表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/4

03 (管理者がいない軍隊)

 ガクン!!

「おっと…」

 クラウドはバギーのハンドルをしっかりと握り、真っすぐ進むようにする。

 道路の状況はとても悪くガタガタの道路でロクに整備されていない。

 クラウド()が運転するバギーの荷台には カレンと荷物を乗っており、サスペンションがあるとは言え、ケツが痛くなりそうだ。

「それにしても…路面がガタガタ…これじゃあ ロクにスピードが出せないな。」

「ここら辺は 何処もそう…道路の補修工事の予算が足りなくて、放置されている所も多いの」

「国民負担率が70%の重税国家なのに なんで道路が直せないんだか…」

「今の日本の主要産業は 働かずに仕事を下請けに押し付けて マージンを取る 中抜きだからね。

 実際、あんなに 予算を組んでいるのに 現場の労働者は 赤字ギリギリで働いてたし…。」

「本当に 国が消滅する最後まで 変らなかったんだから この国は…。

 上手く復興が出来ると良いけど…えっと…そろそろ旭川市だな。」

 パパパッ…。

「この音?」

「ああ…ライフル弾だ…しかも3発…ソ連から送られて来た密輸銃か?

 あっ私達…銃を持ってないんだよな…」

「いいえ…多分違う これは…旭川駐屯地の連中じゃないかしら?」

「今の世の中…一番武器と食糧を持っているのは自衛隊だからな…技術力もあるし、ここでの支配者か…。

 バギーを隠して徒歩に切り替えよう…偵察だ。」

 私がカレンにそう言い、歩きだした。


 旭川市

「このショッピングモールは 我々 旭川駐屯地の自衛隊が徴発している。

 抵抗する場合、敵対行動と判断して射殺(強制的に無力化)する!」

 現場では 自衛隊と住民達の中で戦闘に発展している。

 周辺のガソリンスタンド…ショッピングモール…コンビニなどの施設を占拠しており、その他の施設も拠点として自衛隊員らが警備をしている。

 重要施設の付近には 戦車やら装甲車が置かれている。

「おりやあああ!!」

 斧で武装した無謀な住民達が襲い掛かると アサルトライフルを向けて発砲し、射殺する。

 彼らの持っている銃は様々で、64式、86式、20式、30式の4種類のアサルトライフルだ。

 ただ流石に攻撃意志を見せない住民を虐殺する事は無い位には 良識が残っているが、本当に容赦がない。

「あ~本当に厄介だな…」

 私は隠れながら言う。

「自衛隊は 外国人だらけの日本では珍しく 純血の日本人が多い組織。

 まぁ幹部の連中は 元中国人なんだけど…統率は ちゃんと取れているみたいね」

 カレンが自衛隊の動きを見ながら言う。

「自衛隊は発砲しない、敵に殺されるが基本なのに…同じ日本人は殺すんだから…」

「彼らにとって 日本人は もう日本人じゃないからね…」

 今の日本の人口の6割は元中国人の日本人であり、純血の日本人は少子化もあり1割位しかいない。

 人口と票数の問題で純血の日本人が政治家になる事は まず出来なく、政府や自衛隊は 中国とアメリカの制御下にある…未だとロクに 日本語も通じない…実質 中国だ。

「さて、カレン…この状況…如何(どう)する?」

「殺された側の住民と話そう…クラウド 中国語は使える?

 アタシ、日本語と英語、トニー王国語にエスペラント語と4言語 話せるけど、中国語は通訳アプリを使ってたから…。」

 カレンは スマホを見せるが、電源が付いていない…電磁パルスで やられたんだな…。

「一応 地球の言語は 一通り インストールしているから使った事は無いけど多分使える。

 ただ日常的に使っている訳じゃないから 細かなニュアンスは表現出来ないぞ。」

「それで十分…行きましょう」


 バギーを手で押しながら 市街地から少し離れた所にある彼らのテントに向かう。

 住民達は 木を入れて 燃やされているドラム缶で 暖を取っている。

 話している内容から言語を推測…あ~ロシア語だ。

「如何やらロシア語を使っている見たいだ。」

「ロシア?…あ~ソ連の事?」

「そう…結構 昔になるが ロシアは戦争に敗れて、ソビエトに戻った。

 確か 今は ソ連軍の軍事力の低下で 領地内の色々な民族が勝手に独立戦争を仕掛けて、大規模な内戦状態に なっているはず…今年で20年目だったか。」

樺太(サハリン)から逃げてきたソ連人?」

「さあな?Добрый вечер... Меня зовут Клауд... Я хочу знать, почему вы, ребята, ссоритесь.(ごきげんよう…私の名前はクラウド…キミ達が何故戦っているのか知りたい。)」

 私は住民に聞いてみる。

「おまえ ロシア語を使えるのか…あっ なんだオートマタか…。

 マスターは?」

「こっち…一応通訳を頼まれている…自衛隊と戦闘をしていた見たいだが…事情を聞かせて貰えるか?」

「ああ…自衛隊は勝手にここいら一体を占領して、食糧を独占しているんだ。

 我々じゃ全く敵わない。」

「相手の戦力は 十分に理解しているだろうに…戦車に機関銃座まで持ち込まれている…勝ち目はない…それでも戦うのは何故だ?」

「我々は 食糧も残り僅かで 外でキャンプするには 防寒具も不十分だ…この冬は確実に越せない。

 しかも 車で他の場所に移動しようにも ガソリンスタンドを占拠されているから給油も出来ないんだ。

 向こうは 備蓄のレーションも含めれば 後 数年は持つほどの食糧を持っているはず…生き残るには 彼らから食糧を奪うしかない。」

「事情は理解した…だが あまりにも無謀…勝算の欠片もない……と言う事な訳だが、カレン…キミは如何(どう)する?」

 ロシア語を要約して日本語でカレンに伝える。

「見捨てて逃げるのが一番…こんな素人で しかも少数…正規軍と戦うには あまりにも心持たない。

 正直、食糧と銃弾は欲しいんだけど…銃弾を直接貰いそうで…」

 確かに このまま正義を振りかざして突撃しても 蜂の巣になりそうだ。

「私も同感…助けたい事には助けたいんだけど、今の状況だと自衛官を皆殺しにする位しか方法がない。

 明らかに こっちの住人より多くの死者が出る。

 彼らを無事に避難させた方が、リスクが少ないかな」

「そうね…となると下がらさせる場所は…ここ上富良野 演習場。

 ここには 自衛官が いなかった…で、この近くの上富良野 駐屯地の物資も既に運び込まれていて無くなっている。

 まぁ駐屯地の規模的に 旭川市の方が都合が良かったのでしょうね…。」

「となると上富良野 駐屯地の宿舎は使えるか?」

「電気は止まっているし、エアコンも無い状態よ」

「でも、雨風は防げる…このままテントで冬を越させるより まだ希望がある。」

「………そうね…あそこには 回収しきれない程の畑があるし、収獲の手伝いをさせれば…」

「後はあの中に技術者がいれば良いんだがな…おい…キミ達の中に農業や工業に精通している人はいるか?」

「ああ…爆撃で焼かれちまったが オレの実家は農家だ。」「私は銃の製造工場に勤めていた…工作機械が残っていれば、何か作れるかも しれない。」

「よし、ここから30km南……あ~歩いて2日程度か?

 この位置に上富良野 駐屯地を襲え、物資は既に運ばれているとの事だが、宿舎はある…これで 少なくとも 雪に埋もれずに済む。

 後、近くの畑の収穫時期で 重機無しでは 収獲が不可能な程の量がある…人手は必要になるだろう…交渉次第では食料を分けて貰えるかもしれない。

 ただ、この周辺には無法者もいる…気を付けろ…私達がしてやれるのは これ位か?」

「助かる…行ってみるよ…キミ達は?」

「私達は 北見市を目指している。

 そこで補給が出来れば良いのだが…。」

「そうか、私達は明日の朝に出る…それまでゆっくりして行くと良い。」

「了解…」

 私はそう答え、カレンは残り少ない貴重な食事を分けて貰い、テントで眠るのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ