第一話 近況報告とこの世界。
「し、死だぁ?」
リンは、目の前に現れた賞金稼ぎに聞き返した。
「そ、まぁ、どうせお前は死刑だから、寿命が少し伸びるか否かだけどな。」
賞金稼ぎ、黒雅は言う。その口調は、やはりリンを馬鹿にしている様に感じる。
「はぁ?」
リンは、その言葉に肩を震わせている。
「お前!さっきから黙って聞いてやりゃぁ自分が勝つこと前提でずっと話続けやがって!ふざけんな!
俺が今まで何人もの賞金稼ぎを頃私的げてきたと思ってんだ!そういうことは、」
と、袖口に仕込んでいたナイフを構え突進してくる。」
「勝ってから言いやが…………………ぐぁ⁉」
威勢よく突っ込んでいった廃位が、黒雅が無造作に右腕を振り上げると、体が斜め後ろに引っ張られ、宙ぶらりんにされる。
「な…………おま………これ…………。」
己の首を絞めつけている感触や、自分を見下ろす黒ずくめの死神が振り上げている手の五指から伸びるキラリと輝く物から何が自分を浮かせているかは分かる。
糸だ。こいつは糸を操っているんだ。
無意識のうちに黒衣の死神のほうを見る。すると、気付いたのか、ニヤリ、と、死神が笑ったような気がした。
「気付いたか。概ね、お前の予想通りだよ。俺の固有能力は『操糸』糸の材質、長さだけを操るだけじゃなく、どう動かすかまで自由自在だ。」
と、得意げに語る。
「さてと、今、お前の運命は決定した。今、ここで死ぬ。」
死刑を宣告するように言葉を発する。
「や…………止め……………。」
「バラバラ死体の刑。」
グッと右手を握った。その瞬間、ボタボタと、リンだった物が次々と音を立てて落ちてくる。ゴロリ、と、転がってきたリンの頚を持ち上げると、丁寧に布で包む。
仮面に手を掛け、外す。すると、すれ違った女子が、思わず振り返ってしまうような均整の取れた顔が露わになる。仮面は、半分に折りたためる構造になっており、コートのポケットにしまえる。
バサリと、フードを外す。すると、右が黒で左が緑という、特徴的な髪が露わになる。
コートのポケットをガサゴソとあさり、煙草を出す。一本加えると、人差し指の先から炎を出し、煙草に火をつける。
そう、この世界では魔法が使える。使えて当たり前だ。なんせ『魔力』は、科学的に証明されてんだから。それによって人類は、『魔法文明』を確立した。例えば、テレビなどは、コンセントに繋がずとも、一瞬ちょっと強い電気魔法をコンセントに流すだけで、4時間着け続けていられる。
そんな文明が確立されて20年後、人間が、魔法文明に十二分に馴染んだころ、『世界政府』と名乗る異形の種族たちが、異界へ続くポータルを通し、人界に来た。
「魔法文明を確立したことにより、我々と共に歩む権利を手に入れた。さぁ、共に、輝かしい未来を
歩もう!」
第三十六代目世界政府最高責任者トトクスと、名乗る蜥蜴人族の男は、新興宗教の勧誘みたいなことを言って世界政府に人界を招いた。
何のデメリットもないと考えた旧国連は、あっさりと世界政府に加盟した。
最初こそ、異界の住人との交流や、意外と安い異界旅行、異界の面白い食べ物や独特の工芸品などを楽しんだ人間たちだったが、思わぬ落とし穴があった。
人界人は、弱いということだ。頼もしいパワーの持ち主の小柄緑人族などや、足の速さや鼻が利くといった様々なそれぞれ特有の力を持つ獣人族、明確な弱点や、欠点があるが、トリッキーな能力を何一つ不自由なく操る吸血人種などに比べれば、ただ『魔法が使える』だけだ。種族によっては、魔法が使えない種族もいる。でも、人間は使える種族の下位互換、場合によっては、魔法の使えない種族にも劣ってしまう。
そんな種族だから、他の種族に付け上がられる。人界での異界人犯罪が横行したのだ。でも、無能な人界の警備隊連中は、一割も捕まえらんねぇ。
でも、変わった。ある人間に、超能力が目覚めたのだ。一説には、感情の爆発で目覚めるとか、条件(詳細不明)をそろえればめざめそれは、病気のように、ありとあらゆる人間に伝播していった。今では、生まれつき持っている『固有能力』と、ポッといきなり目覚める(きっかけ不明、様々な説がある。)『潜在能力』の二つが存在することが判明している。人間という種族が絶えないのは、この能力と、他の世界と比べて三番目に高い文明力のおかげだ。
そんなこんなで、某世紀末格闘漫画の世界並みに荒れた世界で、俺は、賞金稼ぎをしている。いや、していたはずなんだが…………気が付いたら、『狂乱狩人』とか、『絶対に捕まりたくない賞金稼ぎ』とか言われるようになった………いったい俺はどこで間違えた?
そんなこんなで副業を始めることになった。それが、探偵事務所だ。金と情報には困らない便利な副業だ。俺の抱えるとある問題を除いては。
諸事情により、投稿ペースは悪化の一歩を辿るかもしれません。温かく見守ってくだされば幸いです。