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節点

作者: 豆苗4
掲載日:2026/11/03


 他者と金は等価な概念である。他者との歪な関係性は言わずもがなであるし、金との緊張状態も今に始まったことではない。


 それら、彼ら、そのどちらで表しても構わないが、ともかく金はバランスが悪い。片手を失いふらつくやじろべえのように。常に緊張関係になくてはならない。堕落した諫言など全く意味を為さないのだ。それらは他者への振る舞いを要請する。それはまさしく他者だった。だからこそ、それに表立って向き合うことを避け、そして呑み込んだ。


 それは見ている。じっと。何を見てるのか。振る舞いをだ。観察している。他者に対する様々な行為が品格を表すように、金に対する姿勢が、資本を、そして奈落を呼ぶ。人が破滅する時、金はおおよそ関与していない。自らの欲望に取り込まれるだけだ。金はその様をすぐそばで眺めている。そう、じっと眺めている。じっと。


 金は我々に使役されるものではないのだろう。そして我々を使役するものでもない。格の優劣をいちいち意識しなくてはならないのは、ひとえにそれが等価な存在ではないからだ。不断の努力こそが、関係を辛うじて維持できる。背中は見せてもいいが、隙を見せてはならない。隙を見せたら易々と呑み込まれてしまうだろう。己の際限のない欲望に。


 金を崇拝しろと言っているわけでもないし、金を擬人化して他者と同じように扱えと言っているわけでもない。敬意…いや、敬意とは少し違う何か。鬼神敬して之を遠ざく、このニュアンスに近いもの。金とは手段であり、目的であるが、それと同時に現実である。何の? 干渉のための接点。緩衝のための結点。鑑賞のための節点。観照のための焦点。


 もちろん、絶え間のない緊張感は身体に毒である。直接害することはない。直接は。知覚に蓋をしながら、水面下に張り巡らされた罠を引かなければいいだけだ。ただそれだけ。そこまで難しいことではないのかもしれない。


 毒は身体を蝕む。ただし自分の引いた引き金のせいで。だからこそ、呼び水とならんことを。金は金を呼び、他者は……? 


 触手、幾つにも枝分かれした触手。それは「媒介」なんていうお利口じみた、教科書じみた概念ではなく……存在のかけらそのもの。遠い遠い星々のかけらそのものだった。他者が我々に夢を見せるように、金も我々に夢を見せる。媒介という形式を通じて。がんじがらめにこんがらがった触手同士を解いて見せ、そして夢を解体する。ちっとも焦点の合わない眼差しは相も変わらずそのままだし、それはそれ。これはこれなのだ。


 金がそのような仕方でもって現出してくるのは何も宇宙人の仕業なぞではなく、夢のかけらであるからだ。それは、あちらこちらに散らばっているイマージュ。金は色を持たない媒介ではなく……いや、媒介であるからして、その夢の輪郭を模るのだ。断続的な眠りと覚醒を繰り返し、離散し、集合しを反復しながら。有史以来、我々はおぼつかない顔をしながら、焦点の合わない目で、同じ夢を見ている。それはずっとずっと前から。そう、同じ夢を!


 結局のところ、緊張関係なんて戯言は虚仮脅しで、そんな代物など存在しない、と言うこともできよう。その通り。金がこっちを見ている、他者とそっくりな眼差しで、何ていう妄言は、濁った湖の底で錆びついたガラクタと等価な代物だろう。暗い海の底。水面を煌びやかに跳ね回る月明かりに照らされた雫。柱の影にひっそりともたれかかったままの五月人形。ゆっくりと霧散する仏像。うつ伏せのまま笑うティディベア。季節外れの蝉の声。


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