高梨悠真という男
◇◇◇◇◇◇
「ナイスシュート!!」
夏の熱を帯びた体育館に響く声。最後のシュートが決まった瞬間、ブザーが鳴り響いき自分達の勝利を告げた。チームメイトたちが喜びに叫び、ハイタッチの嵐だ。
隣にいた敵チームの男が「流石だな」と悔しそうに右手を差し出していた。
「あー…まぁ、お前もいい動きだったぜ」
握手を交わしながらそう言えば嬉しそうに「ありがとう」と返された。
素直なやつ。
去年試合で競った相手は逆上してきて大変だったな。そうならなくて、良かった。あの時の右ストレートは結構痛かった。いやほんとまじで。
「先輩!最後ナイスシュートでした!まじですごいっす!」
「はは、だろ?」
隣で興奮気味に息を切らす後輩に、ドヤ顔でピースを返した。軽く笑われながらも、拍手は返ってくる。
「お…!」
コートの端で待機していた、マネージャーの女子がペットボトルを走って持ってくる姿が視界の端に写った。
よし、きたな。
横目で確認しながら、汗で濡れた髪をかき上げ、近づく。
俺は1番自分がかっこよく見える仕草を熟知している。
「お疲れ様、優馬くん……!」
「おお、サンキュー、美咲!今日の俺、キマってただろ?」
自信満々に笑いながらペットボトルを受け取ると、美咲は顔を赤くして俯いた。
「……う、うん。とってもかっこよかったよ。特に最後のシュートなんか、今も胸がドキドキしてる……!」
「当たり前だろ!今日は美咲に見せるために頑張ったんだぜ」
そう言って、俺は得意げに胸を張った。
「ゆ、悠真くんが…私に?」
首元まで真っ赤に染ったマネージャーを見て感じた。
この女、絶対落ちたな。
バスケットマネージャーをする石原美咲。一見大人しそうな容姿をしているが……眼鏡の奥にある瞳をじーっと見つめてニンマリと笑った。
この女、絶対めがねを外したら美人だ。この頃はコロナでマスクにめがねで素顔を見ることすら難しい世の中だ。
だけど長年色んな女を口説いてきた俺の目からは逃げられないぜ。
「み、見すぎだよ、悠真くん」
美咲はカァっ!と赤い顔を、沸騰させるように一段と真っ赤にさせた。
「あ、悪い悪い」
おっと、俺としたことが考えに夢中になりすぎたな。
だけど、仕掛けるなら今だ。こういうのは雰囲気と流れに任せた方が上手くいく。それに今回は絶対いける気がしてきたわ。
勝利の余韻が体育館に満ちる。歓声、拍手、仲間の笑顔――全部、俺のテンションをさらに上げていく。
高梨悠真、スポーツ万能、自他共に認めるイケメン。そして女たらし。
勝利の味を噛み締めながら、目の前の女を部屋に誘うための言葉を頭でイメージしながら、口を開いた。




