10 救出成功!?
『まさかとは思ったが俺以外に異世界へ行ける奴がいるとはな……それにあの召喚獣……。
興味深い。だが俺の邪魔をするようなら……即刻始末してやるよ……』
「んっ……すーちゃん……大丈夫? 一緒に来れた? 」
「おうっ! 一緒におるでー。てかさっきまで後ろからついてきよったのはありさ殿の仲間なん? 」
「えっ!? なにそれっ? 怖いこといわないでよー! あたしがこんな事してるなんて誰にもいってないよ。もしかして近所の人に見られたのかな……」
「ふーん……ならええんやけど。てかありさ殿、こっちに来るとちっさくなるんやなぁ……。その子供サイズのほうが似合っとるでー。乗せる方としても楽やし」
「あたしだって好きでなってるわけじゃないわよっ! いろいろと大変なんだから。それにちょっと着替えるからあっちにいって」
すーちゃんは頭をゴリゴリかきながら「ほな外で毛並み整えて準備しとくから、はよ来てやー」といいながら出口に向かっていった。
あたしの身体は昨日と同じようなサイズになっていてユニオンの数も10個に増えていた。
アパートから持ってきた一番小さめの服に着替え、身体の感覚を少しずつ慣らしていく。
もしこのままずっと異世界にいたらあたしはずっと若いままなのかな……。
いやいやいやいや、若いっていっても小学生並みじゃヤダなぁ~。
一番綺麗な年頃でずーっといれるんだったら異世界にいるのも悪くないかも……って変な魔物とか出るしやっぱりヤダ。
さーて、じゃあ今回こそフェアルシアさん達の救出に向けてがんばろーっと。
「すーちゃんおまたせー! どぉこの格好? かわいいっ? 変じゃないかな?? 」
「……何でもええんちゃう。デートに行くわけやないんやから……」
「なっ、なによそれっ!!あたしだって動物とデートする気なんてさらさらありませんよーだっ! 」
「動物ちゃうわっ!! わいはこう見えても……デュフッ」
あたしは勢い良くすーちゃんの背中に飛び乗り
「はいはい、ではお屋敷に向かってくださいませー」
「なんちゅうお方や……エライ人に召喚されてもーた……」
あたしとすーちゃんは再びお屋敷の方へと向かった。
魔物に警戒しつつお屋敷に向かったが不気味なほど静まりかえっていた。
昨日の騒ぎが嘘みたいに思える……。
しかしどこに潜んでいるのかも分からない状況なので遥か上空からお屋敷に向かい、中庭へと降りていった。
中庭からお屋敷の中に入り、もう一度地下室に向かった。
静かすぎる地下室に鳥肌がたち気分も少し臆病になる。
「ささっと用事を済ませちゃお……」
あたしは急ぎ足で地下通路を進み、魔法書の置いてあった部屋のドアを開けた。
中の状況は変わりなく、机の上に本が積まれている。
「すーちゃん! ちょっとこの本を見てほしいんだけど……」
あたしは本を手に取り、パラパラとめくってあげた。
「ふむ~、これはっ! ……魔法書やな」とすーちゃんが低い声で囁く。
「やっぱりぃー!? やったぁぁ!! これで魔法の使い方が解ればみんなを助ける事が出来るよねっ」
「せやなっ!! 」
嬉しいっ!これで少し希望が見えてきたっ!
「よぉ~し! じゃあここに書いてある文字読んでみて!あたしじゃわからないの」
「………………」
「すーちゃん……もしかして読めないの? 」
「……せ、せやな。 」
「だってさっきすーちゃん魔法書ってわかったじゃない!! 」
「チラッと魔法つこてる絵が見えたからそうなんかなーって」
「そんなのあたしと一緒じゃない! こっちに住んでたくせに文字も読めないのっ?? 」
「知らんがなっ! どこの世界に読み書き出来る鳥さんがおんねん! 」
「……そ、そんな……」
あたしはまた振り出しに戻った気がして愕然とした。とその時、部屋のドアがガチャリと音を立て少しずつ開き始めた。
「グフッ!! 」
あたしは恐怖のあまりすーちゃんに強くしがみついてしまった。
ドアが開き、そこに現れたのは……メルティークだった。
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!! 」」
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーー!!!!! 」」
あたしの甲高い叫び声とすーちゃんのドスの効いた声が地下中に響きわたった。
***
「いやぁ、あの蜘蛛ヤローの威力があんなに強いとはおもわなかったぜー」
アトリーナは笑いながら言った。
「無茶はいけないっていつもいっているでしょう。どんな攻撃をしてくるか分からないんですから細心の注意を払わないと」
フェアルシアさんが紅茶を淹れながら心配そうに返す。
「メルが倒れてるのみたらついカッっとなっちゃってさー。 そもそもメルがトロイから駄目なんだよ」
「ぶーっ。 またそーやっていぢめるぅ。 お庭にテレポートしたら目の前にいたんだもん……」
フェアルシアさんは二人をなだめながら
「これからお互い気をつけてくださいね。 それにありささん。 今回は本当にすいませんでした。何もお守りする事ができず危険な事に巻き込んでしまって……」
「い、いえっ。 あたしは大丈夫です。 でもフェアルシアさん達はどうして……」
「私が気がついた時にはお屋敷の中でした。そこにアトリーナやメルもいて。多分、こんなことが出来るのは……」
「……あたしと同じ世界から来ている人。ゆうやさん……でしたっけ? 」
フェアルシアさんは少し俯向きながら
「……そうだと思います」
「そうなんですかぁ。 すごいですねぇ。ゆうやさんて」
あたしはそう答えつつもフェアルシアさんの複雑な表情に疑問が残った。あたしは思い切って
「あの……フェアルシアさんはゆうやさんの事を話す時、いつも浮かない表情をしている気がするんですけど……」
「……………………」
後ろでメルちゃんとアトリーナさんが騒ぎ合ってる中、あたし達二人に長い沈黙が続いた。
あたしは耐え切れず
「あの、余計なこと言ってすみません! 大したことではないので忘れちゃってください!えへへっ」
フェアルシアさんは申し訳なさそうに俯いていた。
「ありささん……何もお答えすることが出来ず申し訳ありません。でもいずれありささんもお会いするでしょう。その時には…… 」
あたしはコクンと頷いた。けどあたしの中では疑問が募るばかりだった。




