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東方星剣異聞  作者: くぅすけ
1章 白玉楼での日々
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10.亡霊の姫君と白玉楼の庭師




「妖夢〜。お客様にお茶とお菓子を出さなくちゃ。あ、私はお団子が食べたいわね〜。」


桃髪の少女は銀髪の少女の方をチラチラ見ながらわざとらしい口調でそう言った。


「幽々子様。もう今日だけでお団子は376本目ですよ。いい加減に.....っていうか私が茶箪笥に隠しておいた煎餅、盗み食いしましたよね?あれだけの量盗み食いされたら流石に気がつきますよ!?幽々子様は当分の間おやつ抜きです!お菓子はお客様の分だけ持って来ますっ!」


......ん?聞き間違いかな?今団子376本って聞こえた気がするんだけど。


ぎくりと肩を揺らした桃髪の少女を横目に、銀髪の少女はぷんすこぷんすこ怒りながら部屋を出て行った。


「妖夢の意地悪ー。まあいいわ......じゃあまず始めに軽く自己紹介からしましょうか。私は西行寺 幽々子。この白玉楼の主で、ここへ来る幽霊達の管理をしているわ。一応貴方は大事な大事なお客様なんだし私達のことは呼び捨て・タメ口でいいわよ〜。その方が話しやすいし。で、そっちの銀髪の子が....」


幽々子はいつの間にか部屋に戻って来ていた銀髪の少女を指差した。


「魂魄 妖夢です。一応半人半霊ーー人間と幽霊のハーフです。幽々子様の身の回りのお世話をしつつ、先ほども言いましたが白玉楼の庭師をしています。」


にこやか(?)に笑いながら妖夢は自己紹介をした。なんかちょっとだけ笑顔引きつってない?怖いよ、妖夢ちゃん。


「......あれ?あんまり驚かないんですね。」


「ん?何に?」


妖夢が心底意外そうな顔をするのでレンは小首を傾げた。


「何にって......私、半人半霊なんですよ?聞いたら普通もっと怖がったり蔑んだりするのかと......」


「別に......何故半人半霊だからっていうだけで蔑む理由になるんだ?寧ろ半分だけ霊って格好良いと俺は思うけど......」


「か、格好良いですか......ありがとうございます。///」


「はいはい、で貴方の名前は?」


赤くなる妖夢を見てニヤニヤしながら幽々子が話の先を促す。


「俺の名前はレン。俺がまだ生まれて間もない頃に両親が死んで今でも身元が判明していないから家名は無いんだ。レンという名は.....幼馴染が付けてくれた。」


サラのことを思い出して、目から涙が滲み出そうになるのを必死に堪える。


「さぞかし辛い思いをしてきたんでしょうね......。」


レンが今までに体験したことを話したわけでもないのに幽々子は彼のその悲しき記憶を悟ったかのようにそう言った。


「じゃあ、幽々子。早速知りたいことがいくつかあるんだけど.......」


「ええ。私の分かる範囲のことなら答えてあげるわ。」


「じゃあ最初の質問。俺がいなくなった後、ランセルグレアはどうなったの?」


「そのランセルグレアというのは貴方が以前いた世界のことかしら。残念ながら私はある人から貴方を預かっただけだから、そっちの世界のことは何も知らないわ。私が知っているのは貴方が死んだ直後からの出来事だけよ......ごめんなさい。」


「そうか......。二つ目の質問。俺は死んだからここに来たのか?さっきからその辺をふよふよと漂っている白い物体は幽霊だって妖夢から聞いたんだけど....ここは大方死後の世界みたいなところじゃないのか?」


「その予想は当たってるわ。ここは死後の世界....厳密に言えば“冥界”よ。確かに貴方は死んだわ。本来なら人間が死ぬとその魂は閻魔の元へ行って裁かれて、生前に犯して来た罪の重さに応じて行き先の判決を下される筈なんだけど.....」


ーーでもね。


「貴方を殺した呪文が強力すぎたが故に貴方の魂は閻魔の元へ行くことすら許されずその場で消滅させられそうだったの。貴方を殺した人が何故そこまでするのかは分からないけど何か理由があったのでしょうね。でも、ある人.....私の友人が貴方の死の直後、消滅寸前だった貴方の魂を身体から抜き出して保護したのよ。」


そこまで話したところで幽々子は妖夢が出してくれた茶をすすった。


レンも出された団子を一つ食べ、茶を口に含んだ。


東の国(オリエンス)の菓子として知ってはいたが、団子ってこんなに美味しいものだったのか。


「.......で、その救出した魂をこっちで用意した体に移したのが今の貴方。あ、こっちで用意したっていっても今の貴方の身体は元のコピーみたいなもので体格も体質も元の体と何ら変わりないから安心して頂戴。」


コ、コピーって.....。例え方怖えな、オイ。


「貴方にはこれから幻想郷へ行ってもらうわ。」


「幻想郷?」


「人間と(あやかし)が住む.....まあ一言で言えば“忘れられし者たちの楽園”ね。その貴方を救った“ある人”が貴方に対して凄く興味を持ってるのよ。なんでも、貴方が来るのをその“幻想郷が望んでいる”んだとか。」


「忘れられし者たちの楽園というのは一体どういう意味なんだ......?」


「まあ、いつか分かる時が来るわ。」


「それにさっきからずっと気になってるんだけど、その俺を此処へ連れて来た”ある人“っていうのは?」


「八雲 紫。私の旧友で、実質的には大昔に幻想郷を創り出した本人よ。その幻想郷っていうのは“博麗大結界“と”幻と実体の結界“という二つの大きな結界にすっぽり囲まれることによって他の世界と隔てられているんだけど、その二つの結界の管理をして、幻想郷の存在を保っているのが彼女なの。」


「その人は今どこに.....?」


「貴方を私に預けた後、すぐに何処かへ行ってしまったわ。なんか随分疲れているみたいだったし.......何処かで休んでいるのかしらね。探しても無駄よ。あの子、神出鬼没だからほぼ確実にこちらから会おうとして探しても会えないわ。」


もしかして、俺の魂を守るためにハグネと戦ったのだろうか。だとしたら命の恩人(死んだけど)に少しでも恩返しをするために、頼まれているのならばすぐにでもその幻想郷とやらへ行かなくては。


「幻想郷へ行って俺は何をすれば良い?」


「まずは“博麗の巫女”のところを訪ねて欲しいと紫が言っていたわ。」


「その“博麗の巫女”っていうのは?」


「博麗大結界の維持、警護及び妖怪退治、異変解決の役目を担う巫女の事よ。博麗神社っていう神社に住んでいるんだけど、彼女も博麗大結界に関わっているから何か紫について知っていることがあるかもしれないわ。それに...........やっぱりなんでも無いわ。」


「それに、どうしたんだ?」


「なんでも無いわよ〜?」


なんか今あからさまに誤魔化されたんだけど。


「ああ、そうだわ。妖夢、()()をレンに持って来てあげて。」


「分かりました。」


こくりと頷くと、妖夢は立ち上がって再び部屋の外へ出て行った。


()()って何のことだ?」


「見ればわかるわよ。」


「......?」


暫くして、妖夢が何か長細いものを引きずるようにして運んできた。


「よいしょ、よいしょっと......。」


妖夢はぜえぜえと息をきらしながら、レンの前にその長細いものを横たえた。


「これは.......。」


ーー魔剣アルテマ。


忘れもしない。この紺色の柄の優美な装飾に、鞘に収まっていてもその刀身から発されているのをはっきりと感じ取ることが出来る凄まじい魔力。生前に幾度となく死地を共に乗り越えて来た相棒だ。


「その剣、ありえないくらい重いですね。情けないことに持ち上げることすらままなりません......。」


そりゃそうだ。レンだって最初は柄を握るだけで気絶してしまうくらいだったのだ。まともに剣を振ることが出来るようになるまで丸一年かかったし......。


むしろ初めて触れても気絶しない妖夢は一体どんな鍛え方をしているんだろう?


「この剣、貴方のものでしょう?紫から貴方と一緒に預かったものよ。紫の話では、この剣の回収に大変苦労したらしいわよ。」


と幽々子が涼しい顔で扇子で口元を隠しながら説明した。


「回収?この剣を一体どうやって.....?」


もうとっくにハグネに破壊されたものだと思っていた。


「それは私にもわからないわ。あの子、その剣と貴方をわたしに預けるや否や何処かへ行ってしまったから。」


「そうか.....いつかその紫っていう人ににきちんと礼を言わないといけないな。」


レンは再び自分の元に戻って来た魔剣を一撫でしてから自分の横に静かに置いた。


「それじゃあ早速その幻想郷とやらへ行きたいんだけど、どうやっていけばいいの?」


「冥界と顕界の境目をくぐれば幻想郷へ行くことができるはずだけど.......貴方はその身体に入ったばかりでまだ慣れてないからあまりうまく体が動かなかったり、最悪身体に突然異常をきたしてもおかしくないわ。」


「えぇ.....?」


さっきの立ち眩みはそのせいだったのか。


「博麗神社までの道中で何かあったら大変だし、かといって私も妖夢もそんなに長い間此処を離れるわけにもいかない。だから、数日間ほど此処でゆっくり休んでその身体に慣れてから幻想郷へ行った方がいいと思うわ。」


「.....じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな。」


「まあゆっくりしていきなさいな。妖夢の作るご飯はとても美味しいのよ〜。」


「幽々子様。そんな風におだてたってお団子はあげませんよ!」


妖夢がぷくっと頰を膨らませてそっぽを向きながらそう言った。


「あらぁ〜バレちゃったわね......。」


二人のやり取りが可笑しくて思わずレンは声を上げて笑ってしまった。





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