赤ちゃんは世界にハッスルする
車で信号待ちをしていると、抱っこ紐に赤ちゃんを乗せた若いママさんが歩道をやって来た
ママさんも赤ちゃんも同じ進行方向を向いて、2人とも幸せそうな笑顔
抱っこ紐から出した手足を、赤ちゃんが全力でぶんぶん振っている
産んでくれてありがちょ♪
お出かけさせてくれてありがちょ♪
ちょ♪ちょ♪ちょ♪
みたいに
あたしは運転席のガラス越しにそれを見ながら、思わず顔が綻んでしまう
あまりに楽しそうな赤ちゃんの手足の動きに
あまりに得意そうな赤ちゃんの笑顔に
ママさんは赤ちゃんばかり見ながら笑い、あたしが見ていることには気づかなかった
赤ちゃんがこっちを見たら手を振ろうと思ったけど
赤ちゃんもそれどころじゃなくて
あたし1人どころじゃなくて
楽しい世界全部を見ていたので
彼らにとってどうでもいいあたしは幸せのお裾分けをしてもらっただけで、2人とすれ違って行った
自分の赤ちゃん時代を思い出す
あたしもあんなに楽しそうに笑っていたのだろうか
あたしは笑顔で映った写真がない
どこかにはあるのだろうが、見た覚えがない
どの写真も今にも泣きそうか、途方に暮れているかである
でも笑顔って伝染する
幸せそうな赤ちゃんを見ていると、世界は楽しいところなんだって思えてくる
車のルームミラーをふと見ると、自分の顔が笑っていた
明日はいいことあるのかな
なくてもせめて
ハッスルしようかな
あたしの世界よ、ありがちょ♪
存在させてくれて、ありがちょ♪
ちょ♪ ちょ♪ ちょ♪
もう二度と会うことはないだろう母子に、元気をもらった