あなた、だれ?
私は、お父さんたちの後をこっそりとつけていき、ドアの外から盗み聞きしていたのだがこれがなかなか面白い。
「ロジャー、なんのようだ。」
弟はロジャーというらしい。
「やあ兄さん久しぶりだね。」
随分と生意気そうな弟だ。こいつなんかキライ。
「用件はなんだ。言ったらさっさと帰れ。」
「今日もいい天気だ。兄さんも相変わらずせっかちだねぇ。」
話が嚙み合っていないし、弟は嫌味を言い続ける。お父さんはキレるのを我慢しているようだった。そこで、足音が聞こえてきた。ヤバい!この足音はバートさんだ。ど、どうしよう。ここは廊下で隠れられる所なんてない。バートさんは怒るとおっかないからなあ。そんなことを考えていると頭の中で声が響いた。な、なに?
「聞こえるか?説明は後だ!いいか?俺の言うことよく聞け。体全体に集中力をむけて念じろ。『クリア』って。わかったか?」
誰あんた。ちょっと、私の頭から離れろー!
頭を縦横にブンブン振り回していると
「いいからさっさとやれ!」
怒鳴られた。
うぎゃー。怖い怖い。怒鳴られ慣れてない元ニートの私はとりあえずやることにした。体全体に集中力を…。すると、体中に何かがいきわたった感じがした。そして、唱えた。
『クリア』
すると、足からスッと自分の体が消えてった。いや、消えたんじゃなくて透明になったのか。もしかして、魔法?体が全部透明になったところでビートさんが来た。
「お嬢様!ってあれ?」
そう言って通り過ぎて行った。やっぱり自分は透明になったんだ。それはなぜか。魔法を使ったから?まあ異世界だしそういうことが出来ても別におかしくない。そう結論がでたと同時に私は興奮した。魔法を私も使ったんだ!夢じゃない!夢じゃないよ!そこに水を差すように頭の中で声が聞こえた。
「俺のこと忘れてないか?」
うーん忘れてた。君、誰?第一なんで私の頭の中に声が聞こえるの?幻聴?きっとそうだよね!うん、そうだ!
「違う!」
え、じゃああなた誰?ちょっと無理なんですけど・・・。ヒトの頭の中で勝手に・・・。
また頭ブンブン振って追い出そうとする。
「んなことしても追い出せないから、とりあえず話を聞いてくれ!」