ノイズ生徒たち【四階】
ノイズ生徒達は、椅子に座ったり廊下を歩いたりしている。
大きさは、ノイズによって違う。
話したりはしない。
教科書みたいな本には、グチャグチャの落書きみたいな文字が書かれている。
「……やっぱり、階段はないね……」
階段のある場所へ行ったが、やはり壁になっている。
窓も同じように壁。
エマとショウマはそれだけ確認して、廊下に座り込んでしまう。
「喉がカラカラ……」
「さっき飲めなかったもんね」
「うん、限界。……あっ、見てあのノイズ」
「水飲み場で水飲んでる……ね」
ノイズが水飲み場で、水を飲んでいる。
でも水はダバダバと流れていて飲み込んでいるのかは、わからない。
「飲もう!」
ノイズが去ったあと、二人で水飲み場にすぐ行った。
「でも飲んで大丈夫かな? って今更思えてきたね」
ショウマが、一瞬、戸惑った。
「えっ」
エマはもう、ゴクゴクゴクっと三口ほど飲んでしまったあとだ。
「あ、ごめん。僕も飲むよ」
「だめだった!?」
「いや、水も飲まなきゃ……ね。ゴクゴクゴク。うん、最高だ。ぬるいけど……」
「ショウマ……」
「大丈夫さ」
『私達、死んじゃう?』と一瞬言おうとしたけど激しく頭が痛くなった。
そんな未来を考えちゃいけないからだ、と思う。
「ここのノイズ生徒達は……何も危害を加えてこないのかな」
「無視されてるみたいだよね。別にいいんだけど」
「本当なら、エマはみんなの中心人物で、真ん中で人気者なのにね」
「なに言ってんの~そんな事ないよ」
「どうしてさ、小学校の人気者でしょ」
「違うよ……今なんか……このノイズみたいに、みんな私を避けてる……えっ?」
「え? みんながエマを? そんな事あるわけないじゃないか。エマ、どうしたの?」
「……なんて、言ったかな……私……」
エマも自分で言った言葉に、びっくりしている。
そんなエマを見て、ショウマも聞くことはしなかった。
「いや……なんでもない。変なことばかり起きてるからね。早く四階から出る方法を考えようか」
「……うん……」
なんだか、変な空気になってしまった。
でも二人でまた調べ始める。
「僕らの教室をまだ見る? 他の教室もしっかり見てみる?」
「うん、違う教室を調べてみよう」
『僕らの教室……六年三組』
どうしてか、違和感を覚えてしまう。
確かに、六年三組は、エマとショウマのクラスで教室だった……。
四階には、六年生の教室が三つ、五年生の教室が二つ。
そして、美術室があった。
美術室にはたくさんのイーゼル(絵を描く際にキャンバスや画板を立てかけるための道具)が円を描くように置いてある。
真ん中には、何もない台が置いてある。
「みんなで何を描こうというのかな」
「殺人蜘蛛ロボットの次は……暗号解読か」
ノイズ生徒は誰も、美術室に入ってこない。
「何か絵を描いたら……階段が出てくるとか」
「わからない事が多すぎるね」
「……うん……」
二人は六年三組の教室へ戻る。
二人が歩くと、ノイズ生徒は避けるようになった。
やっぱり嫌な感じだと、エマは思う。
避けられるのは嫌だ。
まるでこっちが化け物みたい。
……蜘蛛ロボットには避けられたいけど。
「見て、エマ。黒板に何か書いてある」
さっきは何も書いてなかった黒板に、文字が書いてあるのを見つけた。
「え……本当だ」
『宝石が欲しかった、でも駄目だった。閉じ込められて、身体が変わっていく』
「なんだこれ……?」
「身体が変わっていく……?」
『願いが描けなくて、あれになっていく……私も……ノイズに……な……てく』
教室を歩きまわっているノイズ達……。
今まで無害だと思っていた彼らが、恐怖の対象になった。
「……これって、ノイズは、もとは人間だったってこと……?」
「……そんな……」
黒板の前で、倒れそうになるエマをショウマが支えた。
でも、ショウマも震えている。
このまま四階から出られなければ、二人ともノイズになってしまう――!?
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