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15 出陣

ああっ……これから本当に異世界での冒険が始まるのね。


かなりの不安と自分の決意に押しつぶされそうなまま、あたし達は屋敷を後にした。


あたしが異世界に来て足を踏み入れた場所といえばフェアルシアさん達のお屋敷くらい。

あとは洞窟との往復だけ。

なのであたしにとってこれからの行動は全くの未知であり、新鮮なものでもある。



「わぁ~い、わぁ~いっ! みんなでお出かけなんて初めてっ。 いろんな人に会えるかなっ。 うう~っ、ワクワクするぅ~」


メルちゃんはとても嬉しそうで、あたし達の周りをぴょんぴょん飛び跳ねている。


「おいっ、メル。 はしゃぎすぎてまた魔物に襲われてもしらねーぞ。 ったく……頭の中が花畑だな。こいつは。 」


アトリーナは腕を組みながら不満そうにいった。


あたし達は草原を抜け、アトリーナさんが村人と遭遇した森に到着した。


「ここから先はとても危険な感じがします……。はぐれてしまわぬよう気をつけてください。」


フェアルシアさんはそう言って、いつになく真剣な表情をしている。


「あと皆さんに先程おまじないをかけておきましたので、ある程度の攻撃からは身を守れると思います。」


おまじない……なんか可愛いけど……何が変わったのかあたしには全然分からない。

きっと目には見えてないけど、バリアーみたいなものが張られているのね。


あたしはフェアルシアさんとメルちゃんの指導で、生まれて初めて魔法と言うものを体得した。

といってもテレポートだけなんだけどね。

ユニオン補給の為にも現世界に戻らないといけないので、優先的にこれを覚えることになった。


「あらっ、あれは何かしら……」


フェアルシアさんが不意に足を止めた。

そこには不自然な氷柱があり、よく見ると中には男の人が入っている。


「あややぁ、なにやら変ななおじさんが変なポーズしてる」


「メルちゃん、失礼なこと言ってはダメですよ。 この暑さですもの。この方はきっと涼んでいらっしゃるのでしょう」


「……ま、まぁそんなのほっといて先急ごうぜ」


今更ながらこの人達大丈夫なのだろうかとあたしは言葉を失った。

それから暫く森を歩き、ちらほらと建物が見えてきた。


「ああ、あれがハイドロックの言ってた村だな。魔物がいるっていう」


アトリーナは怯む様子は全く無く、刃物のようなオーラを立ち込めていた。

普段はとっつきにくいけど、こういう時に頼りになるギャップが女のあたしでもキュンとさせられる。


「結局ハイドロックさんはいませんでしたわね。 先にお戻りになられたのかしら。 ご無事だといいですけど」


フェアルシアさんの天然は馬鹿と紙一重というか……お馬鹿なのかもしれない。


村の様子は殺伐としていて、古びた民家はたくさんあるのに人の気配が全く感じられない。

ただ風の音だけが虚しく聞こえる廃墟の村そのものだった。

あたし達は状況を把握するため、近くの民家を訪ねてみることにした。


「すみませーん。どなたかいらっしゃいませんかー?」


あたしの声が建物の中に響き渡る。少し間が空き、奥の部屋から微かな声が聞こえフラフラとご老人が現れた。


「はて……、どちらさんかのう」


杖をついてもかなり不安定な様子で、いかにも長老といった雰囲気のおじいさんだった。

あたしは声を大きめにゆっくりと話しかける。


「こちらの村で魔物が出て困っていると伺いまして、私たちが少しでもお力になれればと思い尋ねてきました」


「……おおっ、そうじゃったか。 それはそれはありがたい。 ではそこのちっこい嬢ちゃん、こっちへ来てくれんかのう」


「ほえ? メルのこと?」


「うむ、うむ、かわええのう。 わしももう先は長くない。 じゃから冥土の土産に嬢ちゃんのパ……パ、パンツを」


あたしは反射的に老人の頭をひっぱたいてしまった。


「ひぃぃぃっ、なにをするんじゃぁ」


「何じゃないわよ! このロリコンすけべじじい!」


「一緒に遊んでくれるんだったらメルのパンツあげてもいいのにー」


「ぜぇぇぇぇぇぇったいダメッッ!!! こういう人にそんなこと言ったら変なことされるんだからダメよっ!」


「本人がそういってるんじゃからちょっとぐらい遊ばせてくれてもいいと思うがのう……」


「調子にのらないでよっ! てゆーか話が進まないじゃない! 魔物はいったい何処にいるのよ」


「はて……魔物なんてこの村にいたかのう……、むっ。 回覧板が届いておる。 

どれどれ、『ケルベロス出没中。注意してね』 なるほどなるほど。 物騒な世の中じゃ」


「随分と呑気な村なのね……。取り敢えず魔物が出る村はここで間違いないってことよね」


「こ、こりゃぁっ!! うちの物を勝手に漁るでない!」


「ゲームの世界では当然の行為なのにやはり現実じゃだめか」


あたし達がやり取りしている間に、どうやらアトリーナは机やタンスの中を物色していたらしい。


情報を得たあたしたちは追い出されるように老人の家を後にし、村を徘徊することにした。


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