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東方星剣異聞  作者: くぅすけ
5章 弐ノ異変 ~The phantasmagoria marvel ~
60/106

60.竹林と紅の自警隊





ーー迷いの竹林。


霊夢から話だけは聞いたことがある。


人里から見て博麗神社の建っている方とは逆方向の方角に位置し、鬱蒼とした竹の茂みが結構広範囲に渡って広がっているらしい。


“迷いの”、と名のつく通り一度足を踏み入れるとなかなか出られないとか。


なんでも、竹の成長が早くて景色が日々変化するためこれと言った目印が無く、 更に地面は緩やかな傾斜になっていて方向感覚も狂わされるらしい。


おまけに深い霧が常時立ち込めている為空を飛んでも悪視界で竹林を抜け出すことは出来ない、というように絶対家に返さない気満々の竹林である。


こうして考えてみるとその医者というのもなかなか辺鄙な場所に住んでいるものだ。


まぁ博麗神社も結構人里離れた山奥にあるんだし人のことは言えないんだけど。


そうこうしているうちに竹林が見えて来た。


ゆっくりと速度を下げて竹林の入り口に降り立つ。


「さてと......。」


聞いていた話通り、そこには鬱蒼とした竹の茂みが広がっていた。


竹同士が互いに覆いかぶさるように伸びており、日光を遮っているので竹林内部は薄暗い。


なるほど、魑魅魍魎が住み着くにはうってつけの雰囲気の場所である。確かに武器を持たない里人に入らせるには些か不安が残ると言ったところか。


足を踏み入れたが最後、なかなか目的地に辿り着けない上に帰っても来れないらしいので正直あまり入りたく無いが病に苦しんでいる里人達の為に引き返すわけにはいかない。


妖怪の気配は今のところ感じない。


どうやら入り口付近には妖怪はいないようだ。


バンダナを締め直してからレンは竹林へと足を踏み入れた。




そして十数分後。


案の定道に迷っていましたとさ。


HAHAHA、笑えねぇ......。


さっきから何回も何回も同じ場所をぐるぐる周り続けているようだ。


もう入り口がどこなのかさえも分からなくなってしまった。


それにーー


ーー至る所から複数の殺気。


不意に飛び掛かって来た()()を半歩退いて躱し、振り向きざまに抜刀、その長い胴を真っ二つに叩っ斬る。


襲いかかって来たのは蛇のような体に獣のような頭を持つ妖怪だった。


四方八方からかかってくる妖怪達の牙や爪による猛攻を躱し、斬り伏せていく。


まだ結構な数が竹の茂みに潜んでいるようだ。


「アルスパーク!!」


牽制のために雷魔法を正面の茂みに放つ。


轟音と共に放たれた電撃が竹を灼くと、弾かれたように新たな個体が茂みから飛び出して来た。


妖怪は仲間が殺されるのを見ても逃げ出したりはしなかった。


どうやら俺を殺す気満々のようだ。


......仕方ない、戦うか。


肉薄する妖怪の牙による攻撃をステップで回避、反撃しようと剣を振りかぶったその時。


突然背後の茂みからさらにもう一体襲いかかって来た。


ーーなっ!?


追撃を諦めて急いで逆足へと体重移動しつつ体を捻ってすり抜けようとしたがもう遅い。


毒々しい色をした鋭い牙がレンの肩口へと迫る。


せめて攻撃が直撃しないように、咄嗟の判断で横に体を投げ出したその時。


凄まじい火柱がレンに飛びかかって来た妖怪を灼いた。


他の妖怪達も次々に炎上していく。


苦しそうにのたうちまわり、やがて動かなくなった。


「大丈夫か?」


声の聞こえた方を振り向くと、真紅の瞳と目が合った。


白髪のロングヘアーには白地に赤い模様の入ったリボンを複数結っており、上はカッターシャツ、下はサスペンサーの付いた赤いズボンといった出で立ちの少女。


「あ......うん。ありがとう。」


「人間がこの竹林に何の用だ?筍狩りにでも来たのか?」


「いや、永遠亭っていう建物に行きたいんだけど道に迷っちゃってさ。」


「永遠亭か......。連れて行ってやろうか?」


「本当か?そうしてもらえると助かる。」


「いいよ。ついて来な。」


少女は人差し指をくいくい動かしてついてこい、と合図した。


「私は妹紅。藤原妹紅(ふじわらのもこう)だ。この迷いの竹林で道案内をしたりしてる。お前は?」


「レンだ。一応里で自警団やってる。よろしく、妹紅。」


「ああ、お前がレンか。」


「俺のことを知ってるの?」


「まぁね。慧音から聞いたことがある。この前人里で起こった異変を解決したんだろ?」


「うーん......まあほとんど霊夢が解決したようなもんだけどね。」


「慧音はお前のこと凄く褒めてたぞ......っと、お?」


何かを見つけたのか、竹藪の中へと分け入っていく妹紅。


「どうした?」


妹紅は何やら竹の根本をガサゴソと探った後、レンの方へ何かを放って来た。


放られた“何か”を慌てて両手で受け止める。


「これは......筍?」


大きな大きな筍だ。ずっしりとしていて中に身がしっかり詰まってそうである。


「そそ、筍。煮てもそのまま焼いても炊き込みご飯にしても旨いぞ。持っていきなよ。」


「あ、ありがとう。」


レンは縮小魔法を使って筍を小さくし、懐へ入れた。


「へぇ......面白い術を使うんだな。」


「まぁね。一応魔法が使えるんだ。さっき妹紅も火を放ってたけど、あれは魔法じゃないの?」


「うーん......あれは妖術だな。まぁ厳密には魔法と似たようなもんだけど。ところでさ、レン。」


「ん?」


「レンは何の用があって永遠亭へ行くんだ?」


「実はさ......」


別に隠し立てする理由も特にないのでレンは妹紅に今人里で起こっていることを話した。


「ほう......そりゃ大変だな。んで、慧音がお前に永遠亭に行って医者を呼んできて欲しいと頼んだわけか。なら急がないとな。」


そう言って話を切り上げると、妹紅は足早に歩き出した。


どうやら妹紅は相当この竹林の地理に関して詳しいようで、寸分の迷いも無く幾重にも分岐している道を選んで歩いていく。


目印も何も無いのにどうやって道を識別しているのか不思議でならないが、きっと何か微々たる違いがあるのだろう。俺にはどこもかしこも同じ景色にしか見えないけど。


そして僅か数分後。


「後はこの道をまっすぐ進めば永遠亭に着く。ここからはレン一人で行ってきてくれ。」


「妹紅は来ないのか?」


「あそこに住んでいる奴とはちょっと仲が悪いんでね。」


そう言って妹紅は少し目を伏せた。


どこと無く寂しそうな、怒りが揺らいでいるような、でもほんの少しだけ楽しそうな......。


まるで昔からの友達のことを思い出して懐かしんでいるような、そんな感じ。


何か深い訳があるみたいだけど、下手に詮索するのはここまで親切心で案内してくれた彼女に対して失礼を働くようなものなのでやめておこう。


「それじゃあな、レン。私はいつも竹林をうろうろしているから、何か困ったことがあった時は来るといい。」


「ああ、ありがとう。里の方が落ち着いたら何かお礼の手土産でも持ってまた来るよ。」


妹紅は片手をズボンのポケットに突っ込んだままもう片方の手を振り、去っていった。










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