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2 夢の様な現実

ぼやっとした不思議な感覚の中・・

少しずつ意識が戻ってきて・・

辺りを見回してみると、さっきの洞窟のようだった。


なんだったんだろう・・あの光は・・


しゃがみこんでいたあたしは不思議に思いなからも、

少しふらつきながらも立ち上がり、歩こうとした。

何か身体にいつもと違った?ような違和感を感じつつも、

さすがにここにこれ以上いるのは怖いし、危険だと思いトンネルを出ようとした。

だが入ってきたはずのトンネルの方向には光は見えず暗闇で閉ざされているようだった。

ただ反対側、つまり最初に入った時に出口だと思っていた方には光は見えたままだった。


「と、とりあえず・・外にでよぅ」


歩きにくさを感じつつなんとか外に出たあたしは愕然とした。

明らかにあたしの身体のサイズが小さくなっている。

小人になった訳ではないが、高校生くらいの体型になっているようだった。

手や腕も少し細くなり、胸もほんのちょっとだけど小さく感じた。


服やスニーカーも少し大きめになっているため、まったくしっくりこない。

だから歩きにくかったのね・・。

そこには少し懐かしさを感じつつ。


「てかなんであたしこんな身体になちゃったのぉ??」


どうしよう・・さっきの場所に行けば元にもどれるのかな・・っでももうあそこに行くのはなんか怖いよ・・

それにもう一つ気付いたこと・・左腕の手首に細いゴムのような輪っかが7個通されていてその一つ一つに小さいクリスタルのようなものがついていた。

たまにシュシュやヘアゴムを腕に付けておくことはあるが、これはあたしが持っていたものではない。

もう何がどうなっているの・・と不安や現実を受け止められない衝動が胸のあたりからこみ上げてくる。

そう思っている矢先に周りの異変にも気づき始めた。

ややオレンジ色の空に漆黒の雲がまばらに広がり、遠くで悲しみを叫ぶような雷がなっている。

見渡す景色も天照山ではなく平地に変わっていた。


  ガサガサッ



「きゃあぁぁっ」


あたしは混乱の最中に近くで黒い影が動くようなものが見えて息が止まりそうなくらい驚いた。

そしてあたしは無我夢中で走りだし、勢いで脱げてしまったスニーカーに気を取られず精一杯駆け抜けた。スカートではなく、スニーカーなのでお間違えのないように!

目尻に涙を浮かべつつ心のなかで誰か・・助けてぇと何度も叫び続け、走りぬいた視界に入ってきたものは見たこともないような大きな屋敷だった。

屋敷の周りには入るものをまったく寄せ付けはいほどの大きな塀垣があり、あたしはその壁に勢い良く手をついて振り返ってみた。

何も追ってきてる様子はない。

こんなに精一杯走ったのは生まれてはじめての経験だ。肩で息をし、震える足に手を添えると一気に力が抜けてしゃがみこんでしまった。



「おねえちゃん、だぁれ?」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」



今度はなんなのよぉ・・と涙混じりの眼で声の方を見てみると、5メートル以上もある塀垣の上に女の子が立っている。

そしてその女の子はその高さからぴょんと飛び降りようとした瞬間あたしは強く瞼を閉じ大粒の涙が頬をつたった。

恐る恐る右目を少しずつ開けてみるとそこには、あどけない少女が立っていた。

見た目にして小学生くらい?で髪は肩くらいの綺麗なブロンド。そして透き通るようなアクアブルーの瞳。シルバーの鎧のようなものを身にまとい、

スリットの様な部分からは真っ白な肌が見えている。そしてなにより目を引くのが左手に持った黒い鎌のようなものだ。


「わたしはねっ、メルティークってゆーの!おねえちゃんはぁ?」


「あっ、えっと・・ありさ・・です」


メルティークは目を輝かせながらあたしの事をじろじろ見ている。


「おねえちゃんあっちの世界から来たでしょ?」


あたしはよくわからないまま頷く。


「やっぱりぃ!わぁーい、わぁーい!おねえちゃん一緒に遊ぼぉぉ」


「ちょっと待って!メ、メルティークちゃん!あたし全然意味が分からなくて」


「メルでいいよぉ!お屋敷の方においでぇ!この辺りは魔物がいて危険だし・・きっとおねえちゃんたちも喜んでくれるよっ」


メルちゃんに手をひかれ、あたしは訳のわからないまま正門の方に連れて行かれる。いつの間にかメルちゃんが持っていた鎌のようなものはなくなっていた。


大きな正門の扉の前に立ち止まると、メルちゃんは目を閉じ右手を扉の前に掲げた。すると波紋のようなものが見え重そうな扉が開いていく。

入ってすぐ扉は閉ざされ綺麗な石畳の先に屋敷がみえた。

手をひかれながら屋敷に向う中、メルちゃんに問いかけてみた。


「メルちゃん・・あたし、こっちの世界?に来てから分からないことばかりなんだけど・・もうあたしは元の世界に戻れないの・・かな?」


「んーとねぇ、戻れると思うよっ!ゆうやにぃもそっちの世界から来たってゆってたし。よく遊びにきてくれるんだぁ」


「あたし以外にもここにきた人がいるの??」


「そーだよぉ、ゆうやにぃはとぉぉっても強いんだよ!ありさおねえちゃんは強いのかなぁ?やんっ!そんなことよりもメルと遊んでほしいなぁ!」


無邪気そうに話すメルちゃんと元の世界に戻れそうな思いで安堵した。


屋敷の入口について中に招待されるとそこには中世ヨーロッパ風の作りで中央に大きな階段と吹き抜けになった通路が見渡せる。

「わぁ、素敵!」と思わず声が出てしまうほど優雅な内装だ。

メルちゃんに手を引かれるまま赤い絨毯の上を歩き、長い廊下の先にある一室に案内された。


バンッ


勢い良くドアを開けメルちゃんが


「ルシアねぇ!お友達を連れて来たよぉ」


そこには女のあたしでも二度見してしまうほどの美しい女性がいた。


「メル、おかえりなさい。あら・・そちらの方は・・」


「あっ あのわたし・・ありさって言います。あっちの世界にある洞窟みたいなところにはいったら、こちらの世界にきちゃったんです。

そして身体も小さくなってしまって・・。」


今までの経緯を事細かに説明した。



「私はフェアルシアと申します。三姉妹の長女で、メルが末っ子なんです。

 ・・・そうだったんですね。大変な思いをされて心身お疲れになっているでしょう。今お茶をご用意しますのでどうぞおかけになってください。

 あとこの靴もよかったら使ってくださいね!」


フェアルシアさんは腰くらいまであるサラサラのブロンドヘアーで優しさあふれる瞳はメルちゃんと同じくアクアブルーだった。

大胆かつすごく上品にも見える少し胸元の空いた真紅のドレスはフェアルシアさんにすごく似合っていた。


綺麗な上こんなに優しそうな人が世の中にいるなんて・・

あたしは心からジーンとぬくもりを感じながら椅子にゆっくりと腰掛け一息ついた。

その隣に椅子を近づけメルちゃんがちょこんと座りながら足をパタパタさせている。なんだかとっても嬉しそうだ。


「メルちゃんなんだか楽しそうだね、・・ふふっ」


「だってここに誰か来るなんてめったにないことだもん!ルシアねぇはいつも忙しそうで相手してくれないし、リナねぇはほとんどおうちにいないしぃ。

だからこれからありさねぇと遊べるって思ったらすごぉぉく嬉しいのぉ」


「そーだねッ!たくさん遊ぼうね!・・あははっ」


あたしは出来れば今すぐにでもかえりたいんだけどなぁ・・と心のなかで思いながらもメルちゃんの笑顔を絶やさないように答えた。



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