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東方星剣異聞  作者: くぅすけ
5章 弐ノ異変 ~The phantasmagoria marvel ~
63/106

63.調査



レンは重い足取りで神社へ帰って来た。


「......ただいま。」


一言呟くようにそう言い、レンは母屋へ上がった。


「何してたのよ?あんまり遅いからもう夕飯作っちゃったわよ。......ってどうしたの?そんな暗い顔して。」


「すまない。ちょっと里で色々とあってな......。」


「......話すと長くなりそうね。ほら、さっさと荷物部屋に置いて来なさい。話はご飯を食べながら聞くわ。」


霊夢に促されてレンは一旦自分の部屋へ行き、剣やローブを置いてから食卓に着いた。


「......で、何があったの?」


霊夢に里で原因不明の深刻な疫病が流行っていることと、それに妖夢がかかってしまった由を説明した。


「......じゃあ妖夢は今何処に?」


「里の東端に建っている空き家で寝かされてる。」


「そう......。」


霊夢は自分が見ていない間に突然里で起こったことを聞いてもあまり驚いた様子では無かった。


「なんと無く嫌な予感がしてたんだけど、やっぱり当たっちゃったわね。」


「ああ。どんどん人が亡くなっていくし、見ていて何も出来ない自分が本当に情けなかったよ。」


「永琳でも直ぐには治せない病気ねぇ......。集団で同時に発症するっていうのも引っかかるわね。......で?あんたは本気でその原因の調査に出ようと思っているの?」


「うん、じっとしていられないんだ。死人が出るくらいの病気だから妖夢のことも心配だし、明日からは原因の調査に向けて動き出そうと思ってる。」


「......しょうがないわね。あんまり異変解決の時以外に神様の力を使うのは気が引けるんだけど......友達の妖夢が苦しんでるんだからほっとくわけにもいかない。私も人里に行って祈祷ぐらいはやってみるわ。」


「......ありがとう、霊夢。」


「ただし効果はそんな期待しないでよね。それとあんたもあんまり無理はしないこと。病気に関しては私たちは素人なんだから本来なら永琳に任せるのが望ましいんだから。はっきり言って私が人里に行く目的は妖夢のお見舞いとあんたの監視よ。そこんとこ勘違いしないで。」


「か、監視......?」


「あんたはちょっと目離すと直ぐ一人で全部抱え込んで無茶しようとするんだから。」


「......随分手痛いな。」


「分かったら返事!」


「はいはい。」


「はいは一回!!」


「......はい。」


「さぁ、さっさとお風呂入って今日はもう寝なさい。片付けは私がやっておくから。」


「い、いや......ただでさえ今日は俺が夕飯当番だったのに作ってもらったんだしそれはさすがに悪いよ。せめて俺も手伝......」


「良いからいうこと聞くの!」


「は、はい......。」


なんかやけに霊夢が色々と世話を焼いてくれるな。いつもなら夕飯食べ終わったらその辺でごろごろしてるのに。


まぁお言葉に甘えて、諸々は霊夢に任せて今日は早めに寝るか。


レンは手を合わせてご馳走様、と言った後立ち上がって風呂場の方へと向かった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ーー翌日。


レン達は手早く朝食を済ませてから靴を履き、外へ出た。


昨日はよく晴れていたが、今日の空はぼんやりと曇っている。


遠くには黒い雲が浮かんでおり、少し肌寒くてなんだか不吉な感じだ。


「......はい、これ。」


不意に霊夢はレンへ小さな布袋を差し出した。


「ん、これは......?」


「見て分からないの?お守りよ。その......あんたを守ってくれるように祈りを込めてやったの。感謝しなさいよね///」


「そうか......ありがとな、霊夢。」


それに対して霊夢は一瞬頬を赤らめたかと思うとすぐにそっぽを向いてしまった。


「ほら、ぼさっとしてないでさっさと行くわよ。」


「ああ。」


二人は厚い雲に覆われた空へと飛び立った。



※※※



人里に着くなり二人は東端の空き家群の方へと向かう。


空き家の中に入ると、妖夢が寝かされている布団の横に幽々子が座っていた。


幽々子は眠っている妖夢の顔を心配そうに見つめている。


「幽々子、来てたのか......。」


「ええ......。妖夢ちゃんがいつまで経っても帰ってこないから心配で夜も眠れなくて。今朝幽霊達が妖夢ちゃんが人里にいるって噂しているのを聞きつけて急いでここに来たの。そしたらこの有り様よ......。」


そう言って幽々子は妖夢の手を取ってぎゅっと握った。


「可哀想に......。未だに意識が戻らないの。永琳曰く非常に危篤な状態らしいわ。私がなんとかしてあげたいけど、ただでさえ病気のせいで死人が急激に増えているから私は霊達の管轄のために冥界へ戻らなくてはならないの。レン、妖夢ちゃんのことは任せたわ。貴方が救ってあげて頂戴......。」


「ああ、言われなくても。必ずや原因を突き止めて妖夢を救って見せる。」


「頼んだわよ......レン。」


幽々子はそう一言言い残し、部屋を出て行った。




その後、二人は病気についての調査を開始した。


不幸中の幸いにも空気感染はしないらしいので主に発症者の家族や近隣の住民の元を直接訪ねて聞き込み調査を行った。


だが発症者の出た地域の分布に特に規則性は無く、発症者達も老若男女様々。


なかなか決定的な情報が得られず、やはり調査は難航していた。


聞き込み調査は昼ごろまで行ったが、結局分かったのは北の地域のみ発症者が一人も出ていないということだけだった。


「はぁ......やっぱりそううまくはいかないか。」


竹筒に入った茶を飲みながらレンはため息を吐いた。


その横では霊夢が昼飯のおにぎりをもぐもぐ頬張っている。


「ふぅ......ご馳走様でした、....と。ちょっと調査も行き詰まって来たし、私は空き家に行って病人達に祈祷が効かないか試してくるわ。あんたは私が戻るまでここで休んでいて頂戴。」


「ああ、分かった。」


霊夢は縁台から立ち上がると、東の方へと歩いていった。


「一体どうしたものかな......。」


威勢よく任せておけ、とは言ったもののもう既に行き詰まっている。


これ以上聞き込みで有益な情報は得られそうにないし手元にある情報を整理しながらもう少し考えてみるか。


未だに発症者は増加しているようなので原因元は人々が日常生活を生きる中で毎日欠かさず触れる物、又は取り入れるものだろう。


ーー無いと生きていけないもの......。


そこまで考えたところでふと手に握っていたお茶の入った竹筒に目が止まった。


......待てよ?


水が感染源というのは......あり得るな。


汚染された水を飲めばたちまち病気になってしまうのは当たり前だろう。


だが水が感染源の場合、里人達全員が発症しててもおかしく無い。水を全く飲まずに一日過ごす人間などいないだろう。


一部の人間のみが発症するのはおかしな話だ。


......でも。


確か里には水を売っている商人がいたはず。水を手に入れるには井戸から組むか水売り商人から買うかの二択しか無い。


もしもそのうちどちらかだけが汚染されていたのならばその汚染された方の水を飲んだ者達だけが発症した、と考えれば辻褄は合う。


レンは剣を取って縁台を立ち上がり、水売り商人を探した。


ーーいた!!


道の端で水の入った桶を置いて売り捌いている商人を見つけた。


「あの.....すみません、ちょっとよろしいでしょうか?」


「へぇ、旦那。水を買いたいんですか?」


「いえ、その売っている水に関してお聞きしたいことがありまして。......その水、どの様にして仕入れているんですか?」


「この水は井戸の水を汲み置きしたものを煮沸して消毒した上で冷やして売っているんです。きちんと消毒しているので川や井戸の水よりも安心して飲めますぜ。」


「そうですか......。」


正直、この水売りの商人が水に猛毒を溶かして売っていたりする可能性も捨てきれない。商人には悪いが確かめさせてもらおう。


「メルンコラル。」


レンは毒探知呪文を唱えた。


途端指先から淡い緑色の閃光が現れ、桶の中の水に沈んでいく。


これで毒が入っていれば反応するはずだった......が、桶の中の水からは毒は見つからなかった。


「だっ、旦那!?何やってるんですか!?」


「すみません、やっぱりなんでも無いです。教えてくださってありがとうございました。」


「ちょっ、旦那ぁ〜!?今度来るときは水を買ってくださいよ!!」


「ああ、必ず!!」


レンはそう答えて手を振り、最寄りの井戸がある場所へと走った。


井戸に着くなり水を汲み上げ、毒探知呪文を唱える。


「メルンコラル......ッ!?」


指先にバチっ、という不快な衝撃が走ると共に水は黒いヘドロの様なものへと変わった。


......魔法毒だ。しかも凄まじい猛毒。


やはり感染源は水だったのだ。


北側の区域に発症者がいなかったのは人里の中で唯一北側の区域のみ井戸が無いからだろう。


井戸が遠い北区域の人々はわざわざ遠くへ汲みに行くのではなく皆水売りの商人から飲料水を買っていたのだ。


水売り商人の水はあらかじめくみ置きされていたものなので魔法毒が溶ける前の井戸水、つまり毒がはいっていない水だった。


そしてこの里の川や井戸は全て繋がっている。昨日から今日までの間で人里内にある4つのうちいずれかの井戸の水を飲んだ者達のみがこの毒にやられてしまったというわけだ。


これで発症者の分布の不規則性も辻褄が合う。


昨日里に着いた時に一度妖夢は喉が渇いたと言って水を飲みに行った。きっとその時に井戸水を飲んでしまったのだろう。


とそこまで考えたはいいものの、やはり魔法毒が井戸水に溶けていたのが引っかかる。


魔法毒はその名の通り魔法を扱える者が作り出すことのできる毒であり、いわゆる呪術の一種だ。


したがって魔法毒は誰かの手によってのみ生み出されるものであり、それが井戸水に溶かされていたということは何者かが魔法毒を使って人里の人々を大量に殺そうとしたということである。


つまり。


この病気の流行は単なる疫病などではなく、何者かによって巧妙な手口を取って起こされたれっきとした”異変“なのだ。


ともかく、魔法毒を井戸に放り込んだ犯人を突き止めなくてはならない。


問題はどこから井戸に魔法毒を流したのか、だが......。


恐らくこの里の全ての井戸と川が繋がっていることを知っていた犯人は直接井戸ではなく川に魔法毒を放り込んで拡散を試みたのだろう。


ーーつまりこの川の上流へ向かっていけば犯人の居場所が分かるかもしれない。


レンがそう思い立った時、丁度道の反対側から阿求がやって来るのが見えた。


「阿求さん!!」


「わっ!?レンさん、どうしたんですか?そんなに慌てて......」


「疫病の原因を突き止めました!」


「えっ!?本当ですか!?」


「はい。......感染源は“井戸水”です。何者かが川に魔法毒を放り込んだみたいで、それに繋がっている井戸の水を飲んだ里人達があの症状を訴えていたんだと思います。」


「そんなことをする輩が!?一体どんな人物なのでしょうか......?」


「それは分かりません。俺はこれから急いでその人物を突き止めに行きたいと思います。この川の上流の方へ向かうつもりです。」


「この川の上流......妖怪の山ですか。」


「妖怪の山?」


「はい。多くの神々や天狗の住む神秘の山です。固有の文化を築いていて皆仲間意識が強く、山の民でないものには非常に排他的と聞きます。」



「そうなんですか......。ですが、立ち止まってはいられません。魔法毒は術者が術を解くか死ぬかすれば自然に消えていきます。苦しんでいる者達のためにも早く術者を探し出して討たないと......。阿求さんは被害の拡大を食い止めるために井戸水を飲まないように里人達に命令を出して下さい。」


「分かりました!レンさん、くれぐれもお気を付けて。御武運をお祈りしています。」


「はい!行って来ます!!」


そう答えると、レンは川沿いを走って行った。







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