01-12 鉄の姫君
あまり乗り気ではないディアナの号令によって試合が始まる。
有名人2人の試合と聞いて他の同級生たちがあ集まってきている。
「行くぞ、アイン!」
『はい!ビアンカ様!』
アインが手を振るとレイトに向かって数十本ものアースランスがレイトに走る。
しかし、通常の土塊や岩石で構成されるはずのアースランスではなく、完全な金属で構成されている。
「フレア、僕の事は気にしなくていいから。ビアンカさんの方を気を付けてみてて」
『りょーかい!』
「《闇よりも深き者、我が手に刃をなせ》―カオスブレイド」
ディアナが良く使うシャドウブレイドよりも威力が高い完全上位の魔法。
光を飲み込む“黒”が刃の形となりレイトの両手に現れる。
「さすが兄様です」
とディアナはレイトを絶賛する。
「あれ食らったら真剣に死ねるんだよなぁ……」
とデュークは思いだしてげんなりする。
「あらら、レイトったらずいぶん上手く普通の魔法にカモフラージュしてるわね」
「!?……お母様!?どうしてここに!?」
突然隣に現れた母の姿に驚くディアナ。
母親の存在に気づいてるのか否か、レイトは戦闘を続けていく。
アインの手によって次々と生み出される鋼の槍をなぎ倒しながら、最短距離でまっすぐ、ビアンカの元へと走る。
「かかった!アイン!」
『はい!―《大地に芽生えし命よ、彼者を拘束せよ》―アースバインド』
『術式解除』
「は?」『へ?』
アインの魔法によってレイトの脚に絡みつこうとしていた蔦は光となり消える。
あっという間に距離がつまり、レイトが牽制に火球をいくつか放つ。
しかし、アインの構築した土壁によって阻まれてしまう。
『どうだ!僕の壁は堅いだろう!』
アインの言葉を無視するレイトとフレア。
「フレア、二重詠唱」
『了解!久しぶりだね!』
2人が同時に唱え始める。
「『《消えることなき業火よ、我が敵にその力を示せ》―ナパームフレア!」』
壁は形も残らずに崩壊し、さらに周囲を強力な炎が焼き尽くす。
鋼の槍の残骸ですらもはや原形をとどめていない。
空気は熱く焼かれ、呼吸するのも困難な程である。
「ごほっ……ごほっ……まずいな、これは」
「降参しますか?」
「……まさか、アイン!」
『《Heilig Kreuz auf den Boden gezeichnet, das Urteil zu meinen Feinden》―グランド・クロス!』
アインの詠唱の直後、レイトの直下の地面が十字に砕けた。
地形が変形するほどの大規模魔法だが、レイトは焦る様子もなく。
「フレア、いったん交代」
『はい。じゃあノア、よろしくね』
フレアが炎と共に消えると同時に地割れが消え失せる。
さらにレイトの瞳はエメラルド色へと変化している。
「!?……また!?」
『何が!?』
レイトの隣に金の髪とエメラルドの瞳を持つ小柄な少女が立つ。
『グランド・クロス、解除しました』
「お疲れ、ノア」
レイトが今、ノアと呼んだ精霊の頭を撫でる。
ノアは上機嫌に目を細めている。
「ち、地の上位精霊!?」
『……そうですが?』
「は、初めて見た!ルナフォード君、崇めて良いかな!?」
「えっと……怖がってるのでやめてあげてください。それと……」
というと、固まっているアインの所まで歩き、額を指ではじく。
「これで、僕の勝ちでいいですか?」
「え!?……ああ、そういえば勝負をしていたのだったな……」
その光景を見ていたデュークたちがこちらに向かってくる。
「カオスブレイドとか使うなよ、うっかり姫様殺してしまったら面倒だろう」
「そんなヘマはしないし、物騒なこと言わないでね?……ノア?」
レイトが振り返り、背中に張り付いて顔を出そうとしないノアをうかがう。
『ぅ…………レイトぉ』
「ああ、ビアンカさん。あまり見つめないで上げて、人見知りなんだ」
「それよりもレイト、あの炎だけど……」
燃え盛るグラウンドをさしてシンシアが言う。
「ああ、それでは……」
レイトが集中をはじめる。
瞳の色がアイスブルーに変わり、グラウンドを冷気が駆け抜ける。
「さすが」
「おおおおおお!今度は地の上位精霊ですか!さすがはレイト君です!」
「うおわぁ!ローレンス!どこから現れやがった!」
『レイト……私戻るね』
「うん、ごめんねノア」
ノアが消え、レイトの瞳がアメジストへと戻る。
「ところでローレンス・スフィア君。授業はどうしたのかしら?」
「はっ!?理事長!?どうしてここに!?」
「そうねぇ、あなたと同じ理由かしら」
「そうですか、レイト君は素晴らしいですね!」
「そうね。いいから授業に戻りなさい」
ローレンスはシンシアに引きずられ退場していく。
「そろそろ授業終わりだし、教室戻ろうか」
「そうだな」
レイトとデュークも校舎へと歩いていく。




