2/5
桃2
桃は、いつまでも満腹にはならないだろう。桃が佇むそこは金色の箱庭であり、桃は、その身を持って、ここは、俺の墓場やな、と自己主張する。そらは、密閉されたように空虚で、そこは、空であるというだけで意味を持たない存在の無意味さをまざまざと見せつけられるようなそらでしかない。物であれば腐食し、生物であれば腐敗するとあまり知識を持たない桃は夢想する。なるほど、我はどちらでもないのだ。では、我は神か?と桃は意地を張る。空気は腐れないやろう、とその後、思考し、なら、我は空気やろうか、とすこしは自らを省みようとする。……否、なんだろうが、普通、桃は、喋らんと聞いた。ああ、我は桃やないやん!突如、電光石火に真実らしきものを閃き、桃は、顔を紅潮させ、興奮で身を震わせたが、はたと我に返り、だからなんなのだろうと、透明になる思いだ。我は、桃ではないという答えは、余計に桃を沈めさせ、空は変わらず窮屈に桃を密閉する。