魔法少女プリQ
「るんるんパワー全開!ミラクルハッピーレインボー!」
プリQブルーの叫びと共に虹色のカーテンが発生し、アンハッピーの怪人と戦闘員ドンヨリンたちを分断した。
「やったねブルー、これで邪魔なドンヨリンたちはこっちにこれないよ」
「あとはあなただけよ。怪人タンスの角!」
「正義の力であなたを元のタンスに戻してあげるわ!」
そう言って赤と黄色と青の魔法少女は怪人タンスの角を取り囲んだ。
戻してあげる、と言っているが、自我を得たタンスが無機物にもどる事を望んでいるかは不明である。
さて、ここは観光客の多い有名な神社の境内ではあるが安心してほしい。
お使い妖精が発生させた幸せ結界により、この場にいた生命体は結界の力によってはじき出され、新たな生命体が入って来ることも出来ないため市民には被害は出ない、更に音も遮断されるので騒音被害も出ないのだ。
まさにご都合主義全開!
まあこの怪人や戦闘員は市民の気持ちをどんよりさせるだけで、逃げる相手を追いかけることすらしないから結界の有無は関係ないかもしれない。
「イエロー、ブルー、力を合わせるのよ」
レッドの言葉に二人は天にハッピーロットを掲げる。
その瞬間、結界の外で・・・
「撃て!」
ダッダッダッ・・・
戦闘員ドンヨリンたちが迷彩服の集団から機関銃の斉射を受け次々と消滅していく。
ドンヨリンは筋力は人間の数十倍であるが、所詮は素手で戦う近接戦闘しか出来ない。
結界の外からの飛び道具での攻撃になすすべもなく全滅した。
「装てんよし、後方よし、準備よし、小隊長!無反動砲発射準備よし」
そして怪人には歩兵携行の対戦車砲が照準された。
「くそっ!民間人が邪魔で撃てん」
小隊長は伏せた状態で結界の中を見ながら忌々しげに舌打ちした。
民間人とは当然プリQたちのことである。
怪人は岩をも片手で持ち上げる怪力だが、対戦車榴弾の敵ではない。
そんな状況にプリQたちは気付かない。
「「「はぴはぴハッピー!太陽の赤、光の黄色、お空の青、降り注げハッピーレインボーサンシャイン!」」」
プリQはハッピーロットを振り下ろした。
光はともかく太陽や空が地上に降り注いだら一大事だと突っ込むものはこの場にはいなかった。
怪人を虹色の光が包み込む。
「グギャー!」
怪人タンスの角は一瞬苦しげな表情?を浮かべたが、気勢を上げて虹色の光を吹き飛ばした」
「ハッピーレインボーサンシャインが効かないなんて」
驚愕の表情を浮かべるプリQたち。
そして、
「第二小隊長、怪人を狙撃できるか?」
「民間人が近すぎます。三方向から取り囲んでいるので、彼女らが少しでも動いた場合や対物ライフルが怪人を貫通した場合民間人に当たる可能性があります」
大日本帝国の民間人保護法は厳しいのだ。
公務員が故意に民間人を殺すと全財産は没収され本人は死刑、家族は路上生活者になってしまう。
「くそがっ!」
第二小隊長の隣で特殊作戦隊の第三中隊長は拳を地面に叩きつけた。
安心してほしい、下は軟らかい土である。
再度言っておくがお使い妖精の結界で自衛軍の隊員は結界の中には入れないし、声を届けることも出来ない。
そんな状況の中、プリQたちの側にお使いマスコットのハッピーが現れた。
「大丈夫だっぴー、妖精王から託されていた力を解放するっぴー」
キラキラの星がプリQたちに降り注いだ。
そんな力があるなら最初から与えておけよ、と誰しも思うだろうが結界内の会話は外には聞こえない。
「力が湧き上がってくるわ!」
強大な力を手に入れたプリQは新たな必殺技、ハッピースターライトサンシャインフィナーレにより怪人タンスの角を浄化して元の桐だんすに戻した。
その瞬間、桐だんすの上に黒タイツをまとった手が四本ある女が現れた。
「くそっプリQめ!今度こそ勝てると思ったのに」
その時結界の外では、
「よし!いけます」
この事件の重要参考人?である女?は桐だんすの上に立っているため、ぷりQたちとは高低差があった。
腕が四本ある女は国民登録簿に載っていないので殺しても良いが、情報を得るためになるべく殺さず捕らえたい。
女の足は民間人の頭が邪魔で狙えないが、腕なら大丈夫だ。
狙撃手たちが引き金を引こうとした瞬間
「フユンカイ!あなたもそろそろ諦めてハッピーになっちゃいなさい」
プリQレッドがハッピーロットを女幹部に突きつけて叫び、三人一斉に飛びかかった。
「ハッピーレインボーパーンチ!」
狙撃手たちは間一髪で引き金の指を止めることが出来た。
やはり動き回る民間人がいる状況では狙撃は難しい。
狙撃手たちはいらだちながら舌打ちした。
女幹部は飛びかかってくるプリQたちに、覚えてなさい!、と定番の捨て台詞を吐いて空間の闇に消えた。
そして目標を失ったプリQたちは桐だんすの上で衝突し、ぷぎゃっと声を上げてそのまま落下した。
「逃げられちゃったね」
「大丈夫よ。今度会ったらフユンカイさんもハピハピハッピーしてあげるんだから」
「うん、次こそは頑張ろうね」
プリQ三人はニコッと笑い合う。
当然これまでの会話は結界の外には聞こえていない。
「くそが!情報源を捕らえるチャンスを潰しておきながら、あいつらはなにヘラヘラ笑ってやがる。なんであんな奴らが国民たちには人気なんだ」
テレビや新聞では迷彩服に汚れた顔の男たちよりミニスカでかわいい高校生くらいの女性の方が受けが良い。
「あいつらのせいで記者会見でマスコミに役立たずと言われ、あいつらの追っかけに妻や娘が暴言を吐かれたり、そのせいで離婚の危機だというのにヘラヘラ笑いやがって・・・」
「中、中隊長、抑えてください・・・」
「・・・おい、おまえの対物ライフルをよこせ」
「ど、どうするんですか?もう敵はいませんよ」
「ハッハッハ、決まってるじゃないか。この状況で笑っているあいつらは悪魔に違いない。わけの分からん方法で逃げられる前に足を潰せば捕まえられるだろう。大丈夫だ、三匹もいるんだから足を吹き飛ばしても一匹ぐらい生き残る。分かったらさっさとよこせ」
特殊作戦隊の第三中隊長は狂気の笑みを浮かべながら対物ライフルに手をかけた。
「だめです」
「命令だ!よこせ」
「だめです。この状況で渡したら自分も罪に問われるじゃないですか。やるなら腰の拳銃で勝手にやってください」
「拳銃でとどくわけないだろうが。忌々しい壁め」
結界の半径は百メートル、無駄に広かった。
そうこうしているうちに空に光の輪っかが現れた。
プリQたちはいつもその輪っかをくぐって姿を消すのだ。
「誰でも良い奴らを撃て・・・撃たんか!」
「あれは民間人です」
特殊作戦隊第三中隊長は心の病で自衛軍中央病院に入院させられた。
数日後・・・
公共の掲示板に貼られたプリQの写真を見つめる三人の小学一年生くらいの女の子たちがいた。
「わっー、私たちのポスターが貼ってあるよ。私たちアイドルみたい」
「そうだよ、私たち世界を守るプリQだもん」
「アイちゃんマイちゃん、お外でプリQだってばれるようなこと言っちゃだめだよ。ハッピーに言われたでしょ」
「「あ、ごめんなさい」」
少女たちはポスター下に描かれていた文字に気付かなかった・・・いや小学一年生では漢字が読めなかった。
<情報求む>
罪状:公務執行妨害、器物破損その他数件
情報提供料:最大一億円
このポスターは至る所に貼られている。
しかしながら未だに有力な情報は得られていない。
プリQは魔法の力で小学一年生が十七歳くらいの女性に変身しているので当然だろう。
プリQと自衛軍の戦いはまだまだ続く。
あれ・・・?