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負の魔法使い  作者: 山吹十波
Chapter 01:reuNion
19/28

01-14 零の決意

測定の翌日。

一限が終わり次の授業の準備を始めていたところだった。

教室に1人の男子学生が訪ねてきた。


「はぁ?個人戦の申し込み?」


レイトへの申し込みを届けに来たノースウィンドの使者に噛みつくデューク。


「オレより弱い癖しやがって、オレが勝てたことがないレイトに試合申込みとか正気か?」


ディランを挑発するデューク。ディランも食いつこうとするがその前にデュークの手が出た。


「オレじゃなくトウキだ!というかオレがいつお前に負けっ!?」


一瞬雷を纏った拳がまっすぐディランの顎に刺さる。

空中で二回転したディランは廊下の窓を突き破り校舎の外へとおとされる。


「今」


「うわぁ、デューク汚い」


「お前のためにやったのに!?」


「ここ二階だよ?死んだらどうするの?」


「死なないだろ、たぶん」


ディランの落した手紙を拾うレイト。


「それ、姉貴に言って抗議してもらうか?」


「日時は今日の昼休み、か」


「おい、レイト?」


「いいよ。そろそろ隠すのもめんどくさくなったし」


「もうバラしちまうのか!?………あああ、とりあえず姉貴に報告しないと!」


メモに文字を書き殴ったデュークは例のクリップをつけて空に投じる。


「ディアナ」


レイトが呼び掛けると、ディアナが当たり前の用に顔を出す。


「はい、兄様」


「ゲストに母さんを呼ぼうか」


「そうですね」


そしてレイトは虚空に話しかける。


「ごめん、ルナ。まだルナが出るほどの事じゃないから」


『わかったわ。まだおとなしくしといてあげる』


そして、何事もなかったかのように席に座る。

廊下ではデュークが窓を割ったことに対して怒られているが気にしない。

後ろに座るレイカからの視線も気づかないふりをして教科書をめくった。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-


「それじゃあ、審判は私が」


ライナが向かい合うレイトとトウキの間にため息をつきながら立つ。


「こうなることはわかってたけど、速すぎないかしら」


「こういうめんどくさいことは早く片付けるに限りますよ」


「レイトがそういうなら」


観客は超満員で、特に魔術派の連中がトウキへの歓声をうるさいぐらいに送っている。


「手加減はしない。死ぬなよ」


「そちらこそ。第9位の実力見せてもらいますね」


レイトが笑顔で挑発し、トウキが舌打ちをする。


「それでは……はじめ!」


ライナの声に周囲の声が消え、緊張感のある空気に包まれる。


「行くぞ!」


先に動いたのはトウキ。

無詠唱による上位詠唱で生み出された氷の礫がレイトを襲う。

しかし、レイトの表情は一切変わらず、


「フレア」


「うん、任せて」


フレアの生み出した熱の壁によって礫はレイトに到達することはできず蒸発する。


「ブリザード!」


「あっはっは、その程度?」


トウキが生み出す氷の風はフレアが指を鳴らすだけで払われる。

それでも負けじと、魔法を撃ち続けるトウキ。

それを笑いながら消し去るフレア。

そして、特に動くこともなくその様子をただ眺めているレイト。


「そろそろ攻撃しましょうか。フレア、ノア、ボルト好きにやっていいよ」


さらに精霊を追加する。

人間では不可能な速度で上位の魔法を次々と打ち出し、レイトの周囲以外がどんどん荒れていく。

フレアの生み出す炎が地を焼き。

ボルトの生み出す雷が地を割り。

ノアの魔法が地を砕いていく。

一見、適当に仕掛けているようにも見えるが、その魔法は着実にトウキの足場をなくしていく。

観客達は命の危機を感じたようで最初よりもさがった位置へ移動している。


「その程度ですか?」


いつの間にか移動していたレイトが背後からトウキを引き倒し、体勢を崩す。

膝をつく、トウキのかたに手ををくレイト。


「アイス、クロウ」


しかし、精霊の介入のない位置まで近づいたレイトの行動を勝機と見たトウキは氷の爪でレイトを狙う。


「レイトっ!」


焦ったフレアが致死級の火球をトウキに放つ。


「っ!?」


躱すことはできないと察したトウキも焦る。


「フレア、ボルト、ノア。遊ぶのはやめるよ」


そうレイトが呟くと同時にレイトの瞳の色がアイスブルーへと変化する。

それと同時にフレアの放った火球はレイトから放たれた冷気によって消滅する。


「あー……怒ってるかな?」


「レイトは無事だろう。我々が後で説教を受けるかもしれんが」


頬をかきながら苦笑いするフレアとため息をつくボルト。


「怒られるの、嫌」


ボルトのコートの裾を握るノア。

そして、レイトを中心として氷の花が咲く。

野次馬達がざわめき出す。


「あーあ、やっちまった」


デュークが頭を抱える中、立ち上がったトウキが再びレイトを狙う。

しっかりと腹に食い込んだはずの氷の爪はレイトの身体に触れると同時に砕ける。

レイトは力の抜けたその腕を掴んで引き寄せ、容赦なく腹に一撃を入れる。


「……ぉふ!?」


「レイト、レイト。もしかしなくても来る?」


「うん」


観客たちは空間が凍るという事象を初めて目撃する。

先ほど授業の開始を表す鐘が鳴ったが、教師たちでさえその光景を見つめたまま固まっている。


「降参するか、死ぬか、ですよ」


凍てついた空間が割れる。

中から現れるのは水色のかかった銀の髪とサファイアブルーの瞳を持つ美女。


「まったく、この程度の男さっさと片付けなさい」


その精霊はフレアたちを睨みつける。


「えっと……片付けちゃだめだと思うんだけど……」


緊張する2人を置いてフレアが代表して返答する。


「この調子だとノースウィンドはダメですね。まったく……」


そしてレイトに後ろから抱き着く。


「あなたを主に選んで正解でした」


レイトの肩が急激に凍りだす。


「グレイシア?凍死しそうなんだけど……少し出力弱めて?」


「ああ、申し訳ありません」


「さて、判ったと思うけどあなたの攻撃は僕には一切通りません。どうしますか?」


「魔法がダメなら、剣だ!」


腰に差していたナイフを抜く。

腹を抱えてうずくまっていた状態から、体を跳ね上げ、レイトへと腕をのばす。

レイトの顔を狙ったそれは躱されるが、レイトの顔に薄く赤い筋を作る。


「危ないな……」

「死になさい」


苦笑いで頬を抑えるレイトだったが、後ろの精霊はお怒りのようで、猛烈な吹雪によってトウキは地面に叩きつけられる。

直後、冷気が集結し空中に5本の氷の杭を生み出す。

右肩、腹、左腿に氷の杭を打ち込まれ、心臓に向かっての杭を打とうとしたときにレイトが止めた。


「やり過ぎだよ……」


「そうですか?私的にはもう二三本いっておいてもよいように思えますが」


「この人をこれ以上傷つける意味はないよ。彼には(・・)特に用は無いんだから」


笑顔で物騒なことをいうレイト。観客たちには聞こえていないようだが、足元で磔にされているトウキには聞こえている。


「そうですか、その時はあのお方も加わるのでしょう?」


「まあね。まあこの後の対応にもよると思うけど、母さんが許さないっていうなら僕はやるよ」


「あら、こわい」


そう言いながらクスクスと笑うグレイシア。

観客たちの中からは何人かがトウキの元に駆けて来ている。


「お兄様!」


トウカがトウキに駆け寄る。

氷の杭は抜けず、砕けず、溶ける様子もない。

杭自体は細く、傷口も凍っていて出血はたいしたことはないが、このままではまずい。


「セツカ!この氷なんとできる!?」


『無理』


トウカの精霊はその一言だけを答え、出てこようとすらしない。


「これが今代のノースウィンド……先代あたりから無能になってきていたけど、ここまで酷いありさまとは」


「これでもノースウィンドは強い家系だよ?」


「そうなのですか?それでは人類の質が下がったのでしょうか」


「その辺はあんまり変わってないような気がするけど」


「しかし、昔に比べて上位のものと契約できる術者が減りましたし、そこの才能0男のように我々との適応能力がまったく感じられないというのも珍しいです」


「まあまあ、今日はこの辺にしておこう。で、どうしますか?杭」


レイトがトウキにしがみついて必死に何とかしようとしているトウカに話しかける。

そして、レイトの顔を見上げたトウカの顔が固まる。


「あなたは……!?」


「ああ、自己紹介がまだでしたね」


レイトが目を閉じる。

その瞳からは色が消え失せる。


「レイト・ルナフォードといいます。ああ、6歳まではレイト・ノースウィンドと名乗っていましたが、6歳の誕生日にただのレイトになって、その後すぐにルナフォード家に拾ってもらいました」


「やっぱり……っ」


「別にあなたたちの事は怨んでいませんが、元両親については別です。少し、お話があると言いますか……」


そういうとグレイシアに合図をする。


「近いうちに、また」


トウキの身体を貫いていた杭が砕け、血が溢れだす。

同時に傷口が凍てつき、止血される


「おそらく死なないでしょう。ノースウィンドの血筋ならば凍傷も起こらないでしょうし」


そういうとグレイシアの姿は空に溶けて行った。


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