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異端審問官

「ルミ!!」

 地面に倒れたままの華院が叫び声を上げるが、未だに体を動かす事が出来ないらしく、僅かに腕を伸ばす事しかできなかった。

 彼の代わりに倒れたルミに駆け寄ろうとした緋志の体を、彼の本能が逆方向へと振り向かせた。

「くっ!?」

 人の限界を超えた反応で、緋志は飛来した矢を自らの得物で弾き飛ばした。

 キン!!と甲高い音を立てて、矢は茂みの方へ飛んで行った。

 どうやら昼の間でもルミの血は効果を発揮するらしい。

 もし、吸血鬼の身体能力が無ければ、緋志もルミと同じように黒い矢に貫かれていただろう。

「あんた、一体何者だ……」

 緋志はいつのまにか緋志達からやや離れた所に立っていた大柄な男に誰何した。

 男が着ているのは神父服だった。ベルトの様な物を体に巻きつけ、右手には大きなクロスボウを持っている。

そして、髪は陣と同じように金髪、陣と違い瞳の色は青色だった。

「(外国人……それにあの神父服)」

 緋志はその居出立ちに見覚えがあったが、思い出そうとすると頭の中に靄がかかってしまう。

 幸い、男の方が自らの素性を明かしてくれた。

「私、異端審問官のリデラ=ホリングワースと申します。そこの魔族二匹を狩りに参りました」

 丁寧に頭を下げる男の口から流れたのは流暢な日本語だった。緋志はボウガンを持つ手に注意を払いながら華院に確認した。

「あなたの事も狩る気みたいですよ」

「……野郎、俺のことだけじゃなくルミの事をどこから知ったのか、付け狙ってやがった。もう紅道の奴が何人かやられてる」

「な……!?」

 緋志は驚きを隠せなかった。まさか一人で魔族の一大勢力である紅道家に挑んでいるのか?

「俺も一回だけやりあったが……イカれてやがるぞ、あいつは。街中で普通に襲い掛かってきやがった。しかも」

 『死神』と呼ばれ魔術師の世界で恐れられている吸血鬼は全身から怒りを立ち上らせ、神父モドキの男を睨み付けた。

「一般人を魔術で殺しやがった……本物の屑野郎だ!」

 一般人?

 つまり華院を狩るために普通の人間を巻き添えにした?

 思考が停止した緋志を尻目に

 リデラと名乗った男は表情を変えることもなく、淡々と告げた。

「あなたが大人しく殺されれば何の問題も起きなかったのですよ、死神」

 再び、リデラが右手に握る凶器を華院に、向けたその時

「緋志!!」

 今まで沈黙を保っていた陣が叫んだ。

「ヤバイぞ!! ルミちゃんが息してない!!!」

 反射的に陣たちの方を振り向き、『眼』を発動させた。そこでようやく、未だにルミの体に突き刺さる矢に気味の悪い魔力が纏わりついていることに緋志は気づいた。

「ふむ。術式はキチンと発動しているようですね……」

 プツンと緋志の中で何かが切れる音がした。

「お前……」

 小太刀を構え、湧き上がる感情に身を任せながら叫んだ。

「何しやがった!!!!」

 吸血鬼の脚力で爆発的な加速をした緋志は十メートル以上はあった距離を一瞬で詰め叫んだ。

「『惨架ざんか』!!!!」



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