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東方星剣異聞  作者: くぅすけ
1章 白玉楼での日々
20/106

20. 藍より藍く





「うぅっ......」


目を開けると、見慣れた木目の天井が視界に入った。


上体を起こして一つ大きな伸びをする。


霞んだ視界のピントが調節されて徐々に鮮明になってきた。


どうやらここは自分の部屋であるようだ。


もやがかかったようにすっきりしない頭を働かせて、どうにかして糸を手繰り寄せるように記憶を辿る。


「..........。」


ーーそうだ。自分の半霊に殺されそうになって、死にたくない、助けて、って心の中で叫んだらレンさんが助けに来てくれて。


あの後どうなったのだろうか。


自分がここに寝かされていたことと、今元通り半霊が自分の周りをふよふよと動き回っていることからして多分レンさんが何とかしてくれたのだろう。


「気が付いたか。」


声のした方へ首を向けると、レンが襖から入って来るところだった。


「レンさん......」


言葉では言い表せない頼もしさに、自然と心が安らぐ。


特に何か悲しいわけでもないのに妖夢は目尻が熱くなるのを感じた。


「ちょちょちょ、何で泣くんだよ?」


「うぅ......だって...............だってぇ......」


レンの胸に顔を押し付けてまるで幼い子供のように泣きじゃくる。


ーー怖かった。


あの瞬間黒妖夢が妖夢の首へ向けてあの(あか)い刃を振り抜く、ただそれだけでただでさえ半分しかない妖夢の命は完全に絶たれかねなかったのである。


いざ目の前に迫った“本当の死”を前にして、恐怖で何もすることができなかった。どれだけ剣術の腕を磨こうとも未だ拭い切ることの出来ない己の未熟さを痛感した。レンが助けに来なかったら今頃どうなっていたかは想像に難くない。


「やはり妖夢は......一人で幽々子様を守り切ることが出来ませんでした。いなくなってしまった祖父に少しでも近づけるようにと、どれだけ修行をしてもやはり私はいつまでも半人前なんです。」


止まることを知らず流れ続ける涙。日頃から溜め込んで、誰にも話すことの出来なかった弱音がとつとつと漏れる。


「妖夢なんか、所詮居なくなってしまった祖父の代用品なんです。何をしても祖父に及ばないし、いつまでも半人前のまま。幽々子様もきっと、こんな妖夢なんか......」


口に出すのが怖くて、その後が言えない。


ーーああ、こんな所でも私は未熟者だ。


そう思って顔を背けていると。


「......俺が幽々子の所に駆けつけた時、幽々子は西行妖の影響で息も絶え絶えでとても苦しそうに部屋に横たわっていた。けど......」


顔を上げた妖夢の目を真っすぐに見据える。


「幽々子は......駆けつけた俺を見るなり妖夢が、妖夢が、って訴えかけてきたんだよ?」


妖夢が短く息を呑む音が聞こえる。


「自分だって苦しい筈なのに、それでも幽々子は自分よりも妖夢の身を案じていた。......所詮居なくなった従者の代用品、なんて思っている奴を普通そこまで心配すると思うか?」


「っ.....それは............」


「妖夢はそれだけ幽々子に愛されているし、必要とされているんだよ。それに、少なくとも剣においてはお前は半人前の域は既にとっくに抜けていると思うぞ?俺が前いた世界ではお前ほど強い奴とは剣を合わせたことがない。」


「......ありがとうございます。」


妖夢は少し嬉しそうに頬を赤らめた。


「もちろん妖夢がいち早く半霊の異変に気付いて戦ってなかったら俺も寝ているうちに殺されていたかもしれない。お前のおかげで俺も命を救われたんだ。だから......」


妖夢の頭の上に右手をポン、と置いてわしゃわしゃ撫でる。


「いつまでも半人前、とか居なくなった祖父の代用品、とかそんな悲しいこと言うなよ。魂魄妖夢はお前が自分で思っているよりずっと立派な子なんだぞ?」


「......はい。」


もう溢れ出す涙で前が見えない。


だが、頬を涙が伝おうともその顔には屈託のない笑みが浮かんでいた。




ーー幼い頃、彼女は孤独だった。半人半霊、という魂魄の家系の特殊体質故に周囲の人間から好奇の目を向けられながら幼少期を過ごした。普通の人間とは異なる銀髪や真っ白な肌。彼女に向けられていたその目には蔑みや憐憫の念も込められていたのかもしれない。


ーーごめんね、妖夢ちゃん。ママに妖夢ちゃんとはもう遊ばないようにしなさいって言われちゃったの。


ーー半分幽霊だから普通の人間より年をとるのがゆっくりだし、寿命も長いんだとよ。化け物と変わんねぇな。


体質が半分人間で半分幽霊である。


ただそれだけ、と一笑の元に笑い飛ばせたらどれだけ楽だっただろうか。


分かっているつもりでいた。


半人半霊は人間よりも遥かに寿命が長い。


妖夢は何年経とうと全く外見が変わらないのに、周りの人間はどんどん背が大きくなり、歳をとってやがて死んでいく。


たったそれだけのことでも普通の人間にとっては大きな違いだ。何年経とうと姿形が変わらない彼女は、人間にとっては化け物以外の何でもない。人間という生き物の枠から中途半端にはみ出て(あやかし)の域に片足を突っ込んでいることに引け目を感じる。


やがて、ついこの間まで一緒に遊んでいた少女が気づいたら歳をとって死んでいるのが怖くて。


そんな自分を見る周りの目が怖くて。


彼女は周りの人間と次第に距離を取るようになっていった。


ただひたすらに剣の修行だけして、私はもう一生恋もせず誰にも愛されることもなく、友達と遊んだり楽しいこともしないまま生きて人知れず寿命を終えて死ぬんだ。


私には永遠に春など訪れない。


そう思っていた。


ーー仕方がないじゃないか。彼らは人間で、私は半人半霊なのだから。


そんなある日、祖父に連れられて冥界に佇む白玉楼に来た。これからは此処で一緒に働くんだ、と祖父に言われて幽々子に挨拶した。優しそうな方だった。


冥界に来てからの日々はとても楽しかった。周りには彼女を蔑む人間たちもいないし、祖父も幽々子も妖夢に優しく接してくれた。


だが、そんな日々も束の間。


突然行方を晦ましてしまった祖父の代わりに白玉楼の庭師兼幽々子の護衛役を引き継ぐことになった。だが常に彼女のその心の中には自分なんかが祖父の代わりをきちんと務めることができているだろうか、いつか未熟過ぎて見放されてしまわないだろうか、などというような不安や焦りが渦巻いていた。


ーー幽々子は直接口に出さないだけで何もかも祖父に及ばない自分のことを不満に思っているのでは無いか。


彼女の心に蔑まれていた頃のトラウマが蘇る。やはり自分の居場所なんて本当はどこにもないのでは......。


だがそれらの不安や焦りから、彼女は生まれて初めて解放された。今目の前にいる少年が解放してくれた。


少年は妖夢がいたから命が助かった、と言った。


ーーああ、こんな私でも誰かのお役に立てているんだ。必要とされているんだ。


そんな確信を得られたことが彼女にとってはこれ以上ないほどに嬉しかった。


この少年は、妖夢が半人半霊であることを告げても全く蔑む素振りを見せなかった。


ーー寧ろ格好良いと俺は思うけど......


そう言ってくれた。


ずっと抱えて来たコンプレックスだったのに。こんな私に蔑みの言葉一つこぼさなかった。


手伝いをしに来てくれたり、剣の稽古をしてくれたり。


何の気兼ねもなく親しげに接してくれた。それだけのことが彼女にとってはとても嬉しかったのだった。



ーー彼女がその顔に浮かべているのは年相応の女の子らしい、透き通るような美しい笑顔。


その様子がレンには眩し過ぎて、尊く感じられて、恥ずかしくて、直視していられずに目を逸らす。


ーー自分なんかに向けられるにはあまりにも尊すぎる。


そう思う程に彼女の笑顔はレンにとっては輝いて見えた。


※※※


レンに背中をさすってもらいながらひとしきり泣いた後、妖夢はレンに尋ねた。


「幽々子様は......無事ですか?」


「ああ、隣の部屋でぐっすり寝てるよ。じき元気になるだろう。」


「そうですか。良かった......。」


ほっとして胸を撫で下ろす。


聞けば自分は四日間も意識が無いまま寝ていたそうな。自分でもあれだけの傷を負ったのに生きていたのが不思議で仕方ない。


「すまない、あの後色々西行妖の幹を調べてみたんだが......誰が西行妖の封印を解いたのかは結局分からなかった。あの桜にかけられていた封印は結構強固だったから自然に解ける筈はない。だから、何者かの手によって封印が解かれた、というのは確実なんだが......。」


「いえいえ、なんでレンさんが謝るんですか.......レンさんは妖夢と幽々子様の命を救って下さった恩人なんですよ?むしろ何かお礼をさせてもらいたいぐらいです。妖夢にできることならば何なりとお申し付けくださいね。」


「そんな......恩人なんて大げさだよ。」


こっちにはこの数日間居候させてもらった恩もあるんだし。


「ところで妖夢、こんだけ飲まず食わずで寝込んでたんだから腹減ってないか?」


「いえ、別にだいじょうb......」


丁度その時妖夢の腹がくぅ、という可愛らしい鳴き声を上げた。


「あっ、えっとこれは......その..............」


たちまち妖夢の白い頬が恥ずかしさで真っ赤に染まる。


「け、剣士の恥!!切腹します!レンさん、どうか介錯を!」


「ちょ待て待て待て!いったん落ち着けッ!?」


刀掛けに安置されていた白楼剣を引き抜こうとする妖夢を慌てて止める。


今までにも化け物(幽々子)に追われて俺の部屋に飛び込んで来たり、怖いから厠までついてきてもらったりでこんなことよりも恥ずかしい思いしてると思うんだけどなんで今回に限って切腹しようとするんだよ!?


妖夢の切腹するほど恥ずかしいか否かの基準ってどこにあるんだよ!?


数分後、ようやく妖夢は落ち着きを取り戻した。


「これ、お粥作ったんだけど食べるか?悪いけど勝手に台所使わせてもらった。」


そう言いながらレンが鍋の蓋を取ると、たちまち真っ白な湯気が立ち昇る。


「ほれ。」


「あ、ありがとうございます!」


茶碗によそってもらい、箸を受け取る。


「じゃあ早速......頂きます。」


数回もぐもぐ咀嚼した後、妖夢は頬を綻ばせた。


「......おいしい。」


「そりゃ良かった。」


レンはへへ、と鼻を擦りながら嬉しそうに笑った。


まぁ、テーヴェン村にいた時は師匠が行方不明になった頃から一人でずっと暮らしてきたから毎日自炊だったしね。


「自分で食事できるみたいだしもう大丈夫そうだな。それじゃあ俺はもうそろそろお暇しようかな。」


「えっ......何方へ?」


「何方へって......幻想郷に決まってるだろ?」


「もう行っちゃうんですか?もう少し白玉楼(ここ)に滞在しても......」


「もうこの身体にも慣れたし、何よりも俺が白玉楼に居候してたら迷惑じゃないか。」


「居候だなんて、そんな......」


「それに、今回西行妖の封印を解いた犯人ももしかしたら幻想郷にいるかもしれないだろ?見つけ次第ぶっ飛ばしてやる。」


「そうですか......。」


しゅん、となる妖夢。


「数日前にも言いましたけど、また一段落したら冥界に遊びに来てくださいね?」


「ああ、必ず。」


「それと......」


少し頬を赤く染めてもじもじする。


「ん?どうした?」


「その......これからはレンさんのこと、お師さまって呼んでもいいですか?」


彼女が幼い頃に行方を晦ませてしまった師匠、魂魄妖忌。幼き日の彼女にとっては尊敬する祖父であり同時に憧れでもあった。


行方を晦ましてしまった祖父、妖忌はどこまでも真っすぐな人格であった。レンには祖父に似た実直さがある。或いはレンならば亡き祖父の剣の続きを妖夢にもたらしてくれるかもしれない。


「ああ。俺なんかが師でいいんだったら、幾らでもそう呼んでくれて構わないよ。」


照れ隠しで頭をぼりぼり掻きながらレンはそう答えた。


「えへへ......第二の師としてお慕い申しておりますよ、お師さま。」


「なんか照れるなぁ、それ。」


尚も恥ずかしそうにするレンを見て、妖夢はくすくす笑った。


「弟子になるからには出藍の誉れってやつを楽しみにしてるぞ。」


「しゅつらんのほまれ?」


「藍染めって知ってるだろ?あれって染液の材料になる植物の色よりも染めた時に出る色の方が濃いんだよ。そこから転じて、弟子や子が師や親を超えるっていう意味の言葉だよ。」


「へぇ......出藍の誉れ、ですか。」


「ああ。」


「雨が斬れるようになるには三十年、空気が斬れるようになるには五十年、時間が斬れるようになるには二百年かかると祖父は言っていました。いつかはこれらが斬れるようなくらい強くなってレンさんに追いつきます!」


「さすがに俺も時間とかは斬れないけど......頑張れ。」


「はい!」


返事をした後妖夢はえへへ、と嬉しそうに笑った。


妖夢は本当に素直な性格だ。きっとあの剣捌きは、今は行方の知れぬ祖父の教えを素直に受け入れて修行を欠かさずしてきたからこそ彼女が身につけることのできた、努力の賜物なのだろう。


「んじゃ一段落ついたらまた遊びに来るよ。お世話になりました。幽々子にもよろしく言っといてくれ。......じゃあね。」


「よいしょっと......」


「あぁっ、まだあまり無理して歩かないほうがいいぞ。」


立ち上がろうとする妖夢を慌てて止める。


「でも、お見送りぐらいは......」


「安静にしていた方がいい。」


「......分かりました。では、お師さまなら大丈夫だとは思いますが、幻想郷には人間を襲うような妖怪も沢山いますのでどうかくれぐれもお気を付けて。......行ってらっしゃいませ。」


手を振りながら襖の戸を閉める。


「行ってらっしゃい、か......。」


素敵な響きだ。


物心ついた頃からずっと一人で暮らしてきた彼にとっては、特別胸に響く言葉だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さてと......。」


目の前に聳え立つは白玉楼の大門。


面に手をつけて押すとぎぎぎ、という軋んだ音とともにゆっくり、ゆっくりと門が開いていく。


「うわあ......すっげえ..........。」


眼下に果てしなく伸びる石段に、思わず詠嘆の声を上げる。


妖夢の話によると、この石段を下った先に白玉楼と顕界を隔てる結界があるのだそうだ。


我ながら情けないことに結構高さがあって怖い。


すくむ足を鞭打って、踏み外さないように一段ずつ彼は石段を降りていった。


※※※


石段を下り始めてから一刻程経った頃。


レンはようやく巨大な門の前に辿り着いた。


「これが......?」


門の内側には確かに歪みのようなものが貼られているのが見える。


これが冥界と顕界の境界.....”幽明結界“だろう。この歪みへ飛び込めば、もうそこは幻想郷であるはずだ。


「よし。」


振り向けば、延々と上へ伸びる石段の遙か彼方に小さく白玉楼が見えた。


「幽々子や妖夢には世話になったから今度来る時は何か手土産持って来ないとな。」


そう言い残して、次の瞬間彼は結界へと飛び込んだ。


歪みに飛び込んだ刹那、視界が歪み、なんとも言えない違和感が彼を襲った。


ふとどこからか声が聞こえて来る。


ーーようこそ、幻想郷へ。幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ。


「えっ......?」


何処かで、遠い昔に聞いたことがある気がする声。


周りを見回してみるが、薄暗い靄がかった暗闇しか視界には映らず、そこに誰かがいる様子は無い。


聞き覚えのある声を何処で聞いたのか思考を巡らせていると。


周囲の彼を取り巻く空気の質がガラッと変化した。つい一瞬前までいた冥界の空気よりも心なしか少し暖かい気がする。


徐々に景色も暗闇から美しい空へと変化する。


手を伸ばせば届きそうなところに雲が。


ーーん?ちょっと待てよ?


すごくすごくすごーく嫌な予感がするんだが。


恐る恐る下を見下ろすと、霞むほど遙か下の方に地面が。


次の瞬間。


止まっていた時が動き始めたかのように彼は自由落下し始めた。


「んぎゃあぁぁぁぁぁああぁぁぁあッ!!」


上げる悲鳴も虚しく激しい風圧音に掻き消され、重力が彼の落下速度を更に上昇させていく。


ちょ、やばいって!風圧で息吸えない!ってかこのままだと地面に激突する!普通に死ねる!


助けて妖夢!助けて幽々子!もうこの際誰でもいいから誰か助けてェェッ!!


無我夢中で手足を動かすが、まったくもって意味がない。


ついさっきまで師匠とか呼ばれて嬉しかったからちょっと背伸びして格好つけてたのに、我ながらみっともないなぁ......。


ーーそんな中。


彼はとてつもなく美しい光景を目にした。


一言で表現するならば、東の国(オリエント)の原風景といったところだろうか。


山々の所々で山桜が満開に花を咲かせており、その隙間を縫うように清流が流れている。


和風の建物がたくさんの立ち並ぶ集落のようなのも見える。見た感じでは王都と同じくらい広い。


その集落の周りには田んぼが広がっている。他にも広大な森や澄んだ湖など、雄大な自然が広がっていた。


そんな美しい光景を目にして、暫しの間彼は自らが現在危機的状況に置かれていることすら忘れていた。


ーーこれが幻想郷......


「......ってそんな感動している場合じゃねええええ!」


ーーどうする?


このままだと確実に地面と激突してお釈迦になってしまう。


くそっ、妖夢から空の飛び方教えてもらえばよかった!


余計なことをあれこれ考えてるうちにもう地面がすぐそこまで迫ってきてしまった。


ええい、もうどうにでもなれッ!


「タービランスッ!!」


使える限りでの最上位の風魔法を地面に向かって打ち込んだ。


途端発生した凄まじい風圧が彼が地面に衝突するのを妨げーー


なんとか地面への激突を免れて安心しかけたのも束の間。


彼は今度は横向きに吹き飛ばされた。


「あびゃあぁぁぁあああッ!!」


もはや奇声とでもいうべきみっともない悲鳴を上げながら物凄いスピードで突っ込んだ先はーー


高さ十数メートルほどの崖。


ーー終わった......。


崖の下へと真っ逆さまに落ちていく。


盛大な水飛沫の音が聞こえると同時に彼の意識は途切れた。







レンが出発してから数時間後一ー


「妖夢、妖夢っ!何処にいるの?」


「あっ!幽々子様!気が付かれましたか。......うぅ、良かったぁ......。」


妖夢は幽々子にひしと抱きついた。


幽々子も泣きじゃくる妖夢を抱き締め返す。


よく見ると妖夢の身体には至る所に包帯が巻かれていた。


きっと包帯の下には痛々しい痣や刀傷が沢山あるのだろう。


「妖夢ちゃん、私のために......ありがとうね。」


「いえ、主のために従者が戦うのは当然のことです。それに......結局妖夢は負けてしまって.......斬られる寸前にレンさんに助けてもらいました。」


「そう......でも、女の子なのにこんなに傷だらけになるまで頑張って......」


「一生残るような傷では無いですよ。それに、幽々子様をお守りするために負った傷なら妖夢にとっては名誉の証です。」


「妖夢ちゃん......」


「と、ところで幽々子様。」


「何かしら?」


「幽々子様は......妖夢のことを大切に思ってくれてますか?」


突拍子もなく妖夢の口から出た言葉に少し驚く。


「どうしたの急に?何を言い出すのかと思えば......ふふ、おかしなことを聞く子ね。そんなの大切に思っているに決まっているじゃないの。」


「えへへ......ありがとうございます。幽々子様、こんな未熟な私ですが、これからも末永くよろしくお願いします。」


「ええ、こちらこそ。ずっとずっとずーっと一緒よ。」


照れくさくて、頬を赤くしながらも互いに顔を見合わせて微笑む。


「あれ?ところでレンはもう行っちゃったの?」


「はい。もう幻想郷へ向かわれましたよ。」


「お礼を言いたかったのに......。」


「ふふ......また今度一段落着いたら遊びに来てくれるそうなので、その時に言えば良いじゃないですか。」


「なんだか妖夢ちゃんとても嬉しそう。妖夢ちゃんも女の子ねぇ、私安心したわ。」


「べ、別に...///」


「ところで妖夢ちゃん?」


「はい、なんでしょうか幽々子様?」


「レンって空飛べないのよね?結界に飛び込んだら空に放り出されちゃうんじゃないの?」


「あっ........。」






Next Phantasm.....







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