01-09 新たな共犯者
「紹介するわ。ヴェルド家長女で生徒会書記のジルよ」
「は?」
「ふぇ?」
ライナに連れてこられたクラモールの屋敷にいた少女を唐突に紹介された。
お互い驚いている。
「えええ、えっとダイヤの10のジル・ヴェルドです……?」
「えっと、レイト・ルナフォードです」
「妹のディアナです」
「ローズ・アドルートです……失礼ですが、ヴェルド“先輩”であってますか?」
ローズは自分の胸ぐらいの高さに視線を持つ少女を見る。
「は、はい。3年生です。飛び級とかじゃないですよ?あと、ジルで構いません」
「それで、なんで唐突にジル先輩を……?」
「お父上がヴェルド家も巻き込むんだと。まあヴェルドなら大丈夫だ」
そういうと、デュークはどこからか持ち出した飲み物をあおる。
「え、えっと、確かにここには父様と来ましたが……何の話でしょう?」
「すぐわかりますよ、先輩……ほら」
ソアとジラード・ヴェルドの姿があった。
「君がレイト君だね?」
ジラードがレイトの元に歩み寄る。
「はい、そうです」
「なるほど……本当に彼が作ったのかね?さっきのような高度な装置を」
「ええ。魔力こそ一般とは違いますが、本当に優秀な魔導師ですよ彼は」
「そうか……ジル、ちょっとこっちへ」
負の魔力の測定装置をジルに持たせる。
「500か……中位精霊は難しいな」
「それでも位階IIの精霊をつければ、魔力は上がりますよ?」
「なるほど……理解はした。それで、いつ発表されるのです?」
「明日です」
「明日ですか!?」
父親たちがまた政治の話に戻ってしまったので、レイトたちは気にせずには話を始める。
「ジル先輩は先代のジャックらしいけど、戦うのが苦手でオレに譲ってくれたらしい」
「そうなんですか」
「私よりデューク君の方が強いですし……」
「レイトとデュークは明日から上級生に睨まれまくると思うから気を付けてね?まあ、デュークは自業自得だけど」
魔術派を蹴散らした直後、デュークは単騎で騎士派を壊滅させたらしい。
「はぁ……荒んだ学校ですね」
「まあ、困ったらいつでも私の所に来るといいよ。というか、困ってなくても来てね?」
「……ええ、考えておきます」
「そういえばレイト。そろそろトレーニングの時間だろ?庭使っていいぞ。というかオレにもそろそろ新技教えろ」
「仕方ないなぁ。負の魔力はコントロールできるようになったの?」
「実戦レベルには達してないけど、なんとかな」
そう言った途端ライナから電撃を浴びせられる。
しかし、デュークがダメージを負った様子はない。
「おい!急に攻撃してくるなよ!」
「防げてるじゃない。あなたもちゃんと進歩するのね」
「絶対いつか見返してやるからな!」
そういうとデュークは先に部屋を出る。
「私も見学してもいいですか?」
「それでは私も」
「うん、構わないよ」
ディアナとローズを連れ庭へ出る。
デュークは既に集中し、体の周りに負の魔力を巡回させている。
「ルナ」
『少しは私にも戦闘をさせてほしいところだけど?』
「ルナが動くほどの相手ではないですよ」
『ノースウインドと接敵した時はすぐ呼びなさい。滅ぼしてあげるから』
「一応、覚えておきます。それで……」
レイトがかなり強そうな精霊と話している。それはもう珍しいことでもないのだが……。
「ディアナ……あれは……」
「闇の聖霊ルナ様です。兄様がルナフォードにいる理由は主にあの方が認めたからなんです」
「聖霊って、伝説上のものじゃなかったんですね……」
ローズが唖然として眺めている。
レイトとデュークは集中して何かをやっているようだが、何をやっているのかはわからない。
「えっと、お二人は何を?」
「負の魔力を巡回させて操れるようにしてるとか。私はあまり得意ではないのですけど……」
「そうなんですか?」
「大きな正の魔力を動かすことになれていると負の魔力は扱いにくいそうです」
「なるほど……私も上手くはできないかもしれないですね、それは」
「ただ、少しでも扱えるようになれば、魔法によるダメージをかなり軽減できます。やってみますか?」
「では、お願いします」
そういうと、ローズと共にディアナもレイトの横に並ぶ。
『ディアナは大量の負の魔力があるわけでもないから一点に集中させるように集めてみたほうがいいかな』
「わかりました」
『ローズ、あなたもね』
「は、はい」
1時間後、様子見に訪れたライナは全員がただ集中して魔力を操っているという異様な光景を目にすることになる。




