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上京男がGW前にみた夢

作者: ほー
掲載日:2026/04/29

「おまたせ、いこか」

街並みが見下ろせる開けた階段の踊り場で見つけた兄に向って、そう伝える。

兄は何も言わずに駅のホームに向かう為、近くのエレベータに歩みを進める。

階下に降りていくと、テナントが左右を埋め尽くし、途切れない人混みをかけ分けることになった。

平日水曜日のGW前にも関らず、駅複合ショッピング施設は大混雑だ。

私は大きなリュックに抱え、兄よりも少し低い視線で見慣れないテナントの間を進んでいく。


ホームについた私達は15分間隔で到着する古い電車に乗る。

乗車後に兄は急ぎ足で立っている人の間を通り抜けボックス席に座り、

ちらちら私を見る。

私は兄の横ににやけながら座ると、少し笑いながら兄は言った。

「座りにきおったわ、大人二人やときついやろ」

私は兄に軽く冗談を言いながら発射をまつ。

周りの景色を見ることもせず、黙って発車をまっていた。


私たちを乗せた電車は、ゴトゴトと私を運ぶ。

私は通路側のため、兄を躱すように車窓を見る。

胸がうずく。

5月では珍しくギラギラ降り注ぐ日差しが通り過ぎる景色を、

2分したかのようにはっきり明暗を分ける。

山間を通る時は木々に差し込む光が柱に見えるように美しく。

湖沿いを通る時は光を反射した美しさに、対岸を思い立たせもせず視線を奪うようだった。

景色を眺めることしなかった私は、見知った駅を通り過ぎたあたりから、

言葉が溢れ出てきた。

「あんなキレイやったっけ、久しぶりに釣りにいきとうなったわ、てか、ここらへんの駅ってこんなやっけ

 前はこの駅なかったんとちゃう?」

早口で少年のような連想ゲームをただ兄に投げつけていた。


目的の駅に到着する。

駅からは兄の運転する車に乗り、昔と変わった場所、変わらない場所を、

また窓から探していた。

車が止まる。

私は兄を置いて自宅まで走る。田舎特有の周り住居と離れた敷地だけ余っている庭とも呼べないような所を。

玄関を開ける。

「ただいま、帰ってきたわ」

両親と顔を合わす。

家の中は電気がついておらず、日光に頼り切りなリビングに、

8人は囲めるほど大きな机と、歩くにはどける必要のある椅子の上に両親は座っており、

椅子には訝しげに私を見つめる2匹の猫がいる。

「湖めっちゃキレイやったわ、あんな澄んでだっけ」

猫にそっと手を近づける。

顔に伸ばした手と磁石のように反対側に一定に顔をそむける。

その猫を父は抱きかかえ、私に寄せる。

父の顔も、母の顔もやわらかな笑顔をこちらに向けていた。

私の目は、日光だけが頼りで窓も多くないリビングを受け入れ、

薄暗い中にも両親をはっきりと映した。

「久しぶりに釣りいきとおなったわ、倉庫にまだ釣り具おいてある?」

私はいてもたってもいられずに、荷物も置くことを忘れ、

返事すらも待たずに玄関から飛び出し、

酷くぎらつく日差しを気にも留めず、倉庫に向かう。

埃かぶった釣り具を、払いもせずに抱きかかえ、リビングに戻る。

「明日釣りに行ってくるわ」

私はキレイな水面に奪われた心から両親に伝える。

両親の温かく、優しい声音で私に伝える。

「日曜日やないの?」

「あぁ、そやったわ日曜にしやな。明日はまだ仕事やねん。でも在宅ですませられるから、日曜にするわ。

 明日はチームの山田さんには在宅って事伝えな。」

そう柔らかな笑顔の両親に伝え、社用のスマホを取り出そうとする。

社用のスマホを掴んだ手は止まり、両親の顔を見つめる。

暖かな笑顔で私を見つめるだけの両親。

「今日は出張で近くまできてん。そうやったんやけど、今日何したか全く覚えてない。」

私の脳が動きだす、こんなイレギュラーな状況が発生する仮説を立てる。

本来なら出張での業務後は"自宅"に引き返す必要がある。

業務時間に余裕があれば軽く仕事を進める為に宿泊先に戻る必要がある。

こんな年になって出るのは汗くらいだ。

私の顔から止まらない水滴をぬぐいな伝える。

「こんな形で会いに来てもうたわ」

私は目を開く。

飛び飛びのGW前の休日。

5月にしては肌寒く、暖かな布団に横になっていた。

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