決死の脱出!四階へ【五階~四階】
ショウマは廊下に出てくる蜘蛛ロボットから逃げるために、男子トイレに入った。
突然だったけど、ショウマは冷静に対応できた。
しかし……!
「ひっ!!」
「ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「うわぁあああああ!!」
なんと、男子トイレには、二匹目の蜘蛛ロボットがいたのだ。
蜘蛛ロボットと目が合った気がした。
エマはパニックになってしまった。
でも、ショウマが抱えてくれている。
「エマ……!」
「ショウマ! 走ろう!」
ショウマが思ったように、エマもショウマを守りたいと思った。
「うん!」
男子トイレの蜘蛛ロボットが、二人を捕捉しようと動き出す。
廊下に出れば、廊下の蜘蛛ロボットが二人を見つけて、蜘蛛の頭からチェーンソーのような刃が現れた。
血まみれの廊下を走れ! 走れ!!
二人は手をつないだまま走る!!
「うわっ!」
「ショウマ!」
滑って転びそうになったショウマを、エマが思い切り手をあげて引っ張る。
「Hnsh キks t クds! Dnn kmチ dstカ! トrkt y n. Ztt トmdチ dtt n!? Htkt デm i n d!!」
「Hnsh キks t クds! Dnn kmチ dstカ! トrkt y n. Ztt トmdチ dtt n!? Htkt デm i n d!!」
意味不明な言葉を吐きながら追いかけてくる蜘蛛ロボット二体。
「追いかけてくるな!」
「お願い! 階段! あってぇええ!!」
一番端っこの部屋はドアが閉まっていた。
そのドアを思い切り開けた。
「あった!!」
窓があるはずの壁に、階段が、あった!!
「行こう!!」
階段の降りる先は真っ暗だった。
それでも二人は、そこめがけて走り出す!!
後ろの髪の毛が、蜘蛛ロボットのチェーンソーに触れた気がした。
もっと走って……!!
「きゃあああああ!!」
「うわぁああああああ!!」
転がり込んだ。
あちこち、痛いのかわからないが、でも二人は手を離さなかった。
手を離したら、離れ離れになってしまいそうで……!
それが何より怖かった。
「ショウマーー!!」
「エマ!」
二人で地面にぶち当たる。
「う……」
「ここは……どこ……?」
「四階……? エマ……大丈夫?」
「私なんか……どうだっていい……ショウマ、ショウマがいれば……ショウマがいなきゃ……」
「エマ、何を言ってるんだ。大丈夫?」
「あ……う、うん……」
ショウマに手を引かれて、立ち上がる。
あちこちが痛いけど、また危険な化け物がいるかもしれない。
「蜘蛛ロボットはいない。ここは……四階の教室みたいだ」
「ここは……?」
「六年三組……僕達の教室……」
見慣れた教室……。
今回は、机も椅子もある。
教室の後ろには、小さな水槽がある。
六年三組ではメダカを飼っていたけど、空っぽだ。
「エマ、怪我してない?」
「大丈夫……」
「少し休めるかな……」
「うん、そうだといいね……」
エマは椅子を引いて座った。
「はぁ……疲れた……」
「ここは四階だよね、ひとまず降りてこられたみたいだ」
「うん……」
思い出すと、手が震える。
その手を、そっとショウマが握ってくれた。
「怖かったね……まさか、水道から血が出るなんて思わないよ」
「うん。ショウマがいなかったら、私もう駄目だった」
パニックになってしまったのを思い出す。
あれから、どう滅茶苦茶に走ったか……。
「僕だって、エマがいなかったら走れてなかったよ」
「へへへ」
二人で、拳を合わせた。
すこしだけホッとする時間。
六年三組の教室。
似ていても、異次元学校の教室だから当然なのだけど、何故かエマは悲しく感じる。
ここにいると、どんどん寂しくなるような変な気持ちだ。
「ここから……早く出たいね」
「うん……」
それでも、ほんの少しの安らげる時間だった。
しかし……教室の時計がグルグルと回り始める。
「えっ……!?」
「なんだ!?」
身構える二人。
すると、目の前に『誰か』が現れた。
真っ黒なノイズ。
「ひぃ!?」
「エマ!」
黒いノイズは、小学生くらいの大きさ。
顔と身体と手足を、黒いクレヨンでグチャグチャに描いたみたいなノイズ。
恐怖で立ち上がったエマの手をショウマが掴んで椅子から離れた。
ノイズは、椅子に座る。
これも蜘蛛ロボットのように攻撃してくる!?
二人は震えたまま、ノイズを見る。
しかしノイズは、机の中から教科書とノート……のようなものを取り出し、座り続ける。
「……なにこれ……」
「ノイズの……生徒……?」
二人は教室の後ろに後ずさる。
すると……また一人……また一人……ノイズが教室に入ってくる。
不気味で、異様なクラスメイト……?
「廊下に出てみよう」
「うん」
小声で話して廊下に出てみると、廊下にも何体かのノイズがいた。
「ノイズ生徒の……教室……」
【四階・ノイズ生徒の教室】