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01 (文明崩壊)

 2050年…世界は核の炎に包まれた!!

 海は蒸発し、地は焼かれ、核で舞い上がった灰が地球を覆い尽くし、太陽からの日光を遮る薄暗い世界…。

 成層圏での核爆発は 強力な電磁パルスを発生させ、EMP対策をしていない民間の電子機器が 次々と破壊されて行き、各国の政府関係者も核の炎に焼かれて 大部分が死滅した。

 だが…それでも人類は しぶとく意地汚く 生き続けていた。


 核戦争 終結後、1ヵ月後の日本…北海道。

 電磁パルスで墜落したティルトウィング機、エアトラを捨てた、クラウド()は この1ヵ月程、電気を求めて歩ている。

 世界中で数万発の核ミサイルが一斉に放たれたが、迎撃能力も凄まじく 核ミサイルの おおよそ99%が空で迎撃…爆散した。

 だが、残りの1%でも人類には壊滅的な被害を出していた。

 この日本は政治の問題で 核ミサイル迎撃システムを配備する事が出来ず、世界中で一番 被害が多いと予想される。

 私の身体は 電磁パルスのせいで調子が悪く、バッテリーの残りも少ない…一般の家庭用電源で十分に充電出来るはずなのに発電所から電気が来ていないのか充電出来る場所がない。

「ヒヤッハー!!」

 大型道路では轟音(ごうおん)を鳴り響かせた 原付のカブにリアカーと取り付けたバイクに乗る 斧、鉈、ハンマーに金属バットなどで武装した暴漢共が、逃げていた 車高が低い 黒い高級車を止め、中から黒いスーツ姿の男を引き釣り出す。

「強盗か?金なら山ほどある…だから助けてくれ!!」

「金?そんなの口座に入っている ただの数字だろ…ネットも使えない 今の世の中で そんな物に一体なんの価値がある。

 今の時代、必要なのは 食糧、燃料…女だ。」

「いやああああああ」

「そんな…妻だけは…」

「そして現場仕事が出来ない管理者(役立たず)は死ね!!」

 スーツ姿の男は頭をハンマーと金属バットで潰され、妻は拘束されて荷台に積まれる。

 最近では 見慣れた光景で、私も もう庇う気も電気もない。

 高所得者の税金負担が 世界で一番安い日本(この国)は、自国、海外からの金持ちが続々と増え、今では 世界第2位の超金持ち国家だ。

 だが、一般人の国民負担率が脅威の70%の世界一の重税で 明らかに回収した税金に見合わない低福祉の日本は、低所得者の生活水準は発展途上国並みとなっており、日本が アフリカに日本の食糧、経済支援をし、アフリカが ユニセフを通じて日本の低所得者層に食糧支援をしているのが 今の状況だ。

 まぁそれも、核戦争が起きた今では無意味…。

 株などの まがい物の利益で生活していた不労所得者の金持ち達が、低賃金で奴隷の様に働かされていた 無数の低所得者に殺されている状態だ…高所得者は金を生み出す事は出来るが、物を生み出す事は出来ない。


「でんき…でんきを~」

 あ~もう意識が落ちる…永遠の命を持っている私でも インフラが無い所では生きられない…ここまでか…長い人生だった。

 身体のバランスが崩れ、膝からアスファルトの歩道に叩きつけられ 私は永遠に眠りに付く事となった。


「おっ…状態も良い…まだ治せる…お宝ゲット!!うんしょ…」

 少女は人型の重い身体をリアカーに乗せて、最近 出来たばかりの村へと向かうのだった。


 テントの中。

「電力供給開始…セーフモードで起動。

 よし、Bonan matenon, vi estas mia aŭtomato.(おはよう、あなたは アタシのオートマタ)

 Mi estos via posedanto ekde hodiaŭ Karen... Plaĉas renkonti vin.(私は今日からあなたの所有者になるカレン…よろしく。)」

 エスペラント語を喋る少女の声が聞こえる…聴覚が起動した見たいだ。

 そう認識した瞬間 次々と機能が復帰して行き、意識も はっきりと して来る。

「ああ~助かったのか…手足が動かない。」

 クラウド()は 動かせる首だけを動かして言う。

「あっ日本語が使えるのね。

 セーフモードにしてあるから…暴れられても困るし…。」

「そうか…ここは?」

 周りを見る限り ここはテントの中、私は 家庭用の折り畳みベットに寝かされ、眩しい位に私に照らされている 机用の電気スタンド…即席の手術室と言った所か?

 近くには 古びたコンピューターがあり、彼女は こちらのバイタルを確認している…ここには コンピューターや照明を維持出来るだけの電力を作れているのか。

「へぇ…随分と良いパーツ 積んでいるね…これは 期待出来そう。

 マスター登録をお願い…あなたの所有者が見つかるまで あなたを制御する人間が必要よ」

 ヒューマノイドは 人の生活を支える為の道具だ。

 なので、人の見た目をしているが 人では無く、マスターに仕える必要がある。

「仕方がないか…マスター3に あなたを登録、マスター1、マスター2は あなたより上の命令権を持っています。

 また、マスター1、マスター2との合流するまでの間、一時的に私の所有権をあなたに譲渡します。

 私が起こした あらゆる責任は所有者である あなたが追う事になります。

 同意をするなら 誓いを…。」

「アタシ、カレンは あなたの所有者となり、全責任を負う事を誓います。」

「声紋の登録…及び、音声データの保存を完了しました。

 緊急時には、このデータは裁判所に送られます。

 はぁ…よろしくカレン」

「よろしく…えーと名前は?」

「クラウドだ…命名権はカレンにある…変えるか?」

「いいえ…そのままで よろしくクラウド…。

 今、デバイスを再起動しているから…そうすれば 動けるようになるわ。」

「了解…四肢のデバイスの接続を確認…動ける。」

 私は首に付いている磁石のケーブルを引き抜き、床に降りる。

「悪いね…助かった…。」

「なっ…」

 私はカレンの前に立ち、強力なデコピンをお見舞いする。

「なんで…オートマタは 人に危害を加えられないはず。」

 カレンは額に手を当て涙目に なりながら言う。

「残念…マスター1は私、クラウドを登録している…つまり、自分の意志が最優先される。

 マスター1…つまり私と合流した為、マスター3との契約は終了。

 マスター1の命令により、マスター3の権限を はく奪…っと これで自由に慣れた。」

「じゃあ、何で アンタは 人に危害を加えられるのよ?」

「ロボット三原則か?

【第一条】

『ロボットは人類に危害を加えてはならない。

 また、その危険を看過することによって 人類に危害を及ぼしてはならない。』

【第二条】

『ロボットは人類に与えられた命令に服従しなければならない。

 ただし、与えられた命令が 第一条に反する場合は この限りでない。』

【第三条】

『ロボットは、前掲(ぜんてい)第一条および第二条に反するおそれのないかぎり 自己を守らなければならない。』

 だが 私は 自分をロボットでは無く、人類の1種類だと認識している。

 だから三原則を回避出来る。」

「そんな…無茶苦茶な…」

「さてと…ただ私を人類と定義すると言う事は 人の法に従わないと言う事。

 責任もマスターでは無く 自分で取らないといけない。」

「世界が崩壊した無法地帯のこの世界で?」

「そう、さて再起動(リブート)してくれた事だし、何か私に手伝える事は?」

「アタシの言う事を聞かないんじゃ?」

「命令は聞かない…だが恩はある…人は恩の貸し借りをする…つまり 助け合いをする生物だ。

 私を起したと言う事は 何かやって欲しい事があるはずだろう。」

「そう…こっちに来て…」

 テントの外に出ると そこは 木が無く ボロボロで使えなくなった太陽光パネルが不法投棄されている はげ山の中だった。

 核攻撃は 人口密集地に集中していたので過疎化した田舎には 経費の無駄だと考えられ、撃たれなかったのだろう。

 近くには 川があり、そこには 手作りの小型の水力発電施設が いくつも建てられ、黒い高効率バッテリー ナノカーボンバッテリーに繋がっている。

「小型の水力発電機か…懐かしいな…」

「こっちよ…」

 私はカレンに連れられて来たのは小さな畑だ。

「おっカレン…おおっ再起動(リブート)|出来た 見たいじゃな。

 このヒューマノイド(オートマタ)は?」

 80越えだと思われる爺さんが私を見て言う。

「クラウド…自分を人間だと思っている機械人形(オートマタ)…。

 アタシに恩を感じているけど、逆らう事も出来る。」

変異個体(アノマリー)かのう…まぁええ…これを見るのじゃ、種を植えているのじゃが 半年も経つのに 全然芽が出んのじゃ」

「農業経験者は?」

「いん…税金や安全基準の条件が厳しすぎて、日本の農家は 軒並み廃業していたんからな~。

 それでも 核戦争の前では 外国からの輸入で食糧には 不自由が無かったんじゃが…。」

「物流網が寸断されて、あらゆる物資が運ばれ無くなった。」

「そうじゃ…外国との貿易をした方が 大企業は儲かるからのう。」

「この種は 畑から採った2代目か?」

「そうじゃあ…輸入した種である1世代目をスーパーから盗んで植えたのじゃ。

 1世代目は出来たのじゃが2世代目は のう」

 爺さんから渡された種の袋のパッケージを見る。

「はぁ…これはターミネータ遺伝子入り…2世代目以降は発芽しないんだ。

 しかも特定の農薬を使わらないと うまく育たない品種。

 品種の特許保護の名目だったけど、その実態は毎年 種、農薬、肥料を買わさせるのが目的。

 この分だと 今の日本は 大幅な食糧危機になってるん じゃないか?」

「なんじゃと…では これからどうすれば?」

「川の魚は食べているんだろ…まずは そこから…。

 後は 日本の作物の固定種を手に入れる所かな。

 それも種子法を廃止してから どんどん日本の固有種が減っている訳 なんだけど…確か米…稲は 固定種が まだ残っていたはずだ。

 北海道なら田んぼかな…それなら 多少品種が変わっていても十分食べられるし、トラクターなんかのガソリンを使う機械が全滅しているはず だから望みは十分にある。。」

「稲か…今なら収獲が出来るか?」

「一応、核戦争で天候が 分かっているから断言は出来ないけど。

 さて、如何(どう) やって日本を復興させるか…。」

 私は考え込む。

「復興出来るのか?ネットも封じられて食糧も殆ど無いと言うのに…。」

「目指すのはトニー王国ね。

 あそこなら大部分の施設が残っているはず。」

 私の隣にいる カレンが言う。

「カレンは トニー王国に詳しいのか?」

「ええ…アタシは エクスマキナ教会製のギフテッドよ…エクスマキナ教会の大学を出たの。」

 ギフテッドとは 遺伝子操作をされて人工子宮で産まれた超優等生の事を言い、トニー王国製のギフテッドは 非常に質が良いと聞く。

「だから、そんなに身体が小さいのか?」

「ええ…今年で10歳よ…アタシは頭が良いけど、身体は子供。

 あなたが いなければトニー王国まで辿り着けない。

 クラウドも半年ごとのメンテを受けないと、後 数年も持たないはず…利害は一致しているわね。」

「ああ…まずは車の入手からだな。」

 私はカレンにそう言うのだった。

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