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負の魔法使い  作者: 山吹十波
Chapter 01:reuNion
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01-15 氷の真実

トウキ・ノースウィンドが目を醒ましたのは自分の部屋のベッドの上だった。

起き上がろうと力を込めると激痛が体中を走る。

見ると全身が包帯で覆われていた。父が治癒術師を呼んだのかほとんど塞がっていたが、逆に言えば治癒術師を呼んでもこの程度までしか回復させられないほどの大けがを負わされていたということだ。


あの時、レイトは微塵も本気でなかった。

それだけはわかる。

自分程度の人間には本気を出すまでもない、と言っているようだった。


痛む体を無理やり跳ね上げ、侍従の誰かが用意してくれたであろうシャツを羽織る。

うすうす感づいていたことであるが、人の身では精霊には勝てない。

連携が下手な術者ならば簡単に倒すことができる。しかし、彼の連携は完璧で、同時に4体もの精霊を操る能力を持っている。

もはや、国程度なら一人で壊せるほどの力だ。


そして問題はあの氷の精霊。

これではこちらの魔法は一切通じない。

そして、こちらには他の属性を得るための手段――精霊と契約する術がない。


「あの時、俺が父上に縋ってでも止めたらこんなことにはなっていなかったのかもしれない」


過ぎたことは仕方ないと、ため息を1つつき、ドアを開こうとした瞬間。

窓に何かが当たる音がした。


「なんだ?鳥か?」


外は暗闇。自分は随分寝ていたようだ。

窓の外、夜の闇の手前に白い封筒が浮かんでいるのが見えた。

窓を開け、それを手に取る。


「月と羽の印章……差出人は、シンシア・ルナフォード。父宛か……?いや、」


自分の名前が書いてある。内容は、


「王宮へ顔を出せ、と……?」


父母や妹たちには告げるなとも書いてある。


「いったいどういう事だ……?」


ノックの音が響く。


「!?」


思わず手に持っていた封筒を握りつぶした。


「お兄様?お目覚めになりましたか?」


「ああ、だがあまり本調子でないし、このまま寝る」


「わかりました。お父様には伝えておきます」


扉の向こうのトウカの気配が離れていくのを確認すると息を吐き出した。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-


翌日は休校日で、学園に用はない。

朝起きたトウキは身支度をし、すぐに家を出た。

妹たちは自主訓練、父は下級貴族たちとなにやら企んでいるようで昨日から帰ってきていないらしい。

好都合。誰にも見られることなく家を出れた。

そして、まっすぐ王宮へと向かう。


招待状を見せると会議室に通された。

八聖が招集される会議室。


上座に堂々と座るのはこの国の王 レオボルト・グロリアス。その隣には宰相 グリム・ルナフォードと王太子 ヴィラド・グロリアスが座る。また、ヴィラドの後ろには宰相補佐 イサク・ルナフォードが控え、その他には師団長 ソア・クラモール、騎士団長 フェリクス・アドルート、外務大臣のジラード・ヴェルド。水聖マナテム家の当主、地聖フィルム家の当主も席に着き、この国の大物たちが一堂に会していた。


「少し待ってくれ」


「は、はい」


さすがに緊張もする。

この空間で王に待てと言われてから15分程度、ただし体感では3時間ほどたったように感じた頃、背後の扉が開き3人、王女 シャロン・グロリアスと学園長 シンシア・ルナフォード、そして、レイト・ルナフォードが入室する。


「揃ったな。いろいろと話があるが、まずはノースウィンドについてだ」


いきなりの指摘。だが、何故父ではなく自分が呼ばれたのか。


「この先の面倒事をなくすために、今この時より、トウキ・ノースウィンドを当主に据える。これは王命である」


「な、なぜですか!?当主ならば自分よりもレイトの、弟の方が!」


「それはできない」


レイトが答える。


「レイト・ルナフォードはルナフォード家次期当主として、現当主であるシンシア・ルナフォードによって指名されている。また、当主の擁する権限のうち学園の理事については妹のディアナに移譲することになっている。父の職である宰相は幸いにも僕が適正と認められているのでヴィラド王太子が即位すると同時に、僕が宰相位に就く。そういうわけで僕たち兄弟は仲良く分権しました、っていう話だけど、文句あるかな?」


一歩前に出たイサクが堂々と告げる。


「しかし、それではルナフォードの血は……」


「別にレイトの子供が認められなくても僕かディアナの子供が相応しいと判れば、優秀な僕の弟はそっちを指名するだろうし、まあ、最終手段としてディアナと結婚させるというのもありなんだけど……姫様が許してくれなくてね」


「ルナフォードは元々はグロリアス王家の分家です。つまり、王家の血が入っていればいいのでしょう?」


レイトの隣に座る姫がそう宣言する。


「それに闇魔法への適性は否が応でも出るでしょうし」


「そういうわけだ」


「それでなぜ自分がここに呼ばれたのかわかりませんが」


「簡潔に言おう。君の父、ナダレは明日までに副師団長の職を解かれ、ノースウィンドの持つ辺境の地で幽閉生活に入る。もちろん、君の母も一緒だ」


「何故ですか!?」


「罪状は汚職と横領だな。レイトの件でノースウィンドを探ったら出て来る出て来る……。彼の罪状については全部まとめてあるから後で見るといい。本当なら家を取り潰すところだが……八聖の家を取り潰すのはしたくない。そういう事だ」


「……わかりました」


「勿論、家としてもそれなりの罰を受けてもらう。ノースウィンドは第4位から第7位へ……マナテム家は8位へ」


「な、なぜ、うちまで!?」


「全部わかっていると言っているだろう。マナテムは幽閉まではせんが今の当主には下りてもらう。次期当主として分家のボード家を指名する」


ディランの家にも迷惑をかけたか……。


「……こんなものか?」


王が隣の宰相を見て言う。


「そうですね、今日の所はこれで」


「それでは、私は公務に戻ろう」


王が立ちあがり、宰相も後に続く。

他の面々も立ち上がり部屋を出ようとする。

しかし、不審な動きをする男が一人。


マナテム家当主っ!


王をかばうためにトウキは身体を動かした。

しかし、その行為は不要だったと知る。


彼の後ろに現れた光の精霊が、魔力の縄で当主を縛り上げ、床に転がした。


「イサクが言ってた通りになったな」


「ええ、あらかじめ煽っておきましたから。まあ、これであなたは罪人として牢屋行きですけどね」


ヴィラド王子が指示すると兵士たちがマナテム家当主を連れて行った。


「お疲れ、セイラ」


「あら、これぐらいどうという事はないわ」


そうか、と自分の精霊をほめる王子の姿。

一方、さっきまで隣にいた宰相補佐はいつの間にかレイトの所へ移動していた。


「この後食事にでも行かないか?」


「ええ、よろこんで。でも、ディアナも誘わないと後で拗ねられますよ」


「ああ、そうだったね。じゃあ、いつもの店を予約してあるから、ディアナと先に行っておいておくれ」


「兄さんは?」


「ちょっと話があってね」


イサクの優しげな瞳が一変し、鋭い目がこちらを見た。


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