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14 人助け

「このあたしがいる限り、屋敷には一歩も近づかせないよっ」


次から次へと湧いてくる狼のような魔物に、一切怯むこともなくアトリーナは攻め続けていた。


「あぁ~っ、もう……。 ちまちまと面倒くさいっ!! 一気に消え去っちゃいな! 」


そういってアトリーナの動きが止まった。


魔物はうめき声を上げながらジリジリとアトリーナに詰め寄る。


魔物の群れでアトリーナを取り巻くような円ができ、一匹がアトリーナに飛びかかろうとした瞬間……


アトリーナは両手を目一杯、力強く広げた。


「イグナイテッド」


その言葉を発した刹那、アトリーナを中心に業火の大爆発が起こった。


一瞬にして燃え散った周辺は白煙にまみれ、先程数十匹はいたであろう魔物は跡形もなく消え去っているようだった。


「オーッホッホッ! あたしにかかれば魔物なんて……」


『……ガサッ……』


白煙が邪魔ではっきりとは見えないが、遠く離れた茂みから物音がした。


「……!? 」


「えっ!? なにっ?? あたしの魔法を受けてまだ生きてる魔物がいるなんて……。

ふ、ふんっ。まぁいいわ。今のは広範囲型魔術ですもの。なら今度はさしで勝負してあげようじゃないの」


アトリーナは剣を居抜き、ズカズカと白煙の中を物音がした方へと歩いて行った。


視界がはっきりしない中、黒い影のようなものが動いた。


「見つけたわっ! 今度こそ覚悟しなさい! イグニ……」


アトリーナが魔法を唱えようとしたその時


「わわっ! ちょっ……ちょっと待ってくれっ!!  殺さないでくれ!! 」


「えっ!? あんたは何? 魔物じゃないの? 」


そこには大男という言葉が似合いそうな人物が立っていた。そして被っている帽子からは炎があがっている……。


「魔物なわけないだろう……俺の名前はハイドロック。れっきとした人間だ。 それよりつい先程この周辺でものすごい爆発があったけど、君は大丈夫だったかい? 」


「……ええっ。大丈夫。てゆーかあたしが……」


「そうか! 無事でなにより!俺は危うく巻き添えを食らっちゃうとこだったよ。でもまぁ持ち前の素早さで回避出来たけどな」


大男は満面の笑みで親指を立てている。


男はハッと気付いたようにあたしをジロジロと見はじめた。


何コイツ……。いくらあたしがナイスバディで綺麗だからって……早過ぎるでしょ。


「もしかして……君が……この森のどこかに住んでいる三姉妹の魔法使いなのかい!? 」


「聞き方がアバウトすぎてわかんないわよ。 確かにこの先の屋敷に住んでる三姉妹ではあるけどね」


「くっそーっ! なんて俺はラッキーなんだ! こんなに早くも魔術師様にお会い出来るなんて……」


「あらっ、魔術師様だなんてそんな……それより、さっきからあんたの頭上で燃えてるのは今流行りのものなの? 帽子どころか髪の毛もほとんど燃えちゃってるわよ」


「へっ!?頭?……うわっちちちちいぃぃぃぃーーーーーーーーーーーっ! なっ、なんなんだこれは!?いつの間にっ」


……恐竜並に反応遅すぎじゃない!?

身体が大きいから脳に痛覚が伝わるのに時間がかかるのかしら……

ってあたしの魔法のとばっちりみたいだし、助けてあげてもいいんだけど、面白そうだから……ちょっと遊んでみたくなっちゃう。


アトリーナは左手の碧く輝く指輪を擦り、ぼそっと呪文を唱えた。


「ハルシネイションクリーク……」


すると遠方から勢い良く流水が起こり、アトリーナとハイドロックの間に小川ができはじめた。


ハイドロックは頭を掻きながら走り回っている。


「わっちっちぃぃぃぃーーー、助けてくれぇぇーー!! っうおぉぉぉ!こんな所に川がっ……天の恵っ!! 」


ハイドロックは勢い良く頭から飛び込んだが、触れた瞬間に小川はなくなりゴスンっと鈍い音がした。


それを見てアトリーナはお腹を抱えながらケタケタと笑っている。


ピクピク痙攣をして頭から煙が上がっているハイドロックの姿が笑いのツボにはいってしまったようだ。


アトリーナは笑いで出た涙を拭いながら


「あはっ……ごめんなさいねっ、幻覚の小川だから触れると消えちゃうのよ~。ふふっ、ちょっとイタズラがすぎちゃったかしら。 でも楽しませてもらったわっ」


そういってアトリーナはハイドロックに向かってヘイルを唱えた。


ハイドロックを埋めるかのように、季節外れの霰が降り人型の山が出来上がった。





その後ハイドロックは起き上がり、助けてもらったアトリーナに深々と礼を言った。


「それで……あたし達を探していた目的はなんなの? 」


「あぁ……、そうだった。 実はあんた達に頼みがあるんだ! この森を抜けた先に俺たちの街がある。

そこにとうとうケルベロスが出てしまったんだ。 あの街にはとてもそいつと戦える兵力なんていない。

守られていたお陰で平和に暮らしていたからな。 だから力を貸して欲しいんだ! ケルベロス撃破の為に! 」


「守られていた? ケルベロス? なんだかよく分からないけど……何そのベタなシチュエーション。全然面白くないわ 」

 

「面白くないって……人命が懸かってるんだぞ! 面白いとかそんなんじゃないだろう」


「あたし的には戦いって聞いただけでウズウズしてすぐ参加したくなるけど……ここで頷いたらあたしの負けのような気がする……」


「一体何の勝ち負けなんだよっ! あーもうわかったよ。 もちろんタダでとは言わない。危険も伴うわけだからな。

もしケルベロスを本当に倒してくれたら惜しみなく一億ゴールドだそう。

もちろんそれは街の者から集めた義援金だが懸賞金としてその値がついている。 どうだ!もう迷うことはないだろう? 」


「何から何まで王道でベタすぎるわね……。 そもそもあたし達にお金なんて必要ないの。これ以上話しても時間の無駄だわ。それじゃあねっ」


「わわっ! 待ってくれよ!! あっ……わかったぞ。 得体のしれない魔物で怖気づいたんだな? 勝ち目のない戦はしない……」


「イラッ……、フリーズグレイブッ!!」


ボンッと小爆発が起き、ハイドロックは氷の墓石に閉じ込められてしまった。

 

「死にはしないから安心しなさい。 氷が溶けるまで頭を冷やすことね」


微動だにしないハイドロックにアトリーナはウインクをしてその場を後にした。





その後、屋敷に戻ったアトリーナはフェアルシアから現状を聞き、両親を探すためやむなく屋敷から離れる案に賛同した。


「両親を探すって言っても、あてもないわけだし。ちょっと寄り道したいとこがあるんだけど付き合ってくれない?」


そう言ってアトリーナは森であった出来事をみんなに説明しケルベロス撃破の意を表した。










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