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帝と四人の瑞獣たち―偽世者(にせもの)―  作者: ノエルアリ
第2部「瑞獣偽者取替騒動」
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誰が偽物か?

 黄呂おうろの昔語りが済み、朱鷺ときは大きく吐息を漏らした。

「真、あの時分の俺は、何の力も持っておらぬ、ただの石ころ同然の男であったからのう。そなたとの約束も守れず、多くの犠牲を出してしもうた。……心より詫びよう。許してくれ、()()

 帝となった時宮ときのみやから名を呼ばれ、黄呂は、ぎゅっと口を噤んだ。

「それにしても、真、俺のことを好いてくれておったのだな。だのに俺は、そなたに辛くあたってしもうた。何から何まで申し訳なく思うておる……」

 いつになく自己嫌悪に陥る朱鷺ときに、水影みなかげが「それで、偽者が件は」と、冷静に事を進める。

「ああ。そうであったのう。偽者か……。誰も彼も本物と遜色ないでな。いっそう、このままでも良いかと思うのだが」

「良い訳ありませぬ!」

 四人の瑞獣が、同時にツッコんだ。

「うむ、偽者、偽者のう……」

「主上、回答権は一度きりにございますれば、間違えれば、本物は一生帰っては来ませぬ。当てれば主上が勝ち。負ければ、約束通り私を瑞獣の一人に加えていただきまする」

「存じておる。もう二度と、そなたとの約束を違えるつもりはないでな」

 朱鷺が、目の前に座る四人の瑞獣らに目を向けた。おもむろに、四人の名を呼んでいく。

「三条水影」

「……は」

「春日安孫」

「はっ」

「麒麟」

「はい」

「不動院満仲」

「は」

 平伏する四人に、朱鷺が頭を抱える。正直、誰が偽者か分からない。そのままの姿勢で、目を瞑った朱鷺が訊ねていく。

「水影、我らが初めてうた日は、いつであったか?」

仁祥じんしょう6年7月9日にございまする」

「安孫、そなたら武家は、何のためにある?」

「我ら武家は、主上と主上が民のためにありまする」

「麒麟、そなたは俺の何ぞ?」

「おれは、主上の影です」

「満仲、そなたは俺の?」

「一等愛らしい瑞獣にございまするううう」

「はあ……」

 大きく朱鷺が溜息を吐いた。四人とも本物ならではの回答だ。見かねた満仲が一歩出て、「此処ここは、わたくしめにお任せくだされ」と願い出た。

霊亀れいき様?」

 隣に座る麒麟が、いつになく満仲の真剣な横顔を見つめる。

「わたくしめが、東雲黄呂の名をかたる男を滅して参りまする」

「なっ、されど御前おまえと黄呂殿はっ——」

「安孫、そなたは黙っておれ。本気なのだな、満仲」

 満仲を案じる安孫の言葉を阻み、朱鷺がその本気具合を量る。ゆっくりと満仲が頷いたところで、黄呂が「っふ。ふはははは」と大きく笑った。じっと水影がその様子を探る。

「おれを滅するだと? 御前にそれが出来るとな? 大江山の鬼すらも、滅することが出来なんだであろう?」

うるさいのう。の天才陰陽師、不動院満仲が直々に相手をしてやると言うておるのだ。御前は有難く受けて立つが良い」

 さっと立ち上がった満仲が、庭へと足を進めていく。陽の光の下、天地陰陽の構えを見せる満仲に、黄呂もまた庭に出て、対峙した。

「それで、おれが勝てば、御前は黙って霊亀を譲るとな?」

「主上の瑞獣になりたくば、わしを倒して霊亀を奪ってみせよ。偽者捜しなどという小賢しいマネをするでない」

「ならば、御前を滅して、おれが主上の霊亀となるっ……!」

 突如として始まった陰陽師対決。その勝敗が何を意味しているのか、御簾から出た朱鷺が、三人の瑞獣らと共に、じっと二人の対決の行く末を見守った。



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