04 (デストロイモード)
午前3時…真夜中。
パタパタパタパタ…ヘリコプターのプロペラ音に気付いてカレンが寝袋から起き上がるとテントの外に出る。
「あれはエアトラ?」
そこには編隊飛行している12機のティルトウィング機…エアトラの姿があり、低空で後部ハッチを開けて ロープを降ろし、暗くて分からないが 何かが地面に降下している。
ショッピングモール。
ショッピングモールの警備をしている自衛官Aは プロペラ音に上を見上げる。
「なっヘリボー…あ?
エアトラの後部ハッチから狙撃!。
仲間の頭を撃ち抜き、ロープが降ろされ、次々とドラムが降りて来る。
自衛官Bは89式を構える
「敵っしゅ
エアトラから降りてきたドラムが こちらに向かってライh
「何なんだよアイツらっク
「発砲音?誰が撃った おうと
自衛官Fは戦車の上の機関銃を連射し、ドラムを排除しようとするが、避けられて真面に当たらない。
「くっそ…なんで あた
「おい…ちっ…やられたのか?」
自衛官Gは 力が抜けた機関銃士を一瞬 見上げ、すぐに正面のドラムを見る。
ドラムがF-2000で7.62mm弾を撃って来るが、こちらの装甲なら十分に耐えられている。
いくら何でも戦車砲なら当たるだろう…ターゲット。
なっ…ドラムが こちらに接近!パンチ?こちらの戦車の砲身の中に腕を突っ込む…。
「あっ…」
トリガーを押してしま
戦車が爆発し、砲身がバナナの皮の様にめくれる…ドラムの一機が腕を砲身に突っ込んで砲身ごと一緒に吹き飛んだ。
「にげろ…かて
「勝てない、勝てない…逃げろ逃げろ」
自衛官Hは 73式大型トラックの運転席に乗り、助手席…荷台へと次々と自衛官達が乗り込んで行く。
エンジン起動…パスッ…ボン…ボン…ボン…ボン。
ドラムのライフル弾により タイヤが次々と撃ち抜かれて行く…大丈夫…このタイヤはパンクしても しばらくは走れる。
が、ドラムのF-2000の銃口がこちらを向いた。
パンパンパンパン…。
私の前の防弾仕様のフロントガラスが撃たれ、同じ位置に何度もライフル弾を撃ちヒビがどんどん入り、私の頭の位置にあるガラスを突き破
「やめっ」
助手席の自衛官Iは涙を流しながらドンドンと頭の位置にヒビが入って行くフロントガラスを見る。
「はっはっはっ…」
何人殺された?こんなのってあるか?
息が荒い、心臓の鼓動が早い…落ち着け。
仲間達が 車が動き出すのを 今か今かと信仰対象の無い神に祈っている中、車の後ろから手榴弾を投げ入れられる。
「あっ
銃声で宿舎のベッドで飛び起きた自衛官Kは、廊下で頭を綺麗に撃ち抜かれている同僚を見る…。
「あっあっ」叫び声にならない声…そしてドラムと視線が合った…武器は武器庫にあり、私は丸腰だ
「死ねぇ死ねぇバケモノぉぉぉ死んじまえ!!はははははh」
20式を腰で構えフルオートでドラムに打ち込むが、装甲が凹む程度の位の効果しかない それでも撃ち続け…る
「おい落ち着けっ5.56mmは効かない…7.62mmの64式をっ
市街地 近く。
パン…パン…パン…淡々とライフル発砲音が響き、そこまで悪党では無いヤツらが撃たれた事も知覚出来なく素早く 即死して行く。
「救援?」
「いや…違うな…この手際…ドラムの降下部隊だ。
エアトラを持っているのは トニー王国軍と南極のエクスマキナ都市だけ…。
生かして捕らえるか、皆殺しにするか…どっちにしろ確認に行かないとダメだな…」
クラウドは 暗くて見えない旭川市を見続ける。
暗闇の中で光る銃からの小さな閃光と発砲音がなり続け、戦車砲の爆音も定期的に聞こえる。
「あっ何この音っ」
カレンが耳を手で塞ぎながら私に聞く。
「戦車砲…更に機関砲だな…こりゃ現場の自衛官は皆殺しにされるな。」
「でも、機械とは言え ドラムは歩兵でしょ?戦車に敵うの?」
「それが敵っちゃうのがドラムの恐ろしい所なんだ。」
ソ連人達は 地面に伏せて、戦闘が終わるのを ひたすら待っている。
「大丈夫…こっちには 来ないよ」
それから10分もせずに 辺りは静まり返り、ドラム達は 着陸したエアトラに乗って垂直離陸…水平飛行に移り 去っていった。
「引っ越しをする必要が無くなったな…」
私はソ連人の前で そう言うのだった。
日の出が上がった所で私達は現場に向かう。
「うわっ…何これ?」
そこは地獄絵図だ…あれ程 苦戦していた自衛官達が 全員、頭に一発のライフル弾を受けて死んでいる。
「マガジンに 全弾入ってる…撃つ前に殺されてるな。」
死者は確認できているだけで 200名程…宿舎には もっと いるだろう。
「見て…戦車もやられている…」
比較的 原型が残っている戦車だが砲身が バナナの皮の様に広っている異様な壊れ方をしている。
戦車の室内は砲弾の爆発した事により原型を留めていない。
装甲車の砲身も同じくバナナの皮の様に めくれている。
「どうやって こんな壊れ方になるのよ」
「戦車の砲弾が砲身の中を通過する時に爆発するとこうなる。
何か大きい異物を入れられたな…で、行き場の無い砲弾の圧力が砲身を壊したと…。
多分、ライフル弾によるピンポイント狙撃」
「砲が自分に向けられている時に砲身を狙ったと言うの?」
「そう…ドラムは 1km先の目標にも ワンホールショットが出来る…火器管制ユニットもあるし、人みたいな 手振れが起きないからな。」
「むっちゃくちゃね…」
「でも、今なら砲撃で20km先の人にピンポイントに当てられる位だから…機械なら割と普通…人が弱すぎるんだよ…。
それにしても 何で皆殺しにしたのか?」
「それこそ、ドラムに何故?は 必要なくない?
マスターの命令に従う、責任は 全てマスター…実にシンプル…。
つまり、自衛隊の皆殺しを望むマスターがいるって事ね。」
「はぁまったく…世界が崩壊しているってのに、これ以上殺して何を得ようってんだ…とにかく、これで食糧問題は 解決だな。
もっと厄介な問題が出てきたけど…」
その後、兵士達の身に付けている物は 戦利品として全て剥ぎ取られ、全裸の男達が山の様に積まれ、夜になって火を点けられ 人間 キャンプファイヤーが始まった。
ここの住民達は弾薬庫から大量の武器や弾薬を入手し、厳重管理されていたレーションも手に入れる。
「ははは…飲め飲め~」
北海道より過酷な寒冷地 出身のソ連人達は 略奪した酒をガブガブのんで身体の体温を上げている。
「結局…自衛隊と ここの住民、どっちが悪かったのかね」
「さぁな…どっちとも生活物資を手に入れる為に争った…大人しく争いを避けるために 生活物資を諦め死ぬのが善だったのか?」
私の隣で地面に座っているカレンは 自衛隊の20式のチェックをしている。
「30式じゃなくて良いのか?」
「ええ…6.8mmは手に入り難いから…40式があれば良かったんだけど…あれは7.62mmだし…」
「64式と40式が7.62mm、89式と20式が5.56mmで30式が6.8mm。
防衛費の増額と調達費用の増額で 部隊への更新が遅れに遅れ、一国の軍が異例の4種類のアサルトライフルを同時 運用。
しかも弾は3種類で、40式一本にした時と 比べて運用費用は3倍と…明らかに無駄金だった訳だが…」
「でも日本政府が自国の軍事力を落とすには非常に有効な手よ。
防衛費の名目なら増税もし易いし…それでクラウドは どの銃にするの?」
「う~ん 難しいな…共通弾薬の5.56mmの20式の方が良いんだろうけど…最新の防弾装備を着られたら1発じゃ抜けないし…威力が高い7.62mmの方が良いんだけど、64式を使うのも安定性的にな…」
64式の問題点は パーツの多さとパーツが脱落する事…その為、ビニールテープでぐるぐる巻きにする必要がある。
本来ならとっくの昔に退役していたはずだが、防弾性能の向上と全身義体の強化兵士の登場により 5.56mm…6.8mmでは 威力不足になり、7.62mmを使える40式の配備が完了するまで 64式を使っている訳だ…この分だと まだまだ現役だろう。
「ちょっと良いか?7.62mm弾が対応している銃が欲しいんだよな」
酒を飲んでいたソ連人が話しかけて来る。
「ああ…まさか40式が見つかったのか?」
あれは 配備からまだ10年しか経っていない最新式の銃だ。
部隊に完全に行き渡るには 後20年は掛かると発表していた。
「いや…ただ、もっと凄い銃を見つけた…ただ俺達じゃ扱えない…よっと」
ソ連人が重そうに 持って来たのは F-2000の7.62mmのフル装備仕様。
総重量は 脅威の12kgで非常に重いが、下部には グレネードランチャー、上部には 不可視のレーザーを照射して距離を測定し、弾道予測 地点をホロサイトに表示してくれる電子スコープ付きのブルパップ銃だ。
「おっ…ドラムが落として行ったのか?」
「ああ…爆散した戦車の近くに落ちていた…撃墜されたドラムの物だろう。」
私は F-2000を片手で受け取り、ケーブルを引っ張り首の後ろにマグネットの端子を接続して銃を構える…すると銃の内部のデータから首から流れて来て 銃の現在の情報を受け取れる。
12㎏の重量と人には 扱い難い ブルパップ式…だが 人間を越えたドラムなら この扱いが難しい銃も 難無く扱え、どんな状態でも 一瞬で即死を取れるバケモノ銃へと変わる。
「うん…電子機器は 全部 生きてる…良いね…これにしよう」
私は 電源を切って7.62mm弾を指でパチパチとSTANAGマガジンに 入れて行く。
隣ではカレンが5.56mm用のSTANAGマガジンに5.56mm弾を入れようとするが、指の力が足りず中々入らない。
ので マガジンローダーとクリップを使って弾を入れ始める。
カレンは自衛隊の防弾チョッキにマガジンポーチを取り付け、マガジンを入れて行く…マガジンポーチに4本…20式に1本の5本で30×5の150発。
私も防弾チョッキを着て、7.62mmのマガジンをポーチに4本をダンプポーチに入れ、F-2000に1本の5本で20×5の100発…弾の数は減ってしまうが、そうそう 外す事はないし これで十分だ。
「さぁ今日は早めに寝よう…明日は日の出から出発だ。」
「了解~」
カレンは そう言い、アウトドアのショップからパクった寝袋を持ってテントに入って行った。
翌日
私達は バギーの荷台 テントを張って屋根を作り、寝泊りを出来るように改造…幌馬車の荷台の様になる。
「よっいっしょ」
カレンが5.56mm、7.62mmの弾薬箱を1ケースを積み込み、残るスペースの半分に食糧と飲料水を積み込む。
私の予備バッテリのスペースもあり、後は 寝袋2分位のスペースしかない。
とは言え これで必要な装備は全部 揃った…ラウス漁港までは十分に持つだろう…まぁ現地で食糧の補給を出来るかは これも博打になるんだが…。
「さあ 行こうか次は 200km先の北見市だ。」
「大体10時間…2日って所ね…え~と今日は 39号線で進んで…ここ…銀河の滝で キャンプ。
この滝を使って発電して酸水素とクラウドの充電をする。」
「分かった…ちゃんと滝があると良いんだが…」
カレンはそう言うと荷台に乗り込み、私達は北見市へと向かった。