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絶体絶命

 遠丞の血を引くものは決まった型の名を口にすることで自らの体をその時出せる限界の速度で強制的に動かすことができる。

 つまり、吸血鬼の血を飲んだ緋志がその力を使用すれば当然、吸血鬼の体が出せる限界の速度で技が発動することになる。

 しかし、人間の知覚できる速度を超えた斬撃をリデラはまるでどんな攻撃が来るかわかっていた様に、わずかに立ち位置を変えるだけでかわして見せた。

「(そんな……)」

 一撃目の切りおろしがむなしく宙を切るのを、緋志は信じられない思いで感じていた。

 体をねじり踏み込みながら二撃目を繰り出そうとする緋志の右側でリデラがボウガンを捨てるのがかろうじて目の端に映る。

 この動きが終わるまで、緋志は体を止めることができない。

「(やばい!!)」

 緋志は強烈な危機感に見舞われ、どうにか体を動かそうとするが呪われた体は止まってくれない。

 その隙を見逃さず、リデラは腰に差していた細身の剣を引き抜き、根元まで一気に緋志の脇腹に突き刺した。

 脳天まで突き抜ける痛みに

 緋志の視界がチカチカと明滅する。

「あぐっ!?」

 緋志の動きが止まった瞬間、リデラがズルッと剣を引き抜き、緋志を蹴り飛ばした。

 緋志の体は吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がり、数メートル離れた所でようやく止まる。

「な、んで……」

 吸血鬼の再生能力のおかげですでに血は止まっているが、痛みの余韻が緋志の額に大粒の汗を浮かべる。

 さらに、大きな混乱が緋志を襲っていた。

 何故、自分の技が見切られた?

「おや、私があの技を見切った事がそんなに不思議ですか?」

 リデラは地面に投げ捨てたボウガンを拾って背中に背負いなおしながら平坦な声で話し始めた。

「あのイカレ野郎…!!」

 華院がどうにか体を動かそうと全身の力を振り絞る。

 リデラはそちらに僅かに視線を送ったが、結局、後回しにしても大丈夫だと判断したのか、緋志の方に再び顔を向けた。

「私の『眼』は特別製なのですよ。一度見た動きを判断材料として蓄積し、相手の動きをシュミレートする。それが私の『戦神の魔眼』の力なのです」




「クソっ! これ抜いたらまずいよな?」

 一方、陣は一向に繋がる気配のないケータイにイライラしながらルミの容体を確認していた。

 既に、息が止まった事を確認してから三分以上が経過している。

 人間なら後遺症が残ってもおかしくない状態だ。

「ちくしょう! 何で麗子さん出てくんねーんだ!?」

 陣は知る由もなかったが、リデラは緋志達に接触する前に、辺り一帯に電波と魔力の流れを遮断する結界を張っていた。

 目的は通信手段を奪う事。

 これにより、麗子に連絡を取ることはおろか、電話や魔術による通信は一切できない状態へと追い込まれていたのだ。

 紅道家に援軍を頼むことも、対魔課を呼ぶこともできない。

 頼りになる戦力はほぼ緋志一人。しかし、その緋志も相性最悪の魔眼によって封じ込められている。

 緋志達は今、死の危機に直面していた。



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