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XXI 街の治癒師

 東の森の討伐は大した怪我人も出ることなく終わり、私の治癒の副作用はほぼ気にすることなく受け入れられた。だけど、胸元の小さな傷もついでに治そうとした時、

「キスマークと間違えられるからやめて!」

と真っ赤になって断られた。 

 ふーん、と思った3秒後、意味がわかって私も赤面してしまった。

 そういう誤解…、あるかも。トラブルにならないよう気を付けよっ。



 討伐の後もレオンハルト様は時々公爵家にやってきた。仕事も時もあれば、仕事じゃない時もある。何せ伯父様の家だから。

 オフの時はこれが偶然とは思えないほど私の休みと重なっていて、お膳立てされるままに一緒に街に遊びに行ったり、郊外に遠乗りしたり、いわゆるデート(ってやつ?)を楽しんだ。


 今までこんな余裕なかった。できる限り治癒の依頼を受けてあちこち行って、依頼先でも薬草摘んでたし、依頼のない日は薬作って、薬師さんのところで薬草の勉強もしてたし…。

 今でも薬を作っているし、出かけた先で時間があれば薬草探して摘みもするけれど、やらなきゃ、から、やって楽しいになっている。


 乗馬は好きだったけど、家を離れてからは馬を飼うことなんてできなかった。緊急時に依頼先が馬を貸してくれることはあってもとても楽しむ余裕なんてなく、乗れ慣れない馬でひたすらかっ飛ばしていた。

 それが、どう見ても血統のよさそうな毛並みつやつやの馬を「いいよー」でポンと貸してくださるのだから、恐るべし、公爵家。

 またがるのも恐れ多い馬を気遣いすぎておどおどしていたせいか、馬に舐められていたけれど、きちんとしつけられた馬は隣のレオンハルト様の指示に忠実に従い暴れることはなく、目的地に着く頃には乗りこなせていた。

 少しだけ競争して、ぎりぎり勝てたのは体重の差かな。負けたからと食事を奢ってくれることになったけど、全然悔しそうにしていない。手を抜かれてないのはわかってたけど、余裕な態度はちょっと悔しかったりする。


 後日、一緒に食事に出かけた先で、ほろ酔いのレオンハルト様はにやけながら言った。

「いやぁ、勝負に負けてご褒美もらったな」

 一緒に食事するのをご褒美と言ってもらえるなんて、ちょっと恥ずかしいけど、…嬉しい。



 その後もデートを重ねながらも、レオンハルト様が無理を言ったり、強引に関係を進めようとすることはなかった。もしかしたら治癒師を身内に持つための策略的な何かなのかなと疑いつつも、つい楽しくて、呼ばれれば気軽にどこにでもついて行くのが当たり前になっていた。


 遠慮がちに伸ばしていた手も普通につかめるようになり、手を引いてどこかに引っ張られるのも、腕に手を添えるのも、肩に手を置かれても、照れはしても拒否する気持ちは湧かなくなっていた。


 互いに仕事があり、ずっと会えない時が続くとふと思い出す。討伐が増えると心配になる。目が勝手に人ごみの中から彼を見分けてしまう。無事な姿を見て安心する。

 これが恋なのかな。

 あれほど恋や愛なんてものは信じられないと思っていたのに…。




 治癒師として公爵家の皆様に同行し、王都に行くことになった。

 道中は至って平和で、ローゼマリーお嬢様の馬車酔い対策以外ほぼすることはなかった。


 急遽お嬢様のお付きの役で王城の夜会に参加することになり、準備のいいことに私のドレスも用意されていたけれど、もはや驚かない。

 いや、驚いた! サイズぴったり。織の凝った布地に、裾に施された細やかな刺繍…。伯爵夫人に見立てていただいたものとは印象がまるで違うけど、これはこれで素敵…。こんなドレスを再び身につける日が来ようとは。さ、さすが、公爵家!


 会場に入る手前でローゼマリーお嬢様の婚約者がお迎えに来て、その後ろをついて行こうとする私にもパートナーが現れた。


 隊服とは違う姿で現れたレオンハルト様に、公爵家総出で仕組まれたと気がついた。

「先に行ってるわね」

 お嬢様はふふふと笑って手を振り、婚約者様と先に会場入りした。楽しそうにサプライズ成功の報告をしているのが遠目にもわかった。


「よく似合ってるな」

 私のドレス姿を見て、レオンハルト様は満足そうに笑みを浮かべた。

「あ、褒めてくれるんですか? 以前は伯爵家の侍女の腕を褒めてましたけど?」

「…他の男が選んだドレス着てる女を褒めるわけないだろ」

 選んだのは伯爵夫人だけど。

 …今の台詞、あの頃から私のことを多少は意識してくれてたと思って、いいのかな?


 と言うことは…、

「これ、もしかしてレオンハルト様が選んでくださった…?」

 そこでドヤ顔をするのがちょっと残念だけど、…センスは悪くないのでは。

 私のために選んでくれた、私のドレス…。

 似合ってるって、褒めてくれた。


「ありがとう、ございます…」

 お礼を言うと、レオンハルト様は珍しくちょっとうろたえた様子を見せた。

 私だってお礼くらい言うんだけど。


「もはや子爵家の人間でもない私ですが、パートナーでいいんですか?」

「爵位がないのは俺も同じだ。王城に呼ばれるくらいの仕事はしてきたと自負しているが?」

「それは私もです」

 差し出された腕をとり、私はレオンハルト様と共に会場へと向かった。




 公爵家に来て三年後、職場復帰したエリスさん(ヴィムさんの奥様)に仕事を引き継いで退職し、王都に移り住んだ。


 フリーの治癒師として街の中の小さな依頼を受ける傍ら、教会にも登録して派遣治癒師の仕事を引き受け、時に王立騎士団の討伐に参加し、災害や事故のあった領から依頼を受けることもある。


 家のために働いていた時も、家のためでなくなった今でも、治癒師としてプライドを持って働いている。

 だけどあの頃とは違い、がむしゃらではなく、体力、魔力と相談しながら自分のペースで仕事ができるようになった。


 そう生きる道へと導いてくれた夫レオンハルトに感謝して、今日も仕事に向かう彼に手を振った。

「行ってらっしゃーい!」

 さて、私も出かけますか。








お読みいただき、ありがとうございました。


コミカライズ応援自主企画で、短編化・掲載日投稿に失敗した(ワル)い私。

せめてもの思いで、短期集中掲載にしてみました。

掲載しながらも追加エピソードを思いつくのが常で、更新修正まみれなのに日4更新、ドキドキしてました。


最終話に至っては更新前日深夜に大幅改定、ハイファンタジー寄りから恋愛寄りに戻せたのではないか?と思ってます。(まだ浅いながら…)


更新後もあちこち修正、もしかしたらうっかり書き足すかもしれません。

(腐れ完結主義者)

全て気まぐれにやらせていただいております。


誤字ラ出現、毎度でご容赦ください。

ご指摘、ありがとうございます。


致命的な人名・身分の間違い、投稿前に自分で4か所見つけました!

(残念なドヤ顔)

他にもあったら、すみません。こっそり直します。


(でた! 一話まるごと人名間違い…。ご、ご指摘、ありがとう、ござ… (絶))

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