Shark in the Classroom!(教室にサメがいる!)【三階】
「待って、待って、嘘だ……鮫……?」
教室プールの中に、まさかの鮫。
エマは恐怖で騒ぎそうになる。
「しーっ……あの鮫は音を聞いてやってきた……静かにしよう」
「う、うん」
エマが溺れないように、ショウマは腕を絡めてカーテンレールをつかむ。
教室をゆっくりと一周する影は鮫にしか見えない。
二人とも息を潜める。
ゆっくり……ゆっくり……鮫は泳いで、教室を出て行った。
「こ、怖い……」
ブルブル震えがして、泳げなくなりそうだと思った時……水はまた減っていった。
そして、二人の腰までの高さになる。
「あ、あの鮫に襲われたら死ぬ……」
「今のうちに、他の教室を回ろう。三階ってなんの教室があったっけ……」
「なんだっけ……放送室……と、三、四年生の教室」
「行こう」
ザバザバと、水の中を注意しながら歩く。
教室に特に目立った変わりはない。
「水が増えてきたら、近くの教室に入ってカーテンに掴まる。いいね」
「うん……この水位だから鮫は来ないよね?」
「多分、来ない。蜘蛛ロボットのときみたいに、動きが決まっているかも。水の増え方も……」
「そうだね。また調べるのに時間がかかるかな……」
「まずは、放送室に行こう! 何か道具とか、役立つものがあるかもしれない」
急いで一番北の端にある放送室へ行く。
「見て……階段があるはずの壁から水がでてる……」
放送室の前の北階段……があるはずの壁から水が吹き出していた。
「本当だ……」
放送室のドアは開いていた。
中はもう水びたしだ。
「機械は使えないかな? この機械で外に連絡とか……できないかな」
放送室の中には、大きな機械がある。
マイクがあって、ボリュームを上げ下げするんだろうボタン、緊急連絡のボタンなんかもある。
「つかないね」
二人は放送委員になったことがないので、使い方はわからない。
でも緊急連絡のボタンは押しても反応がなかった。
テレビも映らない。
「感電したり……しないよね」
「今、大丈夫だし、多分。何か役に立つものはないかな……」
「あれ見て」
棚の上に、CDラジカセがあった。
「あぁ、ラジカセ……よいしょ」
ショウマが手を伸ばして、机の上に置く。
全身びしょ濡れだけど、どうにか手を拭ってボタンを押した。
『~♫~~さらば~♫~~別れの~~♫』
「あっ……」
「これ卒業式の、卒業生が歌う歌だね」
「う、うん……そだね」
「いっぱい練習したけどさ、本番も成功するといいよね」
ショウマが言う。
「……うん……」
「あ、ここ。僕はまだ、あんまり低い声が出ないのに難しいんだよね。……エマ?」
「いや、ううん。なんでも」
「寒い? 顔が青い気がする。やっぱり、水の温度があったかくても出ると寒いよね」
「……うん……」
エマは、自分の身体が震えだすのを感じた。
「これ以外に、何かないかな……使えるもの。温かくなるような」
「大丈夫、大丈夫だよ。もう、水の中に入っちゃう。水の中のほうがあったかいしね、あはは」
何か違和感がある。
エマは……何かを思い出し始めていた。
「大丈夫?」
ラジカセからは、まだ歌が流れている。
「もう、その歌聴かないでおこう」
「え? うん、まぁそうだね。ここで練習することないよね」
「うん……だって鮫がくるかもしれないよ」
「そうだね。普通の鮫と同じものなのかは、わからないけど……音を立てたものを、獲物だと思って寄ってくる」
「さっき、来たもんね」
「でも蜘蛛ロボットと同じように、ただの順番かもしれない」
「また水位が上がってきた! ショウマ、どこにいよう」
「この部屋……ラジカセが壊れていなかった。もしかしたら、鮫がくるほどに水位が上がらないかも」
「そっか!」
ショウマの読み通り、何故か放送室だけは水位が腰ほどで止まった。
「どうなってるの? ……水の壁だ」
「わぁ……さすが、不可思議な学校だな」
放送室の入口は、水の壁で塞がれた。
だから水が入ってこない。
まるで水族館のガラスのように、廊下が覗けるのだ。
「ここにいれば、鮫は避けられるね」
「満潮の時はここにいよう」
「プールなのに、海みたいだね」
「この部屋に階段が出ないか、色々探そう」
「うん!」
でも、放送室の中に階段に繋がるようなものは何も見つからない。
何度か満潮になって、水の壁から鮫が廊下を泳ぐのを見ていた。
「ねぇ、あの階段のあるはずの壁……階段になってない?」
「ん? でもさっきまでは、壁だったけど……」
干潮になってから、北階段に行くと階段は壁になっている。
でも満潮になってる間、放送室から覗くと確かに、階段が出現して下へ降りられるようになっているのだ。
「でも、ずーっとこの鮫……北階段の前をウロウロしてる」
その時、
『ピンポンパンポーン♫』
「ぎゃあ!」
「なんだ!?」
突然、校内放送が始まった。
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