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02 (千島列島を目指して)

 カレンから今の村の状況を聞きつつ、夜になり、私は12時間の充電に入る。

 通常の家庭用電源でも 3時間程で満タンになるのだが、ここの電力は 出力が小さく、周波数も安定していないので電気の質が悪い。

 なので低出力状態でゆっくりと充電を行う事で、バッテリーへのダメージを最小限に抑える…ただ それだけ時間を掛けても 全体の6分の1も 充電 出来ていないのだが…。

「この分だと満タンには 1週間は掛かるかな。」

 私のバッテリーは 3つあり、1つは頭の中の機械脳 ブレインキューブの非常バッテリー。

 残りの2つは メインとサブのバッテリーで、現在、3つのバッテリーの中身は ほぼ空だ。

 現在 最低限の省電力モードでも2日も持たないだろう。


 翌日の昼…。

 私とカレンは工具を持ち、車の調達に向かう…狙うは車屋だ。

「なんで車屋?そこら辺の駐車場にも いっぱいあるのに…。」

「アレらは 全部ガソリン車だ…部品取りには使えるが、燃料も抜かれているし、ガソリンが枯渇している 今の状態では使えない。」

「なら?」

「水素スタンドが無くて まだ普及していないが、高所得者向けの水素ロータリーエンジン車がある。」

「なるほど…そこからエンジンを抜くのね。

 日本で開発していたんだ…」

「そう…それじゃあ 狙われない内に行こう」

「ええ…。」


 ガシャァン…。

 入り口の窓ガラスのドアを破壊し、中に入る。

「人は いないみたいね。」

「じゃあ、とっと仕事を終わらせよう。」

 カレンは素早く車のボンネットを開けて 器用にパーツを外して行く。

「上手い物だな…」

「よし抜けた…予備パーツも必要よね…」

 必要な部品を取って行く…必要なのはエンジン一式とタイヤ、サスペンション…後は ガスボンベ型の燃料タンク位だ。

 それらを外のリアカーに積んで行く。

「後はバイクだけね…駐車場に燃料が抜けれて放置された 高いのが止まってた。」

「おおっ良いね…じゃあ それを使おう」


 中型のバイクをパクって来たら、ガソリンエンジンを外して ロータリーエンジンに換装…当然 サイズが合わないので、多少不格好になる。

 で、後ろにタイヤの交換とサスを取り付けた荷台を接続。

「後は燃料の酸水素だな…。」

「ええ…引っ張って帰りましょう。」

 私達はパーツを荷台に積み込んで、バイクを押して山へと帰って行く。



 トニー王国の主な推進剤は 酸素と水素の混合気体、酸水素だ。

 トニー王国の車や戦闘機、果ては宇宙船まで全部、酸素と水素を使って動いている。

 なのだが、水素は液体水素の状態でないと運搬効率が悪く、総合的に考えるとガソリン以下の性能になってしまう…。

 ただ ガソリンが入手が出来ない今の状況なら 酸水素車は 非常に有効だ。

「待ちな…誰の許可を得て、盗み出しているんだ?」

 男の声に私は振り向く。

「あの車屋のオーナーでしょうか?」

「ああ…あの辺りは オレ達のテリトリーでな…」

「とう言う事は 正式なオーナーじゃないのですね」

「うっせーこっちは丁度優秀なエンジニアが欲しかった所だ。

 そこの嬢ちゃんを寄こしな…鉄クズ…」

「いや、私の主成分は あなた方と同じで炭素「うっせーな ごちゃごちゃ言うんじゃね~よ…殺されてーのか?」

「はぁ…カレン…彼らに付いて行く気は?」

「全然、アイツらに捕まったらエンジニアだけじゃ済まない…アタシの貞操の危機よ」

「そりゃあ困るな…よし、いっちょ やるか」

 私は男達に向かって構える。

「はっ?…この人数で相手しようってのか?

 てかオートマタの分際で人間様を傷つける気か?」

 周辺には12人程いる…こっちは2人…だが 実質 1人戦力外の私1人だ。

自動人形(オートマタ)か…その呼び方は嫌いだな。

 個人的にはエルフって呼ばれるのが好きなんだが…」

「バラバラにして インゴットにしてやる。」

「だから…インゴットには出来ないって…おっと…はい はい」

 私は 次々と男達の攻撃を回避して行く。

「なんで当たらねぇんだ。」

「軌道が単純 過ぎるからだよ…稲妻の手(ライジングハンド)!!」

「あがっ…」

 男は私の手に触れた瞬間に身体が痺れて 地面に倒れる。

「くっそ…如何なって」

「だから ライジングハンドだって…はい!!」

「あがっ…」「なんでぇ」「ひでぶ」

 次々と男達は倒れ、ピクピクと痙攣して行く。

「手の平に内蔵した スタンガンか…」

「あ~何でネタバレするのかね…こっちの方がカッコイイだろうに…はい、おやすみ…と」

 私は1分程度で男達を片付ける。

「クラウド…アンタ本当に凄いのね…大丈夫?」

「手から150万ボルトの電流を1瞬だけ当てただけだから…。

 ただ これ…電気 喰うんだよな…」

「いや、クラウドの事なんだけど…。

 まぁいいや…じゃあ、帰ったら また充電しないとね。」

「そうだな…じゃあ戻ろうか…。」

 私達は地面に転がっている男達を放って山に向かうのだった。


 山に着いたら酸水素を作る…。

 酸水素自体の製造はとても簡単で、水を入れた圧力タンクに銅線を2本入れて電流を流せば良い…それで水を電気分解して生成されるのが酸水素だ。

 ただし電圧が低い為、電気分解の為に かなりの時間が掛かる。

 それでも自前で燃料が入手出来れば、この状況は かなり変わる。


 数日後

 調整を終えて3輪バギー型の荷台にカレンと水力発電機を乗せる。

「よっと…これで行けるわね…ごめんね…離れる事に なっちゃって…」

「いいんじゃ、いいんじゃ…固定種の種も見つかったしなぁ…行ってくると良い。」

「うん、出来るだけ早く帰るよ…それまで生き延びて…出して」

 カレンがそう言うと私は 足のレバーでギアを入れ、アクセルをひねって加速をする。」


「で、良く当ては?」

 山道を降り 国道に出た所で、バギーを止めて 私が後ろに乗っているカレンに聞く。

「う~ん、色々と考えたんだけど アタシが拠点にするなら ここ 熊越の滝 周辺」

 カレンが電子では無く、今だと非常に希少な紙媒体で ボロボロのアナログ地図を見ながら言う。

「狙いはラウス港か?」

「そう…羅臼漁港(らうすぎょこう)…ここの熊越の滝は 落差15mで水力発電には最適なポイント…近くに温泉もあるらしいから地熱発電も期待出来るわね。

 千島列島を占領しているトニー王国の潜水艦が 停泊しているなら ここにいる可能性一番高いわ。

 現在位置が 活火山の十勝岳の(ふもと)の自衛隊の上富良野演習場 付近…そこから旭川市、北見市、斜里町、標津町、船見町で羅臼漁港。

 合計走行時間は 約12時間…ただ燃料の問題と充電で5日は掛かるかしら…。

 今日は 旭川市まで…」

「ただ…まだ秋だが 凍らないかが心配だな…異常気象や核爆発の影響を受けていないと良いんだけど…」

「それは 行ってみないと 分からないからね…それじゃあ行きましょう」

 カレンがそう言うと私はバイクを走らせて最初の目的地、旭川市まで行くのだった。

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