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プール?プール!プール!!【三階】

 二人でグチャグチャに絡まったような感覚のまま、落ちていく。

 

「ぎゃ!!」


「ぐっ」


 二人で落ちた。


「エマ! 大丈夫!?」


「ショウマ! 私の手足がっ! ノイズにぃいいどうしよう!? どうしよう!?」


「落ち着いて! 戻ってる! 落ち着いて……大丈夫、戻ってるよ。脱出すれば戻るんだ」


 ショウマに抱き締められる。

 混乱で叫んで暴れてしまいそうなエマだったけど、ショウマの腕の中で少し正気を取り戻す。


「ショウマ……っ」

 

「ゆっくり息を吸って、吐いて……ゆっくり、大丈夫……よかった……よかった……」


「はぁ……はぁ……すーーはぁ……すーーはぁ……はぁ……」


 言われたように、ゆっくり息を吸う。

 エマが見た自分の手足はいつもの手足だった。

 

「……本当だ……戻ってる!!」


「よかった……! よく頑張ったね! エマ!」


 ショウマが、頭を撫でてくれた。

 他の人には絶対されたくないけど、ショウマに撫でられるとエマはホッとする。

 

「うん。よかった……でもすっごく怖かった……」


「一人で頑張らせちゃってごめんね」


「ううん……私が、やらなきゃいけない気がしたんだもん」


「ありがとう」


 二人で微笑み合う。

 とりあえずノイズ生徒達の四階からは脱出できたのだ。

 

「さっき……」


「ん?」


「私のショウマって、いや、なんでもない」


 ショウマが少し照れながら頬をかいた。


「え? なに? なんのこと?」


 エマは本当に覚えていなかった。

 

「いや、なんでもないんだ」


 ショウマが何を嬉しそうに笑うのか、エマにはわからない。


「さて……ここは三階のはずだね」


「うん、次は……三階」

 

 そして二人で次は一体どんな教室に……? と辺りを見回す。


 なにやら塩素のニオイがする……。

 床はザラザラで、壁にはたくさんの棚。


「ここ……プールの更衣室じゃない……?」


「あぁ……そう言われてみたら、そうだ」


 エマ達が五年生の時。

 新しく作られたプールの更衣室にそっくりだった。


「でも、ここ三階だよね?」


「何が起きてもおかしくないよ……この異次元学校ならね」


「出るのが怖い」


「うん」


 更衣室を出ると……そこは教室のあるはずの、いつもの廊下。

 南階段の前に三階を表す『3』の数字。


 でも……。


「水びたし……」


 足首まで、水に漬かった廊下。


「まさか、廊下プールってこと?」


「きゃ! 水がどんどん増えてってるよ!?」


 慌てて戻った更衣室にも、水がどんどん流れていく。

 あっという間に、腰の高さまで水に浸かってしまった。


「やだ……ずぶ濡れだよ。水着も用意してくれなきゃ困るよ」


「本当だね。服のままだと危険だよ。慎重に泳ぐ……歩かなきゃ」


「ここを出ないといけないんだろうけど、怖い」


 蜘蛛ロボット、ノイズ生徒……次は何?

 水中から襲われたら……。


 足が震える。


「……遊びに来た気分で、行こう」


「ショウマ~~こんな時に、なに言ってんの」


「僕は身体が弱かったし、プールは休むことが多かったからさ。エマとプールで遊ぶ気分で行くよ」


 ショウマが笑って言う。

 そうだ、ショウマはいつも冗談っぽく話をしてエマの緊張をほぐしてくれる。 


「……そうだね。泳いじゃう?」


「いいね」


「うそうそ!」


「今度は僕が頑張るよ」


「無理しないでよ!?」


「うん」


 二人で手を繋いで、廊下に出る。

 南側の廊下はやはり壁で階段はない。

 本当は突き当りの窓があるはずの場所に、更衣室がくっついているようだった。


「なんでもありだね……」


「本当だね……あ、教室には机と、椅子がある。三、四年生の机はちょっと小さいね」


「一度、机の上に乗ろうか」


「うん」


 一番南側の教室。四年三組の教室。

 誰かの机の上に乗る。


「はぁ……お腹空いた」


「本当だね……一体ここに来て、何時間経ったんだろう」


「蜘蛛ロボットの五階でも寝たりしたし……あの絵も何時間描いてたのか……もうわからない」


 ショウマが教室を見渡す。

 一度、また水の中にショウマが入って机を動かそうとしたけど動かなかった。

 固定されているようだった。

 

「これじゃ休むのも大変だ……急いで階段を探した方がいいね。エマはまだ休む?」


「ううん。平気」


 二人でまたザブンと、水の中に入る。

 水は綺麗で、床がしっかり見えた。

 温度は、温かくて温水プールのようだ。


「わ、水がもっと増えてきた」


「泳いで移動しよう……また減るといいけど」


 突然に増えた水は、二人の肩まで上昇してくる。

 もしも、これ以上増えてしまったら!?

 天井まで水に埋もれてしまったら!?


「エマ、エマは水泳も得意だもんね。だから大丈夫だよ。一応教室に入ろう」


 教室には、みんなのランドセルを入れる棚や、今回の窓にはカーテンもある。

 もし水が増えれば、そこに掴まっている事ができる。


「うん」


 天井まで水に埋もれてしまう可能性は……考えないでいた。

 しかしどんどん、増えていく水。


「うっ……すごいな」


「カーテンに掴まろう、ショウマ!」


「うん。大丈夫……慌てないで」


 二人で窓のカーテンに掴まる。

 どんどん水は増えて、教室が水でいっぱいになっていく。

 

 エマもショウマも、不安でいっぱいだ。

 このまま体力が尽きたら……。


 その時、何か気配を感じる。


「エマ……何か……廊下を泳いでる……」


「えっ!? 何かって何!?」


 驚いて、エマが叫んで窓に思い切り足をぶつけてしまった。


 ゴォオオオオ……ン


 音が水中に、響く。

 

 何かが、音を聞いたのか……ゆっくりとやってきた。


「うそでしょ……」


「し……っ」


 鮫だ!

 鮫が、ゆっくりと教室内を泳いでいる……!!


 【三階・鮫プール教室】



 

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