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3 決意

「お待たせしました。熱いので気をつけて召し上がってくださいね!」


フェアルシアさんは紅茶のようなものとお菓子を用意してくれて、あたしはさっそくそれを戴くことにした。

少し苦味のある香り豊かな紅茶だった。お菓子も程よい甘さで先程の緊張と疲れを一瞬にして取り去ってくれる。


「フェアルシアさん!これすっごく美味しです!」


「あらっ、喜んでいただけて嬉しいですわ。どうぞお好きなだけ召し上がってくださいね。」


ふと気がつくと大事なことをそっちのけにしてお茶会みたいに三人で騒いでしまっている。


「あっ、そういえばフェアルシアさん!あたし先ほどの話で聞きたいことがたくさんあるんですが・・」


「あらっ、ごめんなさい!お話をしているのが楽しくって・・ではまず『こちらの世界』のお話からさせて頂きますね。」


どうやらフェアルシアさんはかなりのおっとりプラス天然がかなりはいっているようで・・話し方と説明が長かったので『こちらの世界』の話をあたし的にまとめてみた。



古くからの言い伝えによると遥か昔には現世界と異世界は同じ次元に存在していた。

でもある日を境に別次元のものになって現世界と異界に別れた。

人は生まれ現世界で一生を過ごすが、不慮の災難で命を落としたり、現世界に強い思念を残したまま死んでしまうと魂が異界に行くことが多いらしい。

異界に辿り着いた魂は人であった記憶はなく、ただ破滅と殺戮を繰り返す魔物のようなものになってしまう。姿形は人型であったり獣であったりさまざま。

ある程度の魔物なら結界があるこの屋敷は安全らしい。両親は平穏な世界を取り戻そうと旅に出てしまったので三姉妹だけが残された。

という感じで今に至る。


「なるほど・・なんとなくわかりました。

 ただ元々人間だった人がこちらの世界に魂だけきて殺戮を繰り返すなんて本望じゃないんでしょうね・・なんかかわいそう」


「そうでしょうね・・。私達としてもこの現状をなんとかしたいのですが、私達三人だとどうしても・・」


「じゃああたしも何か協力ます!といっても何も出来ないかもしれないけど・・

 それにさっきメルちゃんが言ってましたけど、もう一人あたしと同じような人がいるって・・」


「ゆうやさんのことでしょうか?・・あの方は・・そうですね・・でも・・」


なにかここでは言いにくそうな感じになっていたので、すごく気にはなるけどあたしは話を変えることにした。


「フェアルシアさん、これってなんなんでしょうか?」


あたしは異世界に来てからついている左手首のゴムの輪っかを見せた


「それはユニオンというらしくありささんの来られた現世界とこの異世界を繋ぐ鍵のようなものらしいです。

 あとそれを使う事によってこちらの世界の魔法も使えますよ」


    きたーーーーーーーーーーーーーっ!!あたし魔法使いになれるっっっ!!!


「ただユニオンはこちらにいるだけで消費してしまいますし、魔法を使うときや現世界にお帰りになられる時も消費するらしいです。

 全部ゆうやさんから教わったことなんですが・・」


左腕を見てみるとユニオンの数はいつの間にか4つになっていた。


「魔法の種類も様々で大きく分けると攻撃属性、守備属性、回復属性、特殊属性に別れます。ユニオンを一つ消費することにより一つの属性の魔法が使えるようになるみたいです。」


「じゃああたしがユニオンを使って魔物を退治しながら異世界の謎を解いちゃえばいいんだねっ」


「ありささんのお気持ちは非常に嬉しいですが、すごく危険も伴いますので・・私としては無理にお願いはできません」


「いいですよぉ!あたし現世界にいたときは毎日毎日死んでいるような生活を送ってましたし。


 人のために何かをしようって思えたのも久しぶりなんです。これってきっと大切なことですよね!


 困っている人を見ないふりしちゃったらあたしの中の大切なものが砕け散っちゃうような気がして。」


フェアルシアさんは少し潤んだ目で、すごく嬉しそうにあたしをみながら


「ありささん、ほんとうにありがとうございます。ありささんがもしもの時は私がすべてを掛けてお守りしますので!」


「あははっ、そんなに気をつかわないでくださいっ!これからよろしくお願いします!」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


私達二人の会話の横で大量のお菓子をたいらげたメルちゃんがいつの間にか寝てしまっていた。


今日はもう遅くなってしまったので現世界に戻ることになり洞窟までフェアルシアさんに送ってもらうことにした。

屋敷から洞窟まで距離にしては結構あったけど何事も無く無事到着し、トンネルを潜り洞窟の前についた。

現世界の戻り方はここに来るまでにフェアルシアさんに教えてもらったのであたしは言われたとおりユニオンのクリスタルのような部分を強く握った。

するとクリスタルの割れる音が鳴り響きまた真っ白な光が一面に広がった。


あたしは恐る恐る目を開けるとそこはしっとりとしたトンネルの石像の前だった。

いつの間にか身体のサイズも元に戻っている。

不思議な感覚に包まれていて妙な歯がゆさの中トンネルを出るともう外はすっかり暗くなっていた。

携帯のライトを頼りに下山しアパートの近くの通りにでたところであたしは現世界に戻ってこれたことを実感した。

そして胸の中で小さく燃え上がる気持ちを実感しながらアパートに向かった。


部屋に入り、ソファーで横になりながら今日起きた非現実的な出来事を思い返してみた。


 他人の為に何かをしたいって思ったの久しぶりたったよ・・仕事をしていたときは自分のことが精一杯でそんな余裕もなかったし、

 辞めてからはそんなこと考えさせられるようなきっかけもなかったし・・忘れていた感情を思い出させてくれたすごく貴重な時間だったなぁ。

 

 今までのあたしは他人に気を使うどころか、自分の生きる気力すらなくなってたんだと思う。

 このままの生活じゃダメだって分かってた。でも何がダメなのか本当に気付いてはいなかったんだよね・・。

 何かを行動に起こすのが億劫で・・また今度とか、いつかその時が来たらとか・・面倒なのを先延ばしにしていただけなんだよね・・

 なんの保証もないのに自分には隠れた才能があって、本気になればなんだって出来る!自分はきっと幸せになれるって・・


 そう思って将来や現実から目を逸らしていただけなんだ。


 思っているだけじゃ何も変わらない。


 今行動にうつさなきゃ。


 なんでも出来るのに、なにもしないで後悔するのはぜったいヤダもん!

 他人の為に何かをするって、すごく小さな一歩かもしれないけど・・あたしは今日から変わるんだ!

 夢を見続けるだけじゃなくて、夢を叶えるあたしになりたい。

 よしっ!明日また異界に行ってみんなのためにがんばろっ!!


 そーいえばあたしともう一人こっちの世界から行ってるゆうやさんってどんな人なんだろ・・


 フェアルシアさんは何か言いたくなさそうだったし・・



 メルちゃんはすごく強いって言ってたけど・・・




 

いろいろ考えるうちにいつの間にか程よい疲れとともに深い眠りについてしまっていた。

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