時、麗子の中にあった疑問がますます膨らんだ。

「奴は、破門された後どこかの組織に所属したのか?」

「いえ、自分達が調査した限りではどこにも……ですが、それだと腑に落ちない事があります」

  麗子は一つ頷き、同意の意を示しながら、胸の中の疑問を打ち明けた。

「奴は、どうやって紅道瑠美が家から出た事を知った?」

  確かに紅道家は魔に関わる者達の間で名が知られている。しかし、あくまでも魔族であり、日本では例外とはいえ自分達が退魔師から狙われている事は重々承知しているだろう。

  となれば、ルミが家を出たという情報は徹底して隠したはずだ。それこそ、個人で見つけられる様な情報では無い。

  仮に、組織が絡んでいるとして、一体どのような目的で紅道瑠美を狙う?

「どうやら、彼には詳しく話を聞く必要があるようですね」

  夜亟が笑顔を浮かべながら、そう呟く。

  暗い影を纏った優美な笑顔を見た麗子は肩を竦めるとこう言った。

「ま、何か分かったら教えてくれ。それぐらいの報酬はまだ残っているはずだろう?」

「ふう……仕方ないですね」

  夜亟が苦笑すると同時に張り詰めていた空気が緩んでいく。手帳をしまった夜亟はふと、麗子に尋ねる。

「そういえば、彼等は大丈夫だったんですか?」

「何とかな……緋志君も陣君も傷は癒した。ルミちゃんの封印も解いたしな。」

「死神はどうしたんですか?」

「可愛いメイドちゃんが来たのでそちらにお任せしたよ。ま、ルミちゃんの依頼も何とか達成できそうだし、一件落着だな」

「そうですか……それでは自分はそろそろ」

  夜亟は挨拶を済ませ、自分の車に向かおうとクルリと体の向きを変えた。が、そのまま動こうとしない。

「……まだ何かあるのか?」

  夜亟は振り向かず、静かに質問を投げかけた。

「麗子さん、テーマパークの客を外に移動させたのは麗子さんなんですか?」

「だったら何だ?」

  その瞬間、強烈な殺気が麗子を襲う。

  しかし、只の探りだと分かっている麗子は特に動揺もしなかった。

  そんな麗子の気配に気がついたのか、夜亟はフッと殺気を収めると肩越しに振り返り

「いえ、失礼しました」

  穏やかな笑顔を覗かせ、去っていった。

「……相変わらず食えない男だ」

  麗子は自分の事を棚に上げて夜亟をそう評し、辺りを見回した。

「さて、舞ちゃんと夏菜ちゃんは自力で返って頂くしかないかな……」

  そう独り言を呟き、彼女もテーマパークを後にしたのだった

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