表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

筋肉との別れ

◇◇◇◇◇◇



柔らかく差し込む光に包まれて、視界がぼんやりと白く霞んでいる。


そこで、俺の意識は覚醒した。


どこだ、ここ……。



静かすぎる。

耳を澄ましても、自分の呼吸と心臓の音しか聞こえない。

体の感覚も、何もかも、妙に現実味がない。


――天国か?


手足を動かそうとするが、布に包まれた感覚だけが頼りで、自分の体がどうなっているのかすら掴めない。


目をゆっくり開き直す。

白く広がる天井、柔らかな寝具、窓から差す温かな光……

すべてが見慣れないものなのに、奇妙な程違和感を感じさせない矛盾に眉をひそめた。


あの時、俺は死ななかったのか。まあ俺が死ぬわけないよな。


だけど、まるで洋風映画にでも出てきそうなこの場所――いったいどこなんだ……?



部屋の中を見渡すと、すべてが整然としていて、どこか現実離れしている。


白い漆喰の壁に縁取られた窓枠から、柔らかい朝日の光が差し込む。


光はカーテン越しに淡く拡散し、部屋全体を優しく包み込んでいる。


いや、どこお姫様のお城の中だよと心の中で突っ込む。


床には淡い色合いの絨毯が敷かれ、踏みしめるとふわりとした感触が返ってくる。


やわらか…っ!下手したら俺のベッドよりも柔らかいぞこの絨毯!!


天井は高く、シャンデリアが静かにぶら下がっていて、金属の装飾が朝の光を反射して小さく煌めく。


壁には、古典的な絵画が等間隔に掛けられており、どれも高額そうなものばかりだ。



そんな眩い光と静けさに包まれた部屋の中で、ふと、胸の奥にざわつく感覚が走った。


……あれ? そういえば、俺、あの時刺されたはずだよな……?


手をそっと胸に当ててみる。

冷たい感覚も、熱い痛みも、血の感触も――何もない。

腕を動かしても、背中に手を回しても、刃の痕らしきものはどこにもない。



これなら、バスケットもいつも通りに続けられそうだな。


そのことにほっと安堵の息をついた。

胸の奥の不安が、静かに霧散していく。



だけど、そう安堵したのも束の間。

腕を少し動かした所で、妙な違和感にピタリと体を止めた。


……あれ、俺の筋肉どこにいったんだ?


筋肉の感触が明らかに違う。

以前のような力強さも厚みもなく、柔らかく、細くなっている。


手を握りしめてみるが、指先に伝わるのは、以前の力強さではなく、ふにゃりとした柔らかさだ。


腕から胸へと手を当てると、ぽよんと大きな膨らみに当たる。


筋肉が落ちると脂肪に変わるとは聞いていたが、どれだけ寝てればこんなに……。


恐る恐るベッドの端に座り、視線を部屋の隅にある大きな鏡へ向ける。

足先まで届く全身鏡は、朝の光を柔らかく反射して、部屋全体を淡く明るく染めている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ