勇者日記 一日目~七日目
俺には特技というものがない。
生まれつき筋肉が付きにくい体でどれだけ動いても、もやしか切り干し大根の様な見た目。
運動センスが絶望的にないから、武術を教えられても習得に普通の人の十倍はかかる。
まぁ、何が言いたいかと言うと俺は特技というものを一つも持っていない。
「おぉ、勇者よ。よくぞ来てくれた!! ベータ国の王として貴殿を歓迎しよう!!!」
そんな俺がなぜか勇者に選ばれてしまった――。
まぁ、なってしまったものは仕方がない。
俺は自分の不幸さに乾いた笑みをこぼしてしまう。
というか国王様、イケメンの癖に強引だな。
いきなり、膝をついて腰に抱き着かれた。
そっちのけがあるのか、それとも俺が逃げないように捕まえているのか。
いや、逃げませんよ?
流石の俺でも国王様とめちゃ強そうな騎士さんに囲まれて逃げる気にはなれませんよ?
なんやかんやあってお金と馬車を貰って旅に出る事になった。
一日目。
しかしまぁ、家でも最弱の俺が勇者になってしまうとは……。
確かに、兄さんや姉さんは家の事で忙しいし下の二人は六歳だしな。
消去法で一番暇そうな俺って事なんだろう。
世界を救う勇者をそんな適当に選んでいいのかよって思ったけど、他にも何人か勇者はいるらしいし、俺は気楽にやろ。
馬車に揺られて、そろそろ日が暮れる時間帯。
馬車が急停車した。
何事かと外に出てみると羽の生えた布面積のやけに少ない服(のような物)を着ている女の子が居た。
羽の生えている女の子なんて珍しいなぁ。
なんかキラキラ光る柱みたいなのを撃ってきたけど、俺の目の前で消えた。
大道芸人なのかな? しかし、光る柱をいきなり出すなんて凄い。
俺は拍手をしてポケットからお金を取り出そうとした。
そしたら、女の子は走って逃げてしまった。
い、いくら俺がきもいからって逃げる事ないじゃないか……。
その日はショックで動く気になれなかったのでそこで野宿した。
三日目。
最初の町に着いた。
何でもここは、冒険者ギルドという強い人が集まっている建物があるらしい。
だから仲間はここで見つけるらしい。
なんでも仲間は二人以上じゃないと駄目らしい。
仲間か……。
出来れば、包容力のあるお姉さんがいいなぁ。
町に入って、街を散策していると男の人に宿屋の場所を聞かれている二人の女の子がいた。
なんだかおどおどしているけど、どうしたんだろう?
あっ、もしかして人と喋るのが苦手なのかな?
うん、分かるよその気持ち。俺も人と話すの苦手だし!
ここは、男として助けるべきだろう。
幸いにもこの街の地図を国王様から貰っている。
馬車移動の間暇だったし、ずっと地図を見ていた。
だから、この街の地形は頭に入ってる。
話に割り込み、男の人に道を教えると走って向かって行った。
よっぽど急いでたんだろう。
女の子二人にもお礼を言われた。
悪い気分じゃない。
四日目。
宿から出て冒険者ギルドに行ったら新規登録者と間違えられた。
なんだか断れる雰囲気でもなかったから冒険者になった。
まぁ、これから仲間を探すために何回か来るだろうしいいかな。
受付のお姉さんがAクラスの依頼をめっちゃめちゃ勧めてくるんだけど、もしかしてお姉さん俺の事殺そうとしてるの? 泣くよ?
なんでいきなり、最高難易度の依頼を進めてくるの?
もしかして、殺したいほど俺ってきもいかな……。クスン
ショックで肩を落としていると後ろから声を掛けられた。
なんと、昨日助けた女の子二人が声を掛けてきた。
二人とも冒険者だったらしい。
それも、AAクラスという上から二つ目の階級らしい。
昨日のお礼に一緒に依頼を受けてくれるらしい。
マジか。俺、めっちゃ楽できるじゃん!
今日は二人のおかげで凄く楽できた。
ちなみに二人の名前は【アスタロット・ルイス】と【アスタロット・ディオン】というらしい。
ディオンって男みたいな名前だね。
五日目。
これはおかしい。
俺は認めないぞ。
これは、悪い噓に決まっている。
あんなかわいい子が男の子な訳がない。
六日目。
昨日の事件のせいで全然寝れなかった。
そのせいで今日は寝不足で依頼を受けた。
眠くてあんまり覚えてないけど、二人のおかげで強そうな魔物に勝つ事が出来た。
二人が魔法で俺の剣を強化してくれたみたいでスパッと斬れた。
魔法って凄いなぁ。
俺は魔力を持ってないから羨ましい。
七日目。
二人が凄く強い事が分かったし、勇者だという事を伝えて仲間になってくれないかと頼んだ。
二人とも少し悩む素振りをしたけどOKしてくれた。
やった! これで俺が弱くてもすぐやられる事は無くなった!
俺は二人の手を握って「ありがとう」と伝えた。
主人公【ムサシ・ミヤモト】
黒髪黒目の少年。のんびりとするのが好きだがアウトドアも好き。
生まれつき魔力を持っていないので【精霊】を見る事ができない。
凄く強い時があるけど本人は何もしてない。




